平成17年度上松山小学校卒業式祝辞

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

保護者の皆様、ご子息のご卒業、本当におめでとうございます。実は私にも、皆様のお子さんより一つ年長の子どもが居ります。去年のちょうど今頃、真新しい制服に身を包んで、照れくさそうに立っている息子の姿を見て、小さかった頃から現在までの出来事が、走馬灯のように私の頭を駆け巡り、思わず目頭が熱くなった事を思い出します。皆様の感激もさぞやとお察し申し上げます。

それから今日まで卒業生を、教え導いて下さった先生方、影になり日向になり、卒業生を支えてきてくださった地域の方々、本当にありがとうございました。皆様のご厚情とご尽力に、深い感謝と敬意の念を表します。

 

さて、卒業生の皆さんに、一言はなむけの言葉を贈らせてください。

皆さんは、長年通いなれた小学校を卒業し、大人への一歩を大きく踏み出しました。それでは大人とは何でしょう?大人になるとは、どういうことなのだと思いますか。

いろいろな意見や考え方があると思いますが、私はこう考えます。大人になるとは、自分で考え、自分で判断し、自分で行動する事。そしてその行動に対し、自分が責任を負う事、これが大人になる事ではないでしょうか。

小さな子どもの頃は、お父さん、お母さんの言うとおりにして、その責任はお父さん、お母さんが負っていました。けれどもこれからは少しずつ、皆さんが考え、皆さんが責任を持つようになってくるのです。

そうなると、時にはうまく行かない事も出てくるかもしれません、壁にぶつかってしまって、「お手上げ」になってしまう事もあるかもしれません。辛く、悲しい事もあるかもしれません。

「ああ、もうイヤだ。」と逃げ出したくなった時、辛くて泣きそうになった時、そんな時に思い出して欲しい呪文があります。その呪文とは「パトローナス」です。パトローナスは、ハリー・ポッターのお話の中に出てくる呪文です

皆さんはハリー・ポッターの本を読んだ事がありますか? 映画を見た人もいると思います。知らない人のために、ちょっと紹介いたしましょう。

 

ハリー・ポッターは魔法使いの男の子です。赤ちゃんの頃にお父さんも、お母さんも亡くしてしまい、意地悪なおじさんの元で、シンデレラのようにいじめられて育ちました。ハリーが11歳になった日、フクロウが手紙を運んできました。ハリーは魔法使いの卵だから、ホグワーツ魔法学校に入学して、魔法使いになる勉強をしなさいという手紙です。ハリーはおじさんの元を離れて、ホグワーツに入学し、そこでロンやハーマイオニーをはじめとする、たくさんの親友、先生方に出会います。そして生まれて初めて、人生の喜びや楽しみを味わうのです。

さて、ハリー・ポッターの世界には、ディメンターと言う恐ろしい怪物がいます。ディメンターに襲われた人は、魂を吸い取られ、生きる屍になってしまうのです。このディメンターに唯一対抗できるのが、先ほど私が言った「パトローナス」の呪文です。ディメンターを倒せるほど、強力なパトローナスを送り出すには、その人の人生で一番楽しかった思い出を頭に思い浮かべなくてはなりません。

ハリーが、ある人の悪巧みで、このディメンターに襲われた時、ハリーのパトローナスは全然効きませんでした。何故なら孤児だったハリーには、楽しかった思い出が無かったからです。

ディメンターがハリーに迫ってきて、もうやられてしまう!と思ったとき、ハリーはホグワーツ魔法学校の事を思い出します。楽しかった思い出、ロンやハーマイオニーの顔、生まれて初めて知った人生の喜び、シリウスと言う人がハリーのお父さんになってくれると言ってくれた事。その時の、胸が震えるほど嬉しかった気持ち。その事を心に抱いて、ハリーは一心に「パトローナス」を唱えました。強力な呪文は、あっという間にディメンターを追っ払いました。

私はハリー・ポッターの作者であるローリングさんは、きっとこういう事を言いたかったんだと思います。思い出をたくさん持っている人は、心が強い。楽しい思い出は、人の心を強くしてくれる。どんな事にも立ち向かえる。私も同感です。

 

皆さんには、どんな思い出がありますか? 修学旅行、マリンズ、宿泊学習、仲良しタイム、部活、いろいろな事がありましたね。一番楽しかった事は、何でしたか?

皆さんが壁にぶつかった時、その思い出を思い浮かべてください。きっとポッと心が温かくなることでしょう。

友達の顔、先生の顔、教室、きらきら広場、みんなの池、ふるさとの森、楽しく遊んだ日々の思い出は、皆さんの心をしっかりと強く立ち直らせてくれるでしょう。皆さんの心が絶望でくじけるような事があった時、頭の片隅にでもこの事を覚えていてもらえれば幸いです。

 

それからもう一つ、思い出して欲しい事があります。皆さんが壁にぶつかって悩んでいるとき、手助けしたい、手を差し伸べたいと思っている人が、周囲にたくさん居る事です。

何故なら皆さんは、人類と言う大きな、大きな木に、ポッと芽生えた、新しい若い芽なのです。皆さんの芽生えのために、根は、幹は、枝は、葉はこれまでしっかりと皆さんを支え、皆さんのためにどんどん水や栄養を送り届けてきました。皆さんが元気ですくすくと、伸びて行く事は、木全体の大いなる喜びなのです。反対に皆さんの元気が無くなったり、いじけてしまったりする事は、木全体の大きな悲しみです。ですから皆さんは、まっすぐ前を見つめて、どんどん大きく伸びて行って下さい。そして何か壁にぶつかった時は、皆さんを支えている人たちに、気軽に助けを求めてください。みんな喜んで、皆さんの力になってくれます。ここに居る人たちは、皆私と同じ気持ちだと思います。

皆さんは決して一人ではないのです。皆さんの周りには、いつでも皆さんを見守り、皆さんを支え、皆さんの事を大切に思っている人がたくさん居るのです。この事も忘れないで下さい。

 

なんだか壁にぶつかる話ばかりしてしまって、皆さんを恐がらせてしまったとしたら、ごめんなさい。もちろん楽しい事、嬉しい事もたくさん、これから皆さんを待ち構えています。

我が家の息子も、一年前の卒業式の時は、ちょうど皆さんと同じような顔をしていました。通いなれた小学校や先生と別れる悲しみと、未知の中学校生活への期待と不安、いろいろな気持ちが入り混じった、緊張した面持ちでここに座っていました。

一年後の彼に、中学校生活の感想を聞いてみました。答えは、「とっても楽しい!」だそうです。友達にも聞いてみました。みんな答えてくれました。「中学は友達が増えて、とても楽しい。」「部活がいろいろあって、楽しい。」だそうです。皆さん少し安心しましたか。

 

今日は皆さんが大人への一歩を踏み出した、記念すべき日です。楽しかった小学校での思い出をしっかり胸に抱え、皆さんの成長を楽しみにしている人たちに支えられ、これから未来へと歩みだしていってください。皆さんの前には、未来と、無限の可能性が広がっています。皆さんの未来に幸あれと心からお祈りして、私のお祝いの言葉とさせていただきます。頑張ってください!