《インドの青鬼》
長野県軽井沢のヤッホー・ブルーイングの製品。よなよなエールほどではないが、大きな酒屋やスーパーでよく見かけるようになってきた。
なぜ「インド」なのかというと、インディア・ペールエール(通はIPAと呼ぶ)だから。なぜ「青鬼」なのかは……不明。
インディア・ペールエールについては缶に書かれている。
「アルコール度が高く、ホップをふんだんに使ったインディア・ペールエールは、18世紀の英国で、長く過酷なインドへの航海のために、劣化しにくいビールとして造られました。そんなルーツを持つ『インドの青鬼』は、驚愕の苦味と深いコクで飲む者を虜にします。“魔の味”を知ってしまった熱狂的ビールファンの為のビールです。」
補足すると、当時のインドは英国の植民地であり、ホップには防腐効果があるのだ。
麦芽100%で、アルコール分は7%。グラスに注いだ時の色はやや濃いめである。
ホップが確かに利いている。だがアルコール度を上げるためか麦汁も濃いようで、そのホップの苦味をしっかり受け止めるだけのコクがある。一言で表すならストロングなビールである。標準小売価格280円は、約半分が税金であることを考えれば決して高くない。
ただ、飲みごたえのあるビールなのだが、ライトな日本のビールにばかり慣れ親しんだ人には、最初はちょっと受け入れがたいかもしれない。
これは本で読んだ話であるが、ある人が高級住宅地に住む茶道の先生のところへ訪問した時のことである。
その先生の奥さんが「そういえば、ゆうべ、フランス土産のぶどう酒を、あけてみたのですけれど、中味が腐っていて、とても飲めたものじゃありませんでした」と言うのを聞き、どんなワインなのかと捨てるために台所においてあったそのボトルを見せてもらったところ、なんと「シャトーマルゴー」であった、という話である。
もちろんそのワインは腐っていたわけでなく、まだ日本人にとってワイン(「ぶどう酒と呼んでいたくらいなのだから」)はなじみがない時代であったため、そのフルボディの高級赤ワインは、とうてい受け入れられる味ではなかった、ということである。
その後にワインが日本に普及・定着したように、ビールも「飲みなれない味イコールおいしくない」という図式から早く脱却できるとよいのだが。