《アサヒ 富士山》〜意地か惰性か執念か〜

 驚いた。アサヒが1999年に発売したプレミアムビール「富士山」がまだちゃんと製造されて、売られていたのだ。

 久しぶりに店頭で見つけたので買って飲んでみた。

 「富士山の天然水だけで醸造した」というコンセプトは、1991年発売の「スーパープレミアム」からの流れを引き継いだものと思われる。金を基調としたデザインも共通だった。

 アサヒらしく、オールモルトではなく副原料に米を使ってすっきりした味わいに仕上げたビールである。個人的にはプレミアムビールとしてはいささかボディに欠ける点で物足りない味なのだが、一つのコンセプトの商品を長く供給し続ける、という点では評価できるのではないかと思う。受け入れられるか受け入れられないか長い時間をかけて是非を問う、そういう姿勢がない限り、日本のビールは文化として育たないからだ。

 それだけに、何故その後も「」「だわりの」といった競合する分野の商品をつぎつぎに市場に投入するのかが不可解。

 プレミアムビールはこうあるべきだ、という誇りをもって「富士山」を作っているのであれば、このビールをもっと力を入れて真面目に売ることの方が優先されるべきだと思う。

 今回、店頭で見つけた富士山は日付の古いもので、鮮度の点で、とても味を評価できるようなシロモノではなかった。

 世の中にはこのビールの存在すら知らない人も少なくないだろう。

 8年間もずっと作り続けていてもこんな売られ方では、と残念な思いにとらわれるのである。

 

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