2003年 【概観】

 この年、またしても発泡酒が増税された。

 2001年にアサヒが「本生」で発泡酒市場に参入、これで大手4社の発泡酒が揃ったことになり、味の方も各メーカーが競い合うことによって、かつての「ビールの類似品」から「ビールの代用品」にまでレベルアップ、年々需要は増えていた(もっとも発泡酒が伸びた分ビールが落ち込んでいるので、メーカーとしては儲かってはいないのだが)。

 このような状況の中、与党税調と財務省は発泡酒の増税を謀り、何度となくその機会を狙っていた。

 だが、メーカーも今度は互いにライバル関係にある4社が団結して増税反対運動を行う。

 メーカーにしてみれば高い研究・開発費を投じてやっと一人前の商品にまで育ててきた発泡酒にビール並みの税を課されたら、一気に商品価値がなくなってしまうからだ。

 増税をめぐる議論の中で与党税制調査会会長の相沢某なる人物が、「麦芽の量で税金を差別すること自身どれほどの合意性があるか云々」という主旨のことをテレビで言っていたが、自分達で決めて運用している酒税法の合意性に疑義を述べるなど噴飯ものであった。もし合意性がないことを認めるのだったら、こんな法律を作ってそれをずっと運用してきた関係官僚と政治家は責任をとって即刻辞職すべきである。また、合意性を真に求めるのだったらビールの税率を発泡酒並みに下げるべきだ。なぜなら我が国のビールの税率は先進諸国の中でも例をみないほど高額なのだから。

 

 だが、そんな国民の怒りの思いをよそに増税は5月に強行される。

  麦芽使用率50%未満25%以上の発泡酒……1リットルあたり152.70円→178.125

  麦芽使用率25%未満の発泡酒………………1リットルあたり105.00円→134.250

 当初、発泡酒にビール並みの増税(1リットルあたり222.00円)をと言っていたのがこの程度の上げ率で収まったのは、メーカーと消費者の反発が予想以上だったからに他ならない。

 

 ちなみにこの年はサントリーの「テーブルビア」シリーズやサッポロの「ヱビス黒」等、ビールの新製品が久々に充実していた年であったが、その背景にこの発泡酒増税という事情があって、メーカーがビールに商品価値を求めざるをえなかった、という背景を考えると、なんとも皮肉な話で、苦々しい思いにさせられる。

▲TVで暴言を吐く与党税調会長(当時)相沢某氏。

 

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