急行「第二八甲田」 奥中山を行く


 バーチャル時刻表1968/7


東北本線 御堂-奥中山間 東京起点577km前後に続く吉谷地の大築堤。電化を2ヶ月後に控えた7月29日深夜、D51とC60の重連で 盛岡を出た上野発東北本線回り急行青森行「第二八甲田」は長大な客車を従えて23.8パーミル、半径400mのこの曲線区間に入る。急激に増した走行抵抗に二両の機関車はあえぐような息づかいで、客車たちを引き上げるように走りはじめる。軽く小刻みなD51のブラストに対して重い足取りが腹に響くようなC60のそれが対照的だ。闇の向こうに青々とした閉塞信号機が見える度に、二つの黒い生き物は、互いに声を掛け合う。あまりにも壮絶な光景が見る人もないままさざめく銀河の下で展開されていく。ああ・・・半世紀以上にわたって続いてきたこの、すざまじいばかりの旅の手段は何故消えなければならないのか。 涙ぐみながらそう思った十七歳の夏。


重連の領域 残像