酒肆 吾妻橋

 吾妻橋のたもとのアサヒビール本社ビル(「アサヒビールタワー」と言う)の隣には「フラムドール」というビアホールがある。かの有名な金色のオブジェを上に乗せたあの建物(「スーパードライホール」と言う)の1〜2階がそれだ。この店は最初フレンチスタイルのちょいと値段が高めのつまみでビールを飲むビア・レストランだった(その後路線変更した)。しかし、もともとこの地はアサヒの吾妻橋ビアホールがあった場所であり、かつてのビアホールのように気軽にビールを飲みたい、という声が多かったため、小ぶりながらもスーパードライホールの隣に「アネックス」という建物を作り、「江戸前ビアホール」という店をオープンした。

 そしてそれが、ビール醸造の規制緩和とともにこのアネックスの中に醸造所をつくり、地ビールを供給する店「ブルーワリーパブすみだ川」に生まれ変わる。

 

 さて、そんなアネックスに久しぶりに足を運んだのであるが、建物は変わりないものの、中味がだいぶ様変わりしていて驚いた。

 4F「サロン月灯り」3F「レストランハーモニック」2F「酒肆 吾妻橋」1F「23番地カフェ」と、各フロアごとに違うスタイルの店となっていたのだ。

 「地ビールはどうなったんだ?」と不安な思いにとらわれ、各店の特徴を見てみると、2F「酒肆 吾妻橋」(ちなみに「酒肆(しゅし)」というのは「酒を売る店」「酒を飲ます店」の意味)の説明に「生ビールとのマリアージュ」という言葉がある。ここならばまだ地ビールを供給してそうだ、とめぼしをつけて入ってみたら、ビンゴ。ただ、かつては3種類醸造していたはずの地ビールが2種類に減ってしまっていた。

  ヴァイツェン

  ヘレスボック

 どちらも十分に美味しいビールなのだが、決して大きくないグラスで一杯750円というのはやはり割高感が強い。ちなみに同じサイズのスーパードライは500円である。

 実を言うと、フラムドールやこのアネックスで出すスーパードライは結構旨いのだ。それだけに、どれだけの人が1.5倍の値段を払って地ビールを飲んでくれるかと考えると心細いものがある。

 

 地ビールが売り物だった「両国ビアステーション」は2006年2月に閉店してしまった。

 お台場の「台場地麦酒」も2006年3月をもって生産終了してしまった。

 地ビールを取り巻く環境は決して明るいとは言えない。

 ここ吾妻橋は、都内では最も早い時期から地ビール作りに着手してきた場所の一つである。だから、なんとか頑張って今後も地ビール醸造を続けてほしいものなのだが。(2006.4)

 

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