スーパーオクトーバーフェストin東京ドーム2012

 年末に政権交代があった我が国であるが、ビールにおいても大いに転換期を迎えたことを感じさせる年でもあった。

 

 オクトーバーフェストである。本場ドイツで毎年10月に開かれるこの世界最大のビール祭りが日本でも開催されるようになって早や幾年。

 今年は4月のお台場をスタートに、日比谷・仙台・芝・豊洲・神戸・長崎と7箇所で開催。さらには「リターンズ」と称して追加で10月にはもう一度お台場で開催されるという盛況ぶりだったのである。客の入りが悪ければリターンズなどあるはずもなく、全国どこでもこの企画が大成功だったということであろう。

 

 それだけではない。11月30日〜12月2日の3日間、あの東京ドームで「スーパーオクトーバーフェスト」と称して、大規模なビール祭りが開催されたのである。

 

 一連のこのイベントで共通しているのは、ビールグラスのデポジット制。それぞれの専用グラスに合わせたビアグラスでビールを提供するので、ビール代とともに1,000円を徴収するのである。これは持ち帰られたり、割られたりしないための対策であろう。ガラスの専用グラスで飲んだ方がビールは旨いし、紙コップ等と違ってゴミもでないのでエコでもある。反面、いちいちグラスを返却して1,000円を取り戻すというプロセスがいささか面倒でもある。また、割ったりしたら返金されないので、どうしてもグラスの扱いが慎重になる。

 こういう煩雑なシステムに加え、今回はドームを借りきるため、入場料がビール代とは別に1,300円かかる(前売り1,200円)。「それでも本格ビールが飲みたい」というビール好きの客が果たしてどの程度いるか。あの巨大な東京ドームが埋まるのだろうか……。

 

 と若干の不安を抱きつつ、ドームを訪れてみると……いるわいるわ入場ケット売り場にすでに行列が出来ている。中へ入ると、すでにたくさんの人がグランドを埋め尽くし、そこにいる全員の手にビアグラスが握られているのである。圧巻。

 

 人気漫画「もやしもん」が協賛し、もやしもん第8巻(ビール編)のダイジェスト版が無料で配られたり、もやしもんグッズのブースが設けられたり、この日のために醸造された「もやしもんIPA(インディアン・ペールエール)」が売られたり、といったこともこの集客に一役買っていることとは思われるが、それだけではドームは埋まらないであろう。

 日本人も遂に多少高い金を払ってでも本当に美味しいビールを最高の雰囲気の中で飲もうという人が増えたのである。感慨深いなぁ。

 

 オクトーバーフェストはどこの会場でも大盛況で空いている席を探すのが一苦労。このドームでもテーブル席はすべて満席状態だった。だが、ここは野球場。スタンドに席ならいくらでもあるのだ。

 という訳で、スタンドに座ってビールを飲む。テーブルがないので、つまみを食べつつビールを飲むというのがなかなか難しいが、まあ仕方がない。

 

 このイベントオリジナルのもやしもんとの共同企画である「もやしもんIPA」を飲んだが、ホップが強烈に利いていてストロングな味。通常の6倍のホップを使っているとか。今の大手メーカーが絶対に作らない味だ。いいなあ。こういうビールを皆が楽しめる時代がやっと来たのだ。生きていて良かった。

 

 中央にイベントステージがあって、色々な催し物をやっているのだが、途中誰かが舞台に上がり、ステージ周辺から「イノ○! イノ○!」という歓声が聞こえてきた。「例のどこでも出たがりプロレスラーか?」と思って大型スクリーンに映し出された舞台上を見ると、なんと副都知事(当時)の猪瀬直樹氏である。こんなとこで何してんの?

 猪瀬氏は「猪瀬コール」に答え、何か喋っているのだが、スタンドでは聞き取れない。だが、何か、異様に盛り上がっている。

 うーむ、都知事選挙に立候補しているのに、事前運動にならないのだろうか。

 ビールファンだという事をアピールしているのかもしれない。だとしたら、ビール好きはこの人に投票しちゃったかもしれないな。

 

 全体として素晴らしいイベントではあったと思う。来年もぜひまた開催してほしいものである。

 こういったビールイベントが盛況なのに加え、クラフトビールの認知度と人気も年々高まっている。

 願はくは、こういった流れを受けて、ピルスナービール一辺倒の大手メーカーも、かつての麒麟のコンビニ限定酵母入りビールや、サントリーのテーブルビアシリーズのような意欲的なビールをまた造ってくれると嬉しいのだが。多少金額が高くなっても、美味しいビールを飲みたいという層は以前よりも確実に増えてきているのだから。

 

 

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