わざわいのモト


最近ルルーシュは悩んでいた。
悩みの元は、今ルルーシュの横で心地よさげな寝息を立てて熟睡している。
その体から微かに香るアルコールの匂いに、ルルーシュは顔を顰めて、深い溜息を吐いた。


学園内のクラブハウスの一室に寄宿しているルルーシュが、ジェレミアに寝込みを襲われたのは、今週になってからすでに二度目のことで、こんなことはいままで一度もなかったことだ。
しかも、夜中に人目を避けるように忍び込んできたジェレミアは、その二度とも泥酔に近い状態だった。
怒鳴りつけようが、宥めすかそうが、少しもルルーシュの言うことをきこうとしないジェレミアに腕力では到底敵うはずもなく、あっさりと押し倒されて、ルルーシュは不貞腐れながら抵抗を諦めた。
酒に酔って分別をなくしているジェレミアを相手に、無駄に抵抗して怪我を負わされるのは不本意だと判断したからだ。



「あいつがあんな男だとは思わなかった・・・」

翌朝目を覚ましたジェレミアを散々に叱りつけて引き取らせた後もルルーシュの憤懣はおさまらず、たまたま顔を出したC.C.に愚痴を零したルルーシュをC.C.はおもしろそうに見つめている。
その顔を見ながら、

―――こいつにだけはこんな話しはしたくなかったのだが・・・。

そう思いつつも、こんな惨めな愚痴を他に話せる相手のいないルルーシュの口は止まらない。

「一体、あいつは俺をなんだと思っているんだ!?」

口ではルルーシュを「主君」と仰ぎながらも、酔っているとはいえ性欲の捌け口に利用するとは、言語道断である。
顔を真っ赤にして怒っているルルーシュに怯むことなく、C.C.は口許に笑みを湛えてクスクスと笑っている。

「酒の勢いを借りなければ、お前を抱けないなどというところはなかなか可愛いではないか。・・・まぁ、そう滅多にあることではないのだから、大目に見てやってはどうなのだ?」
「冗談じゃない!今週だけで二回目なんだぞ!」
「では聞くが、お前、ジェレミアをどれくらいの頻度で夜の玩具にしている?」
「うッ・・・」

問われて、ルルーシュは一瞬声を詰まらせた。

「どうなんだ?」
「・・・い、以前はともかく、さ・・・最近は忙しくて・・・お前の考えているようなことは、一切していないぞ!」

言い切ったルルーシュは、今度は怒り以外の感情で顔を紅くしている。

「なんだ、それではジェレミアの欲求不満の原因はお前ではないか」
「・・・まるで、俺が悪いとでも言いたそうな口ぶりだな・・・」
「違うのか?」
「・・・お前、なんか勘違いしてないか?」
「勘違い?」
「俺はあいつに、女を抱くなとは言ってないし、忙しくて相手をしてやれないから欲求不満なら余所で済ませてこいと、ちゃんと言ってあるんだぞ?それにも関わらず、あいつは・・・」

忌忌しそうに言うルルーシュに、C.C.は「お前は馬鹿か」と、侮蔑の言葉を吐き捨てた。

「お前のことしか見えていないあの男が、お前以外の・・・例え相手が女だとしても、手を出すはずがないではないか」
「・・・だ、だからと言って、俺を押し倒していいと言うことにはならないだろうがッ!」
「まぁ・・・それはそうだが・・・」
「大体だな、俺は男で、あいつの主で、・・・なんでその俺があいつの性欲処理の道具にされなければならないんだ!?そもそもあいつは男より女の方が好きだったんじゃないのか!?」
「それはお前がジェレミアに、悪い遊びを教えたのが悪いのだろう?」
「お、お、俺だってだな、好き好んでジェレミアにちょっかいを出したわけじゃないんだぞ!」
「そうだったな・・・何しろお前は・・・」

「彼女いない歴17年なのだからな」と、さらりとC.C.は痛いことを言う。
実際、ルルーシュは女性にもてないというわけではないのだが、まともに女性と付き合ったことがない。
C.C.が言ったように、ルルーシュは「彼女」と言うものを生まれてこの方、持ったことがないのだ。
異性と付き合うことを諦めたつもりではなかったのだが、ジェレミアの色香に惑わされて、ルルーシュがついつい同性のジェレミアに手をつけてしまったのは事実である。
しかしそれは、自分が男の立場でジェレミアを押し倒すのであって、押し倒される側になることはルルーシュにとって不本意なことなのだ。
自分が「男」であることを強調し、立場を力説するルルーシュを、C.C.は呆れ顔で見つめている。

「・・・なんだ、その顔は?」
「お前・・・自分の顔を鏡で見たことがあるのか?」
「どういう意味だ?」
「お前とジェレミアと、見た目だけでいったらどちらが男らしいと思う?」
「そんなのは俺に決まっている!」

即答したルルーシュに、C.C.は盛大な溜息を吐いた。

「・・・本気で、そう思っているのか?」
「当たり前だ!」
「その”もやし”か”えのきだけ”のように細くて白い体のどこが男らしいと言うのだ?お前のその母親似の顔はどう見ても女顔だぞ」
「・・・くッ!」

胸を鋭利な刃物で抉るようなC.C.の言葉に、ルルーシュはなんとも言えない表情を浮かべている。

「・・・ではなにか、お前は俺が男らしくないからジェレミアに押し倒されても仕方がないと、そう言いたいのか?」
「この場合、お前がジェレミアを押し倒すより、ジェレミアがお前を押し倒す方が、どちらかと言えば自然に見えると、言っているのだ」
「な・・・!?」
「諦めろ」

ルルーシュで遊ぶのにも飽きたのか、C.C.は勝手にそう締め括ると、満足そうな顔で部屋を出て行ってしまった。
その口許には、さも愉しげな笑みが浮かんでいることに、ルルーシュは気づいていない。

―――俺に、男らしさが足りない・・・と言うことなのか・・・?

残されたルルーシュは、「諦めろ」と言われてもまだ納得できないでいる。



それから数日の間は平穏な日々が続いた。
叱られたことが堪えたのか、ジェレミアはあれから一度もルルーシュの前に顔を出していない。
平穏とは言え、「学生」と「テロリスト」の二つの顔を使い分けなければならないルルーシュは、慌しい毎日に追われている。
ジェレミアのことばかりに気を回している暇はなかった。
それに、気になることがひとつ、今のルルーシュを悩ませつつある。
ルルーシュがそれに気づいたのは、つい昨日のことだった。
と、言うのは、昨日の朝、黒の騎士団の定例の会議に顔を出す為に「ゼロ」の仮面をつけたルルーシュを見る団員の視線に、今までにない違和感を感じたのだ。
C.C.を伴って廊下を歩む「ゼロ」としてのルルーシュはいつもと変らないはずなのに、すれ違った人々の視線や態度が、明らかにそれまでと違う。
仮面の中で首を捻りつつも、訳がわからないルルーシュの不審は会議室の扉を開けた瞬間に、いよいよ本格的になった。
扉を開けてゼロが姿を現した瞬間に、それまで談笑やら雑談でざわめいていた室内が一瞬で静まり返って、皆一斉にゼロであるルルーシュの目から逃れるように視線を外したのだ。

「・・・どうしたのだ?」

不審に耐え兼ねて、ルルーシュが問いかければ、

「い、いや・・・別に・・・」

と、視線を外したまま、顔を引き攣らせた扇が口篭る。
気の弱いこの男が煮え切らない態度を見せるのはいつものことだが、他の面々までが皆同じような態度を示すというのは、一体どういうことなのか。
ルルーシュが仮面の中からその場にいた一同を見回してみても皆顔を俯けたままで、誰一人その疑問に素直に答えてくれそうな人は見当たらなかった。

―――・・・なんなんだ?

思いつつも、さっさと会議を終わらせて、授業に戻らなければならないルルーシュは、ゼロの席に腰を落ち着けた。
その日の会議は、重要な案件もニ・三持ち出されたが、然したる混乱もなく普段どおりと言っていいほど恙なく終了し、「ゼロ」の仮面を外してテロリストから学生に戻ったルルーシュは、授業を受けながらも黒の騎士団の面々の自分に対する先程の不審極まる態度のことを考え続けていた。
最初は、自分の正体が知られてしまったのかとも考えたのだが、そうでないことは今日の会議の内容から見ても明らかだ。
ゼロの正体が実は敵対しているブリタニアの元皇子とわかっていたなら、その場に重要な案件を持ち出すはずがない。

―――では、一体・・・?

一日中考え続けて、結論がでないまま、気がつけば日が暮れていた。
窓の外は夜の闇に染まりつつある。
自室に戻ったルルーシュは、椅子に腰掛けて腕組をしたまま考え込んでいた。
テーブルを挟んだ真向かいでは、宿題のノートを広げたロロが、不思議そうにルルーシュの顔を覗き込んでいる。

「・・・どうか、したの?」

問いかけられて、ルルーシュの意識が現実に引き戻された。

「・・・・・・・・・」
―――そう言えば、こいつも今は黒の騎士団の一員だったな・・・。

そう思い当たって、なにか知っているのではないかと、問いかけてみようかと思ったルルーシュだったが、扇の時のように適当にはぐらかされては不審が募るばかりで、おもしろくない。
ルルーシュは咄嗟に頭の中で策を巡らせた。

「・・・ロロ」
「なに?兄さん」
「すまないが、ジェレミアに連絡を取ってくれないか」
「ジェレミア・・・に?」

ルルーシュの口からその名前が出た途端に、ロロは露骨に嫌な顔をした。
偽物とは言え、今はルルーシュの弟ということになっているロロが、ジェレミアをあまり良く思っていないことはルルーシュも知っている。
弟の自分を差し置いて、ルルーシュになにかと構ってもらっているジェレミアが、ロロにはおもしろくないのだ。
それを知っていて、ルルーシュは心の中で苦笑する。

「明日の朝一番でここに来るように、連絡を入れてくれ」
「・・・あのさ、僕がこんなことを言うのはどうかと思うけど・・・ジェレミアにはあまり関わらない方が・・・兄さんの為にもいいと思うんだけど・・・」
「それは・・・」

「・・・どういうことだ?」と、思わず口に出しかけて、ルルーシュはそれを飲み込んだ。
ロロのヤキモチはいつものことだ。改めてそれを問うのも馬鹿馬鹿しい。

「お前はなにも心配しなくてもいい。ジェレミアに明日の朝ここに来るように伝えておいてくれるだけでいいんだ」
「・・・わかったよ」

渋々ながらそう言ったロロは、胡乱な眼差しをルルーシュに向けていた。



そして。
ゼロの仮面をつけたルルーシュは、昨日と同じように、黒の騎士団の定例の会議が行われる部屋に向かって歩いている。
今日はC.C.の代わりに、ジェレミアがゼロの後ろに控えていた。
黒の騎士団の一員になったとは言え、ジェレミアは滅多に人前に顔を出さない。
ルルーシュ個人の命令で、隠密裏に行動をすることが多いからという所為もあるのだが、それも、メンバーの殆どが日本人である黒の騎士団の環境に馴染めそうにないジェレミアをルルーシュが気遣っているからだ。
実際、元はブリタニアの軍人だったジェレミアを快く思っていない人間が、ここには掃いて捨てるほどいる。
硬い表情を浮かべながら、ゼロの後ろで畏まっているジェレミアを見る一同の視線の中には、あからさまな敵意が感じられるものも少なくない。
しかし、敵意以外の、なにかまったく違う意図を持った視線が自分達に向けられていることも、今日のルルーシュははっきりと感じている。
ルルーシュは仮面の中で小さく舌打ちをした。

「どう思う?」

会議の後、学園には戻らずに、そのまま艦内にある自室でゼロの仮面を脱ぎ捨てたルルーシュは、目の前で片膝を床に着けて畏まっているジェレミアに問いかけた。
ジェレミアは難しい表情を浮かべた顔をルルーシュに向けている。

「ルルーシュ様のお察しどおり、不穏な空気は私にもわかりましたが・・・」
「俺の正体が知られたか?それとも、ギアスの秘密が漏れたか・・・?」
「そのようなことではないように思いますが・・・?」
「お前もそう思うか?」
「・・・はい」
「では、なんなのだ?あいつらの俺を見る視線は一体・・・?」
「さて、それは・・・」

ゼロに向けられる不穏な視線はジェレミアにも感じられたが、それがなぜなのかまではわからない。

「では仕方がない・・・、今朝打ち合わせたとおりに、内偵を進めてくれ」
「かしこまりました」

普段滅多に黒の騎士団に顔を出さないジェレミアは、内部調査をさせるのにはうってつけの人材だった。
メンバーとの親密な関わりがないので、いざともなれば思い切った行動をとらせることができる。
それに、万が一、調査が上手くいかなくても、最悪の場合は、ジェレミアにのぼせ上がっているらしいディートハルトに色仕掛けで白状させればいいと、ルルーシュは考えていた。
ジェレミアは嫌がるだろうが、ルルーシュの命令なら逆らえない。
しかし、それは最後の手段だ。
ルルーシュにしても、ジェレミアがディートハルトごときに色目を使う場面など見たくはない。
その現場を目にしなくても、想像しただけで胸がムカムカする。
ルルーシュのそんな胸の内を知ってか知らずか、憮然とした表情を浮かべたルルーシュに見送られながら、ジェレミアは部屋を後にした。

―――さて、どこから手をつけるか・・・?

内部のことを調べるのなら最下層から・・・と、相場は決まっているが、そんなにのんびりとしている時間はないように感じられた。
今のところ切迫しているとも言えないが、もしも、ゼロに関する重大な秘密が漏れているのだとしたら、ルルーシュの生命をも脅かす危険が迫っていることになる。
しかし、いきなり上層部に迫るのはリスクが大きすぎる。
テロリストの寄せ集めとは言え、上層部ともなれば頭の悪い人間はいないはずだ。
ゼロの命令で内部調査を進めていたことが知れれば、それこそゼロに対する不審に繋がりかねない。
考え込みながら艦内の廊下を歩くジェレミアの姿を、すれ違った数人が冷ややかな視線で見つめている。

―――・・・?

冷たい、敵意のある視線を向けられることには慣れているジェレミアだが、その冷ややかさの中には、いつも感じている敵意ではなく、好奇の眼差しが含まれているように感じられた。
首を捻りつつも、少し歩くと、すれ違った男がまたしても、さっき感じたのと同じような視線をジェレミアに向けてきた。
思わず振り返って、今すれ違った男の顔を見れば、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべて、ジェレミアを振り返っているではないか。

―――ど、ど、ど・・・どーゆーことだッ!?

ゼロばかりか、ジェレミアまでもが原因不明の好奇の目に曝されている、らしい。
そのことに気がついて、難しい表情のまま、ジェレミアの顔がヒクヒクと引き攣った。

―――い、一体、なにがどうなっているのだ!?

秘密の多いゼロと違い、今のジェレミアは他人に噂をされるような秘密など、なにひとつ持ってはいない。
しかも、

―――さっきの男の意味深な視線はなんだ・・・?

なにがどうなっているのか、サッパリわけがわからないジェレミアは焦りを隠せないでいる。
キョロキョロと辺りを見渡して、人の視線を気にしながらのジェレミアの足取りは自然と早足になった。
コツコツと廊下に響く規則正しい足音の先に佇む人影を見留めて、ジェレミアの足がギクリと止まる。
壁に背中を預けて、まるでジェレミアが来るのを待ち構えていたかのようにそこに佇んでいる男は、口許に卑下た笑みを浮かべていた。
しかし、歪んだ口許とは対照的に、ジェレミアに向けられている目は少しも笑っていない。
どうやってジェレミアをやり込めてやろうかという魂胆が、見え隠れしている。
一旦は足を止めたジェレミアだったが、努めてその男の存在を無視するように、無表情でその前を通り過ぎようとした。

「朝から同伴出勤とは、随分と大胆なんですね」

そう言いながら、壁から背中を離したディートハルトは、通り過ぎようとしたジェレミアに一歩近づいた。
聞き捨てならない言葉に、ぎょっとなったジェレミアの足が再び止まる。
ぎこちない動作で振り返り、ディートハルトを見たジェレミアの顔は蒼ざめていた。

「おや?ご存じない?」
「・・・なんの、ことだ?」
「この組織に広がっている、貴方とゼロの噂・・・ですが?」

ディートハルトの言葉遣いは丁寧だが、声には侮辱が含まれている。
聞いていて腹の立つ言い様だった。
そう感じるのは、ジェレミアがこの男をあまり良く思っていない所為なのかもしれないのだが、それにしても、口ぶりが気に入らない。

―――こんな奴に構っている暇はない!

そう決め込んで、歩みかけようとしたジェレミアの腕を掴んで、ディートハルトが引き止めた。

「知りたくはないのですか?」

言われて、ジェレミアは本来の目的を思い出した。

「なにを、知っている?」

上から見下ろすような視線を投げつけて、睨みつけるジェレミアに、ディートハルトは苦笑を浮かべている。

「それが人に物を尋ねる態度ですか?」
「話す気がないならお前に用はない」

素っ気無いジェレミアの態度に、「やれやれ」と溜息をついて、ディートハルトはジェレミアの行く手を塞いだ。

「まぁいいでしょう。こうして貴方と話しをできただけでもよしとしなければなりませんからね?」

―――馬鹿か、こいつは!?

「貴方は私を避けているようですし・・・それに、ゼロの目もありますからね」

ディートハルトは、以前ジェレミアにちょっかいを出して、ゼロにこっ酷く仕返しをされた経験がある。
あれ以来、迂闊にジェレミアに近づくことができなくなっているのだ。

「ゼロといえば、貴方とゼロの噂のことですが・・・」
「勿体をつけずにさっさと話せ」
「まぁ、そう急かさずとも・・・そんなに気になりますか?」
「・・・・・・・・・・」
「しかし、まさか私も貴方とゼロがそう言う関係だとは、思いもしませんでしたよ?でもこれであの時のゼロの態度に納得ができましたが」

ディートハルトの言う「あの時」とは、仕返しをされた時のことをいっているのだろう。

「私はてっきり、貴方がゼロの愛人だとばかり思っていましたが、まさか・・・ゼロの方が貴方の愛人だったとは・・・」
「・・・はぁッ!?お、お前、なにを言っているのだ!?」

唐突なディートハルトの言葉に、顔を真っ赤にして驚いているジェレミアに苦笑を浮かべながら、

「今更隠さなくてもいいんですよ。これはもう黒の騎士団の殆どのメンバーが知っていることなのですから」
「ちょ、ちょっと待て!何の話をしているのだ!?」
「ですから、黒の騎士団の中に流れている、噂・・・ですよ。あくまでも噂にすぎませんが、私はそれが真実だと確信しているんです。違いますか?」

―――な、な、なんと言うことだ・・・!

噂の真実がわかっても、これではルルーシュに報告できるはずがない。
そんなことをルルーシュに言えば、噂の根源に思い当たるフシのあるジェレミアが叱りつけられるのは当然のことだ。
叱られるだけで済めばまだいいが、怒ったルルーシュになにをされるか、知れたものではない。
顔面蒼白となってブルブルと震えているジェレミアを、どう勘違いしたのか、ディートハルトは勝ち誇ったような笑みを浮かべて見つめている。

「安心をしてください。さっきも言ったように、これはもう黒の騎士団の殆どが知っていることですから、このネタで貴方を脅したりはしませんよ」
「ちょ・・・と、待て!」
「精々ゼロに・・・貴方の愛人によろしく伝えておいてください」

ジェレミアに釈明する間も与えずに、勝ち誇ったディートハルトは満足そうに廊下の先に姿を消した。

―――・・・い、言える筈が、ないだろうがッ!?