ふしみやの撮り方4・2008年改良編その1

 本編は2008年の2月に「ふしみやの近況」で書いた撮影方法をまとめて、一 部加筆修正したものです。

 
1:撮影状況


 さて、今回改良した撮影状況を先にご覧いただきましょう。

 2005年からの方法と異なる点は、
  ・照明の数を2灯から4灯に増やしました。
  ・標本に対し、照明光を「直射しない」というのが基本姿勢なのです
   が、照明位置を変更できるように撮影台から木のツノを伸ばしま
   した。
  ・標本が強力な光と熱に晒される時間をできるだけ短縮する為、
   4灯の照明を同時にスイッチングできるようにしました。
  ・使用レンズは、購入時に付随してきたズームレンズから、単焦点
   マクロレンズ(Super-Macro-Takumar 1:4/50 M42スクリュー
   マウント 銀塩用の古いレンズですが…)に変更しています。

 そして2005年からの方法と大きく異なる点は、少々判りにくいですが、上の画 像のように、対象の標本を背景から遠ざけて写すようにしたことです。
 こうする事により、かなり絞り込んでも背景にピントが合わず、空間に浮いた ような感じで写ってくれます。
 このような写り方は、私が望んでいた状態に近く、現状ではかなり満足してい ます。
 以下は、この撮影台の製作方法になります。



2:ベース用樹脂板

 透明樹脂板表面を
←のように加工した「表面マット加工済の樹脂板」をベースとして使用します。 (このマット加工面の粗さはもっと細かく、言わば摺りガラスに近いような加工 を施してある物が適しています。また、欲を言えば、もう一方の面が滑面に仕上げ てある物の方がよろしいでしょう)
 透明板のようにメジャーではありませんが、ホームセンターや硝子屋さんで 扱われていると思います。少なくとも伏見屋金物店では販売しています。
 原板は1820×910ミリ、もしくは1000×2000ミリの大きさですが、ホームセンタ ーならば、もっと小さくカットした販売店独自規格サイズがあるでしょうし、街 中の硝子屋さんなら指定サイズで切断販売してくれると思います。
 この品物の名前ですが、伏見屋として仕入れるときには、「サンロイドの2.5ミ リ厚サブロク板、クリアーの表面マットで」と発注しています。けれどもそれが 正式な名称であるかどうかは判りません。もしも、お店でお尋ねになるのであれ ば、「透明アクリル板の表面がザラザラした品物」と言えば通じると思います。


3:ベースから屹立せし樹脂棒

 1:撮影状況の画像内で 「表面マット加工の樹脂板」から突き出ていた棒状の物は5×6ミリ程度の透明 アクリル角棒です。
 このような棒はホームセンターか模型屋さんで販売されていると思うのです が、確認した訳ではありません。(いや、こんな需要の少なそうな物は売ってない 可能性の方が高いだろうなぁ)

 伏見屋ではその仕事がら、この画像のようなアクリル板の切れ端が多く発生し ます。ここに写ってる切れ端なんかは、形がいびつなので使いみちが無く、破棄さ れるのが普通ですが、私の場合、せっせと残しております。  こうして「きっと何時か役に立つであろう」と残しておいた結果、この切れ端 から、鋸で切り出して必要な角棒を作製できるという、ウレシイことになる訳で すな。
 因みに、こういった作業で使用する鋸は、潟Jクダイ社製の商品名(品番) スパーソー(6010)がお勧めです。
 そしてこの鋸で一生懸命アクリル板を切っていると、刃先の温度が上昇し、挽 き屑が融けてダマになってきます。こうなると、鋸刃が目詰まりしているので切 れなくなってしまいます。そこで、時々バケツの水に刃を浸けて冷やすと上手く 切れるようになります。


4:撮影台の組み立て

 切り出したアクリル角棒と樹脂板を
←のようにくっつけて針刺し台が完成しました。

 以下はアクリル角棒と樹脂板の接合方法です。

 先ず、2.7φの鉄工用ドリルでアクリル角棒の下端から約10ミリ、上端から約 6ミリの深さで穴を明けます。このとき、当然のことながら穴があらぬ方向に進 まないように真っ直ぐ明けなければなりません。しかし、手持ちドリルで作業し たので、このように少々曲がってしまいました。ボール盤を使用すれば、真っ直 ぐに明けることができると思います。
 次にISO 3φのスパイラルタップ(画像内に写ってる先端工具。3本組タップ よりも使い易い)で下端側にメネジを切ります。後からクラックが発生すると イヤなので、このときは切削オイルを使わず、代わりに薄めた中性洗剤を使用し ました。
 上端の穴はメネジを切らずに3.0φの鉄工ドリルで穴径を3φに広げておきま す。(ここに後から針刺し用のペフ板の切れ端を詰めます)

 次に樹脂板側の加工です。
 ISO 3φでメネジを切ったアクリルの角棒は、上の画像に写っているステンレ ス製のビス(皿+頭ISO 3φ×8ミリ)で樹脂板の裏側からネジ止めします。
 そしてこの樹脂板は、撮影台に置いたときグラグラしないようにビス頭を沈 めなければなりません。
 そこで樹脂板の中芯に先ず3.2φの穴を明け、通称カブラと呼んでいる先端工 具(正式名称は知りません)で皿抉り加工を施します。対象が樹脂である為や わらかく、すぐに抉り過ぎてしまうので、慎重にやりましょう。
 これで材料の加工は終了。アクリル角棒を樹脂板裏側からビスどめして完成 です。

 完成品を裏側から見ると
←こんな感じです。

 収納時には破損しないように、板と棒を外しておきましょう。ビスどめなので 簡単に外すことができます。(接着剤で組み立てた方が簡単だったかもしれま せんが、収納のことを考えてビスどめを選択しました)

 これで今回の針刺し台の工作はおしまいです。


 

5:サンプル画像

 最後に、この針刺し台を使って撮影した標本の大画像をUPしておきましょう。

 先ずは定番のギフチョウ。
 元々、強力な美しさを生まれながらに具えている蝶なので、多少下手に撮って も、それなりの美しさで写ってくれます。
 この個体は2006年05月21日の福井県大野市(旧和泉村)産、サイシン喰い (たぶん…)の産地になります。この産地の個体は、いずれ近いうちにまとめて UPする予定です。
 こうして見ると、撮影の技能が上がるにつれ、ただでさえ下手な展翅のアラが 目立ってしまいますな。もう、この歳になってしまうと、展翅の更なる上達は望 めないだろうし、このあたりのレベルで妥協しておくことにしましょう。

 そしてこれはご存知、モンシロチョウ。日本国内最普通種の一種です。
 データは、2006年06月18日長崎県対馬市美津島町(対馬)小船越。
 採るのは簡単ですが、撮るのはとても難しい…。
 白い蝶を、正しく白く、そしてキレイに撮るのには、どうすればイイんでしょう ねぇ。これからの課題です。