「大丸ビアガーデン」

 東京駅八重洲口の大丸デパート屋上では、毎年夏季限定でビアガーデンを開いている。

 屋上ビアガーデンというのは、どこも正直言ってビールも料理もそんなに期待できるシロモノではない。しかし、やはり日本の夏の風物詩であり、たまに足を運んでみたくなる場所だ。

 料金は女性3,000円・男性3,400円(税込み)となっていて、これで飲み放題・食べ放題。

 ビールはスーパードライとアサヒの黒。注ぐのは専門の職人……ではなくて、アルバイトと思われる若者。よってビールは泡もちも悪く、味もそれなり。飲み物は他に、ワイン・焼酎・サワー類がある。

 つまみ類は枝豆・唐揚げ・ヤキソバといった定番類から、エスニック料理まで多種多彩。

 店は5時半から営業開始なのだが、5時半ちょうどに行ったら、もうすでに入り口には長蛇の列が出来ていた。

 最初に料金を払うと、ジョッキを渡される。後は自分でテーブルを選んで陣地を確保してから、飲み物と食べ物をひたすら取りに行くシステムだ。

 開店と同時に入ったので、席はガラガラ……と思いきや、いたるところに予約席であることを示す札が出ている。いやはや、すごい人気である。

 前述した通り、ビールそのものはたいしたことはないし、料理もまあそこそこである。値段が値段だから仕方あるまい。

 このビアガーデンの良さはやはりロケーションであろう。

 夕暮れ時、西側を見ればレンガ造りの駅舎とその向こうの皇居の緑を、夕日が赤く染めていく。かたや東側に目を移すと、八重洲通りにネオンが徐々に灯り、その上に月が昇ってゆく。

 「世界の中心で愛をさけぶ」ことはなかなかできないが、「東京の中心でビールをたらふく飲む」ことなら出来る。

 そのことを実感できる点で、このロケーションはなかなか気持ちのよいものである。(2005.8

 

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