「発泡性酒類」という狂気の分類
与党税調により、酒税の改セイが決まった。
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350ml缶での税額 |
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旧 |
新 |
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その他の雑種 (ドラフトワン等) |
24.20円 |
28.00円 |
リキュール類 (スーパーブルー等) |
27.80円 |
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発泡酒 (麦芽比率25%未満) |
46.98円 |
変わらず |
ビール |
77.70円 |
77.00円 |
すでに報道等で発表になったとおり、今回所謂「第3のビール」と呼ばれている「サッポロドラフトワン」「キリンのどごし生」「アサヒ新生」といった「その他の雑酒」と、「サントリースーパーブルー」のような「リキュール類」がターゲットとされ、従来までは「その他の雑酒」が350ml缶に対して24.2円だったものが、3.8円上がり、「リキュール類」が27.8円だったものが0.2円上がって、どちらも28.0円へと増税になる。
一方、高すぎると批判の多かった「ビール」の減税が実現した訳であるが、これが350mlに対して77.7円だったものが、端数の0.7円を削って77.0円にする、という人を馬鹿にしたシロモノ。つまりたったの70銭で「減税」と称している訳である。こんな少額では小売店が価格に反映できるはずなどなく、実質的に消費者にとっては何の恩恵もないのである。
前回の発泡酒増税に比べれば、今回の「第3のビール」への増税は穏やかなものと言える。もちろんこれはメーカーや消費者の反対運動が功を奏したという側面もあるにはあるだろう。しかし真相は、前回の発泡酒増税の後、売り上げが大幅に落ち込んで、税収に響いたという苦い経験を踏まえたから、ということに他ならない。
従って、今後も「税率格差の解消」という大義名分を振りかざし、ビールのスズメの涙ほどの減税と、発泡酒や第3のビールへの大幅な増税を機会あるごとに繰り返していくことは想像に難くないだろう。
しかし今回の改セイの最も恐るべき点は、上記のような点にとどまらない。
旧分類 |
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新分類 |
清酒 |
発泡性酒類 |
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合成清酒 |
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しょうちゅう |
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みりん |
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ビール |
醸造酒類 |
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果実酒類 |
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ウイスキー類 |
蒸留酒類 |
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スピリッツ類 |
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リキュール類 |
混成酒類 |
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雑酒 |
従来までの酒税法では、原材料や製法などによって酒類を10種類に分類していた。今回これを簡素化して4種類に改めたのだが、実はこの分類にこそ、与党税調と財務省の恐るべき陰謀が秘められているのである。
新しい分類は「醸造酒類」「蒸留酒類」「混成酒類」の三つと、「発泡性酒類」との計四種類だ。このうち、最初の三種類はわかる。製造方法による分類ということで、おそらく世界中どこにいっても共通と思われるからだ。
しかし後の一つである、聞き慣れない「発泡性酒類」とは何事であろうか?
なんと、ビールも発泡酒も第3のビールも缶チューハイも、発泡性の低アルコール飲料はすべてここに分類されるのだという。
同じ発泡性の酒でもシャンパンやスパークリングワインは「醸造酒類」に分類され、同じリキュール類でもコアントローやカンパリは「混成酒類」に分類される。それなのに、純然たる醸造酒であるビールや発泡酒が別立ての項目に分類されるというのは滅茶苦茶である。
要するに原材料も製造方法もへったくれもないのだ。ただ、一番数の出そうな大衆酒に高額の税を課すために、こんなでたらめな分類をわざわざ新たに作り出したのである。
しかもこの「発泡性酒類はビール税率を基本税率にする」という。つまり新開発の商品はすべて一番高額なビールの税率を適用することを基本にするということだ。
従って、今後はメーカーがいかに工夫して第4、第5のビールを作り出したとしても、すべてこの「発泡性酒類」の中に押し込められ、すべてビールと同等の高額の税率を課す、というのである。この「発泡性酒類」は、これまでのような原材料や製造法と無関係な分類のため、どんな酒を造っても、炭酸が入っていればそれだけでこの狂気の、あるいは凶器のような分類からは逃れる術はないのだ。
更にそれだけではない。「ビール税率を基本税率にする」ということは、今後、既存の発泡酒や第3のビールも、そしてゆくゆくは缶チューハイ等も、段階的にすべてビールと同等の高額の税率を課していこう、という悪逆非道な魂胆までもがここからは見えてくるのである。
これで大衆酒に思いのままに高額の税を課す制度が完成したという訳である。
税調・財務省の高笑いが聞こえてくるようではないか!