ランサーエボリューションとは
F1と並び世界で二つしかない自動車競技の世界選手権であるWRC(世界ラリー選手権)で
勝利を収めるためにMITUBISHIが生み出したスポーツセダン。その戦闘力はすばらしく、
1996年から1999年までトミ・マキネン選手がこの車で4年連続ドライバーズチャンピオンを獲得という
初の偉業を達成。また1998年にはマニュファクチャラーズ(メイクス)チャンピオンも獲得している。
しかもランサーエボリューションはグループAと呼ばれるカテゴリーでエントリーしている、
ワークスチーム勢の中で唯一の車でもある。
グループAというカテゴリーは他チームがエントリーしているWRカー(ワールドラリーカー)に比べると
改造範囲が著しく制限されてしまう上、年間2500台以上の生産台数が必要であり、
ベース車両のポテンシャルの高さが求められ、なおかつコストも優先させないといけないという、
二つの相反する条件を乗り越えた上で優勝を獲得している。
そしてもう一つグループNという、グループAよりもさらに改造範囲のせまい(車内のフロアカーペットさえはがせない)
カテゴリーでもグスタボ・トレレス選手がランサーエボリューションで4年連続チャンピオンに輝いている。
またラリーは公道を閉鎖して行っており、サーキットのように車が走るために整備されたものではない。
季節や天候により路面状況は一定であることはなく、またサーキットのように同じコースを周回するものではないため、
いつ、どこで、何が起こるか分からない。この中で戦うラリーカーは文字通り公道最強のマシンといえる。
そしてその中にあって常勝を続けるランサーエボリューションは間違いなく公道最強と言える。
このランサーエボリューションの初代は1992年9月7日に発表、同年10月19日に販売開始となったが、
グループAの公認を得るために必要な台数2500台を3日で売り尽くした。
その後もその名の通りエボリューション(進化)を遂げ、ほぼ毎年改良を加えたモデルが登場し、
現在ではVIまで存在し、2000年1月には特別モデルが販売開始予定である。
初代LANCER EVOLUTION
初代が登場したのは1992年。それまでMITUBISHIはギャランVR−4でラリーに参加していた。
しかし、サスペンション構造が複雑でサービスに時間がかかったことから、ランサーが選択された。
そして誕生したこのマシンはギャランから受け継いだ4G63を搭載し、わずか2000ccでありながら
250psを達成。しかも競技ベース車両であるモデル、RSに至っては、
これがわずか1170kgのボディに収まっている。
この初代はラリーのベース車両としての性格が強く、クセの強いマシンで、正直なところ
バランスが良いとは言いがたいものはあるが、それまでの常識を打ち破った車であることには変わりなく、
また、ランサーの進化はここから全てが始まっているのである。
LANCER EVOLUTION II
初代から1年後にIIが登場した。通常の車は4年から5年で改良を行うものであるが、
ランサーエボリューションにおいてはWRCで勝つことがその使命であり、そのためには実戦からの
情報を素早くフィードバックすることが求められるため、常に進化を続ける必要があるのである。
IIでは初代の課題であった操縦性が大幅に改良されている。タイヤのサイズアップ、
ホイールベース、トレッドが拡大され、ボディ剛性の向上、そしてエンジンも10psアップの
260psとなっている。
LANCER EVOLUTION III
1995年に登場したIIIはIIが熟成されたモデルであったため、主に空力特性を向上させた、
いわばマイナーチェンジではあったが、それでもエンジン出力は10psアップされ、270psとなった。
またこのモデルからミスファイアリングシステム、つまりアクセルオフ時に2次空気を
導入し燃料を混合させエキゾーストマニホールド中で燃焼させ、タービンを予回転させることで
再加速時のレスポンスを向上させるものが非作動状態で装着されている。
LANCER EVOLUTION IV
1995年秋にベースとなるランサーがモデルチェンジを行った。そして当然の事ながら
ランサーエボリューションもそれをベースとして更なる進化を遂げた。
IIIよりもさらに空力特性を強化され、cd値=0.30、リフト量0としている。
エンジン周りについても、タービンをシングルスクロールからツインスクロールタイプとなり、
中速トルクとレスポンスの向上を行っているこれにエンジン本体の改良も併せて、
36kg−m、280psというパワーを得ている。
またGSRにはリアのデフにAYCも新採用され、コーナリング特性も向上している。
LANCER EVOLUTION V
1998年に登場したVはIVからさらに大きな進化を遂げた。わかりやすいところでは
オーバーフェンダーの導入により5ナンバーサイズから3ナンバーサイズに拡大されたこと。
これによりトレッド幅とタイヤサイズが引き上げられ、そのため大径、大容量のブレーキが装着可能となり、
17インチ4ポット/16インチ2ポッドのブレンボ製ブレーキを搭載している。
余談ではあるがGT−Rにもブレンボのブレーキが搭載されているが、
車両価格に対するブレーキの値段を考えると、「止まる」という性能をどれほど重要視しているか分かる。
サスペンションも倒立式を採用し、バネ下重量の低下と剛性の飛躍的アップを果たした。
エンジンについては最大出力こそIVと同じく濃くない自主規制枠一杯の280psのままだが、
最大トルクがアップされ、38kg−mとなった。
LANCER EVOLUTION VI
1999年に現行モデルでは最新となるVIが登場した。Vがかなり完成されたモデルであったため、
VIでは基本性能に大きな変更はない。しかし、目に見えないところで確実に進化している。
VIでは主に冷却関係の見直しが図られ、クーリングチャネル式ピストンを採用し、
エンジンそのものの冷却性能を上げるとともに、ピストンの熱ひずみを抑えることにより、
スカート長を短くし、軽量化も同時に果たしている。
サスペンションパーツではアルミパーツを増やすことで2.5kgも軽量化している。
またRS限定ではあるがタービンがチタンアルミ合金となり、慣性質量で40%低下。
これによりタービンのレスポンスの向上を果たしている。
ランサーエボリューション性能一覧表
寸法・重量 | |||||||||||||
車名 | 三菱E-CD9A | 三菱E-CE9A | 三菱E-CE9A | 三菱E-CN9A | 三菱E-CP9A | 三菱E-CP9A | |||||||
車種 | SNGF | SNDF | SNGF | SNDF | SNGF | SNDF | SNGF | SNDF | SNGF | SNDF | SNGF | SNDF | |
GSR Evolution |
RS Evolution |
GSR EvolutionII |
RS EvolutionII |
GSR EvolutionIII |
RS EvolutionIII |
GSR EvolutionIV |
RS EvolutionIV |
GSR EvolutionV |
RS EvolutionV |
GSR EvolutionVI |
RS EvolutionVI |
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駆動方式 | フルタイム4WD | ||||||||||||
トランスミッション | 5MT | ||||||||||||
全長 | 4310 | 4310 | 4310 | 4330 | 4350 | 4350 | |||||||
全幅 | 1695 | 1695 | 1695 | 1695 | 1770 | 1770 | |||||||
前高 | 1395 | 1420 | 1420 | 1415 | 1415 | 1415 | |||||||
ホイールベース | 2500 | 2510 | 2510 | 2510 | 2510 | 2510 | |||||||
トレッド前 | 1450 | 1465 | 1465 | 1470 | 1510 | 1495 | 1510 | 1495 | |||||
トレッド後 | 1460 | 1470 | 1470 | 1470 | 1505 | 1490 | 1505 | 1490 | |||||
最低地上高 | 150 | 175 | 175 | 155 | 150 | 150 | |||||||
車両重量 | 1240 | 1170 | 1250 | 1180 | 1260 | 1190 | 1350 | 1260 | 1360 | 1260 | 1360 | 1260 | |
定員乗員 | 5 | ||||||||||||
最小回転半径 | 5.3 | 5.5 | 5.5 | 5.5 | 5.5 | 5.5 | |||||||
10.15燃費 | 10.2 | 10.2 | 10.2 | 9.7 | 10.2 | 9.7 | 10.2 | 9.7 | 10.2 | ||||
60km/h定地 | 17.4 | ||||||||||||
4G63エンジン仕様 | |||||||||||||
ボア×ストローク | 85×88 | ||||||||||||
排気量 | 1997 | ||||||||||||
使用燃料 | 無鉛プレミアム | ||||||||||||
圧縮比 | 8.5 | 8.5 | 9.0 | 8.8 | 8.8 | 8.8 | |||||||
RED/FUEL CUT | 7000/7500 | 7000/7500 | 7000/7500 | 7000/7500 | 7000/8000 | 7000/8000 | |||||||
ピストン | 鋳造 | 鋳造 | 鋳造 | 溶湯鍛造 | 鋳造 | 鋳造 (クーリングチャンネル) |
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点火プラグ | 標準一極 | 標準一極 | 二極 | 白金 | 白金 | 白金 | |||||||
2次エア | 無し | 無し | 非作動1気筒 | 作動4気筒 | 作動4気筒 | 作動4気筒 | |||||||
燃料ポンプ | 80l/h | 100l/h | 100l/h | 120l/h | 150l/h | 150l/h | |||||||
インタークーラー | 256.2*470*65 スプレー×1 |
256.2*470*65 スプレー×1 |
256.2*470*65 スプレー×2 |
294.0*470*65 スプレー×2 |
294.0*470*65 スプレー×2 |
289.5*470*65 スプレー×2 |
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ラジエーター | 660*375*27 スプレー無し |
660*375*27 スプレー無し |
660*375*27 スプレー無し |
700*375*27 スプレー無し |
700*375*35 スプレー×2 |
700*375*35 スプレー×2 |
|||||||
オイルクーラー | 200*145*32 | 200*145*32 | 200*145*32 | 200*100*32 | 200*130*32 | 200*130*49 | |||||||
ターボ | |||||||||||||
形式 | TD05H -16G -7 |
TD05H -16G -7 |
TD05H -16G6 -7 |
TD05HR -16G6 -9T |
TD05HR -16G6 -10.5 |
TD05HR -16G6 -10.5T |
TD05HRA -16G6 -10.5T |
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タービン | φ56 | ||||||||||||
タービンA/R | 13.6 | 13.6 | 13.6 | 8.15(タービンOUT) 8.38(COMP側) |
9.58(タービンOUT) 9.45(COMP側) |
9.58(タービンOUT) 9.45(COMP側) |
|||||||
COMPホイール | φ60 | φ60 | φ68 | φ68 | φ68 | φ68 | |||||||
COMP A/R | 16.5 | 16.5 | 16.5 | 18.8 | 18.8 | 18.8 | |||||||
ハウジング | ニレジスト | SUS鋳鋼 | SUS鋳鋼 | SUS鋳鋼 | SUS鋳鋼 | SUS鋳鋼 | |||||||
サスペンション仕様 | |||||||||||||
フロント | |||||||||||||
キャンバー | 0゜00゜ | 0゜50゜ | 0゜50゜ | 1゜00゜ | 1゜00゜ | 1゜00゜ | |||||||
キャスター | 2゜10゜ | 3゜55゜ | 3゜55゜ | 3゜50゜ | 3゜50゜ | 3゜50゜ | |||||||
キングピン傾斜 | 12゜40゜ | 12゜55゜ | 12゜55゜ | 13゜25゜ | 14゜20゜ | 14゜20゜ | |||||||
トレッド | 1450 | 1465 | 1465 | 1470 | 1510 | 1495 | 1510 | 1495 | |||||
トーイン | 0 | ||||||||||||
バネ定数 | 2.8 | 2.6 | 2.6 | 2.6 | 3.2 | 3.2 | 3.4 | ||||||
スタビ径 | φ23 | 16 | 16 | 23 | 23 | 23 | |||||||
減衰力 伸 *1 | 110 | 168 | 168 | 224 | 188 | 205 | |||||||
減衰力 圧 *1 | 44 | 57 | 57 | 69 | 66 | 88 | |||||||
リア | |||||||||||||
キャンバー | 0゜40゜ | 0゜55゜ | 0゜55゜ | 1゜00゜ | 1゜00゜ | 1゜00゜ | |||||||
トレッド | 1460 | 1470 | 1470 | 1470 | 1505 | 1490 | 1505 | 1490 | |||||
トーイン | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | |||||||
バネ定数 | 2.2 | 3.0 | 3.0 | 4.2 | 4.4 | 4.4 | 4.6 | ||||||
スタビ径 | 18 | 18 | 18 | 21 | 21 | 21 | |||||||
減衰力 伸 *1 | 100 | 100 | 100 | 139 | 122 | 120 | |||||||
減衰力 圧 *1 | 45 | 45 | 45 | 83 | 118 | 119 | |||||||
標準タイヤ | 195/55R15 | 205/60R15 | 205/60R15 | 205/50R16 | 205/60R15 | 225/45ZR17 | 205/60R15 | 225/45ZR17 | 205/60R15 | ||||
デフ&トランスミッション仕様 | |||||||||||||
センターデフ | ビスカス | ||||||||||||
フロントデフ | ノーマル | ノーマル | ノーマル OP:ビスカス |
ノーマル | ノーマル OP:ヘリカル |
ヘリカル | ノーマル OP:ヘリカル |
ヘリカル | ノーマル OP:ヘリカル |
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リヤデフ | ビスカス | 2WAY機械 | 1.5WAY機械 | 1.5WAY機械 | AYC | 1.5WAY機械 OP:AYC |
AYC | 1.5WAY機械 | AYC | 1.5WAY機械 OP:AYC |
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変速機形式 | 5MT | 5MT | 5MT | 5MT | 5MT スーパークロス |
IVと共通 | IVと共通 | ||||||
LO | HI | ||||||||||||
1速 | 2.571 | 2.750 | 2.750 | 2.785 | 2.785 | IVと共通 | IVと共通 | ||||||
2速 | 1.600 | 1.684 | 1.684 | 1.950 | 1.950 | ||||||||
3速 | 1.160 | 1.160 | 1.160 | 1.444 | 1.444 | ||||||||
4速 | 0.862 | 0.862 | 0.862 | 1.096 | 1.096 | ||||||||
5速 | 0.617 | 0.617 | 0.617 | 0.761 | 0.825 | ||||||||
後退 | 3.166 | 3.166 | 3.166 | 3.416 | 3.416 | ||||||||
最終減速比 | 5.443 | 5.443 | 5.358 | 4.529 | 4.875 | 4.529 |