日比谷オクトーバーフェスト2010
5月21日〜5月30日にかけて、日比谷公園内で日本版オクトーバーフェストが開催されると聞いて、最終日の30日に足を運んでみた。
オクトーバーフェストというのは、本場ドイツはミュンヘンで毎年10月に開催される世界最大のビール祭である。来場者総数は650万人。1日約40万人の大群衆が14箇所にある巨大テントの中でひたすらビールをガンガン飲みまくるという実にうらやましいイベントだ。
ビールを飲むためだけにドイツに行くことはなかなか難しい話であるが、日比谷ならば地下鉄ですぐ行けるのである。ありがたい!
5月なのに「オクトーバー」というのはおかしな話であるが、「メイフェスト」じゃなんだか労働者の祭典か悪魔の名前みたいだもんなぁ。
会場の日比谷公園についてびっくり。大盛況なのだ。
ビール売り場には長い行列。テーブル席は殆どが埋め尽くされ、座れない客は地べたに座り込んでビールを飲んでいるのである。いやはや。
ビールは本場ドイツのエルディンガー・ホフブロイハウス・シュパーテン等の他に、日本の地ビールメーカーである富士桜高原ビールも参加している。
つまみとなる料理も、ソーセージ・プレッツェル・ザワークラウト等、いかにもドイツの祭を彷彿とさせるようなものが揃っている。
ここでのビールの購入方法は変わっていて、デポジットと銘打ち、最初にビール代プラスグラス代1,000円を先に収めるというシステムをとっている。
飲み終わったグラスは、買った店に持っていけば1,000円と引き換えてくれる、という訳である。
なぜこのようなシステムをとっているかというと、各社のビールは、それぞれのビールの種類に合わせた洒落たデザインのグラスに注いでくれるからであろう。1,000円先に払っていれば、客はグラスを大事に扱うだろうし、万が一破損や盗難があっても安心である。
この手の屋外イベントでは、通常プラや紙の使い捨てコップが用いられることが多いが、ビールに合わせた専用グラスで飲んだ方が雰囲気が出るし、何よりもビールが美味いのだ!
早速エルディンガーのヴァイスビアとヴァイスビアデュンケル、それに白ソーセージを買う。
たぶん1パイント(568ml)と思われるグラスに注がれたビールは1,000円で、小ぶりのソーセージが500円だった。
ビールは安くはないが、スーパードライや一番搾りのような国産ピルスナーと違って、どれも濃厚で深みのある味なので、十分に納得がいく価格だ。何と言っても、ドイツに行くことから考えればずっと安いのだ。
ビールとつまみを買っても、座る席がないので、両手が塞がったまま公園内をうろうろすることになるのだが、その際に店の裏側を通ったら、樽が山積みになっている光景が目に入った。すごいもんだ。
それでなくても屋外で飲むビールはうまいものだが、本場のグラスや喧騒の中で飲むドイツビールはしみじみと美味かった。
この日はぐっと気温が下がって、肌寒いくらいだったにもかかわらずのこの盛況である。
皆が皆、ドイツビールや地ビールの味を楽しんでいる。
このイベント、今年で5回目の開催になるという。
こういう祭が日本で定着する日がついに来るとは感慨深い。
国産ピルスナーしか飲んでこなかった人の多くは、大抵この手の味の深いビールを飲むと、「クセがあって何杯も飲めるものではない」と言って、その後飲むことを放棄してしまう場合が多い。
だが、本場ドイツでは「出されたビールは黙って3杯飲め」という言葉がある。
深く付き合ってみなければ、それの持つ本当の魅力はわからない、という訳である。人間と同じだね。
思えば、日本に初めて紹介された当時、コーヒーは「焦げくさい」と敬遠され、コーラは「薬くさい」と遠ざけられた。
それが今では当たり前のように日本の日常文化の中に溶け込んでいる。
まだまだ時間はかかるかもしれないが、ピルスナー以外のビールが多くの日本人に受け入れられるようになる日もそう遠くないかもしれない。
なんだか、ちょっとだけ未来への希望が見えたような素敵なイベントであった。