なゝ瀬

 友人の結婚式に出席するため、大分に行った。事前にインターネットで調べたところ、大分空港内で地ビールが飲めるらしい。

 その友人は空港まで迎えに来てくれたので、どこかの店に入って久々の再会と彼の結婚を祝して乾杯をしようということになった。

 そこで入ったのが空港内の「なゝ瀬」というレストランである。

 このレストランは「別府でしか飲めない黄金健康ビール 元気の出るビール 国産ビールを超えた地ビールの王様」と書いたノボリがヘンポンとひるがえっており、地ビールを飲ませる店であることがすぐわかった。

 ショーウィンドウには店で出されるビールの種類が紹介されている。 

 

中瓶

  ヴァイツェン(油屋熊八)………980円

  ブラウンエール(熊八)…………980円

  スタウト(ドンザビエル)……1,080円

グラス・250ml

  玄米ビール(南蛮宗麟)…………550円

 早速店内に入ってビールを注文する。まずはヴァイツェンから頼む。980円と値段は安くないが、中瓶なので飲みごたえはある。味もヴァイツェンらしい華やかな香りがあってまずまずだ。つまみに「鶏の炭火焼(650円)」と「豊後牛のたたき(850円)」を頼む。豊後牛がやわらかくて美味しい。

 のんびりとヴァイツェンを飲みつつ、次はエールかスタウトか、などと考えていたら、俄かに事態が一変した。

店内から窓の外の離着陸する飛行機が見えるのだが、飲み始めてそんなに経たないうちに、JAL便が着陸するのが見えたのである。

 

 実はもう一人、別の友人が次の便で来ることになっていて、空港内で合流することになっていたのだ。そして、本来ならばその間に40分位の間があるはずだったのだが(それ故にビールをのんびり飲んでいたのだ)、俺の乗って来た前の便が遅れたにもかかわらず、次の便は早めに到着してしまったのである。

 友人から急に落ち着きがなくなる。

 「早く飲み終わらないと」とせかすのである。

 つまみも急いで食べることになる。もはや二本目のビールどころではない。

 そうこうするうちに業を煮やした友人は「勘定は払っておくから後からすぐ来てくれ」と言い残してレストランを出て行ってしまった。

 こうなると一人でのんびりしていることも出来ず、あわててビールを飲み干して出て行こうとし、ふと瓶の裏のラベルを見てガクゼンとした。原材料の欄に「麦芽・ホップ・酵母・金箔」とあるではないか!

 なんと熊八ビールは金箔入りビールだったのである。だからノボリに「黄金健康ビール」などと書いてあり、値段も高めだったのか。納得。しかし金箔は重いから当然下に沈んでいる。そのまま注いでも液体と一緒に出てはくれないのである(それゆえ金箔入りとは気がつかなかったのだ)。そうならないためには注ぐ前に瓶を振って攪拌しておかなければならなかったのだ。だがあわてて飲み干してしまった今となっては後の祭りで、金箔は瓶の底に沈殿したままだ。嗚呼。

 なんとも悔しくもあわただしい中、なゝ瀬を後にしたのであった。(2006.7)

 

  ビア・スポット探訪メニューに戻る    トップメニューに戻る