ワールド・クラフトビア・フェスティバル

 9月の18日・19日に池袋サンシャインシティで開催された「ワールド・クラフトビア・フェスティバル」に行って来た。

 パンフレットにはこうある。

 ◆全て樽から直接注がれるドラフトのうまさを味わえる!

 ◆世界各国から、日本各地から、地ビール100銘柄が一挙終結!

 ◆醸造者が会場で管理するビールだからうまさも違う!

 ◆お気に入りビールはお土産もOK!

 ◆記念グッズ販売コーナーも今だけグッズのオンパレード!

 ◆フードコーナーも美味揃い!

 ようするに、世界と日本の地ビールを集めて、それが試飲できるというイベントだ。しかもそれも100種類! 入場料3800円で飲み放題!

 「こうしてはいられん!」という気になるでしょ?

 

 会場は文化会館の3階で、かなり広い。しかし、既にそこにはたくさんのビール好きたちがひしめいている。そしてほぼ全員が酔っ払っている。うーん、すごい風景だ。

 「遅れをとるまい」と受付で入場券を渡すと、プラスチック製の試飲容器をくれる。

 逆三角錐のデザインで、サイズも小さめだが、まあ仕方ない。

 急ぐ必要はないのだが、何となく早歩きで会場内に突入。

 会場内はドイツ・アメリカン・イングリッシュ・ベルギーといった、産地やスタイルによって別れており、そこにそれぞれのメーカーがブースを構えている。その背後の壁にはそのメーカーの供給するサーバーの注ぎ口がビールの種類の分だけ顔を出している。それが100本分あるわけだ。すげえ。

 

 客は飲みたいビールのところに行って、好みの銘柄を指定して注いでもらう。

 が、しかし、これだけ数が多いと、何から飲んでいいのか一瞬右往左往する。

 なにしろ100種類全部を飲むのは不可能だからだ。

 そこで、コンテストで入賞したようなビールを最初は飲んでみる。うん。やはりうまい。

 次に人が飲んでいておいしそうなビールをねらう。うん。いける。

 最後はもう勘で行く。うん。よしよし。

 特に「信濃ビール」の「スーパーヴィンテージ」は、「こんなビールがあったのか!」と、ビール観が変わるほどの、濃厚で芳醇な香りの衝撃の味だった。

 

 会場内ではつまみも売っており、これがケンタッキーフライドチキン等の店が入ってやっているので、どれも食べ応えのあるちゃんとした料理だ。

 記念グッズ販売コーナーの一画では、ビール通であるイラストレーターの藤原ヒロユキさんのコーナーもあり、ご本人もそこにいらっしゃった。

 酔っ払って気が大きくなっていた私は、藤原さんの著作を指差し、「購入したらサインをしていただけますか?」と、ずうずうしくサイン本にしてもらった挙句、一緒に写真まで撮らせていただいた。藤原さんは嫌な顔一つせずにつきあってくださった。藤原さんありがとうございました。ウン。ビール通に悪い人はいないな。

 

 さて、ビールはどれも皆おいしく、つまみをつつきながら調子に乗って飲み続けていたのだが……。

 ふと、異様な疲労を感じ始めた。

 会場内にはテーブルといったものがほんの数箇所にしかなく、椅子も当然ない。つまみを買ってもテーブルを確保できなかった客は、片手でつまみを持ち、片手でビールを持って、立ったまま飲み食いするしかない。

 私はさいわいにもテーブルを確保してつまみやコップをそこに置くことができたのだが、これがビールを供給しているエリアからかなり離れているのだ。

 そして、これは先方の気遣いなのかもしれないけれど、コップに注ぐときに、半分以下のごく少量しか注いでくれない場合が多いのである。

 「少しでも多くの種類を飲めるように」ということなのだろうけれど、「おいしい!」と思ったビールは「グイッグイッグイッ」と飲みたいではないか。しかし、これだと最初の「グイッ」でコップが空いてしまうのである。

 コップが空くと、ビールエリアまでえっさか歩いていく。そしてほんの少量注いでもらう。またえっさか歩いてテーブルのところへ。一口か二口で飲み干して、再びビールエリアへ。ほんの少量注いでもらう。ふう。

 

 会場内で偶然にも知人に会った。

 我々は顔を見合わせると、ため息をついて、

 「なんか、こういうのはちょっと……」

 「そう。フラストレーションがたまりますなぁ」

 「もっとググッといきたいもんですな」

 「まったく」

 同じ感想だった。

 

 ビールはどれも皆、とてもおいしかったのだけれども、なんだか疲労困憊した、そんなイベントであった。

 

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