戦後の日本は一貫してインフレ時代でしたから、デフレというのは私たちにと
って未知の世界でした。数年前から実際に経験してみると本当に異常な経済状
況というのがよくわかります。
インフレが5年間で5%づつ進行(複利計算で)したとします。仮に1000
万円借り入れた場合5年後には全く返済しなくても貨幣価値が目減りした分だ
け相対的に借入額は小さくなっています。その一方、このお金を使って土地を
買えば、こちらは含み益が発生します。もし土地もインフレで毎年5%づつ値
上がりしたとすれば、5年後の評価額は約1276万円です。決算書を見れば
銀行担当者は言うでしょう。「担保余力がありますから、是非お金を借りてく
ださい。」
一方、デフレは全てが逆回転となります。デフレが上記とは逆に5年間5%進
行すれば1000万円の土地は783万円に下落します。借入は返済しなけれ
ば、1000万円のままです。おまけに貨幣価値が増えた分だけ相対的に負担
も増えていることになります。銀行担当者はこう言うでしょう。「担保価値が
下がったのでオーバーローンになっています。その分を返済されるか、追加担
保をお願いします。」
デフレ進行下ではどのような事業が恩恵を受けるでしょうか?ちょっと思いつ
きません。負債価値が上がり、資産価値が下がる。物価が下がるので販売個数
が一緒でも周囲に引っ張られて値下げを余儀なくされるので、売上額は当然減
少します。その中で金利を払い、税金を払えば、事業がまともに成立しなくて
なって当然です。
バブル時代は確かに異常でしたが、デフレ時代は拡大再生産が成り立たないと
いう意味でもっと異常な状態です。現在でも0金利は解除されておらず、土地
も下落が続いています。企業業績が大企業を中心に改善されているという報道
があっても、この問題が残っている限り、日本経済が本格回復したとは言えな
いと思います。デフレ状況に早く引導を渡して欲しい。毎月、色々な会社の決
算書や試算表を見ている者として心底そう思います。
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