キリンが7月末にコンビニ限定で発売した製品。大手メーカーのビールの新製品としては久々である。キリンに関して言えば、新商品は2008年以来になる。
メーカーによれば、「氷を入れるとコクが引き立つ、新スタイルビール」とのことであるが、実はこの発想、先例がある。サッポロが1988年に発売した「オン・ザ・ロック」ビールだ。残念ながら氷を入れて飲むスタイルは当時は定着せず、短期で消えてしまった商品だが。
キリンのアイスプラスビールは「上面発酵酵母を使用することで生まれる発酵由来の複雑な香りとカスケードホップの甘い香りが特長」(メーカーのニュースリリースより)という。原材料は麦芽・ホップの他にスターチと乳糖を副原料として使用している。乳糖を使用しているという点が珍しい。アルコール分は、サッポロのオン・ザ・ロックは氷で薄まることを前提に9%と高めだったが、キリンは5.5%。あまり薄まらないうちに飲め、ということなのだろう。
まずは普通に注いで飲んでみる。色が濃い。麦汁の味も濃いように思われる。ちょっとクセの感じられる独特の味だ。
次いで氷を入れる。先ほど感じられたクセのようなものは感じられなくなり、すっきりと飲みやすい味になる。なるほど、氷で割って飲むのを前提とした味づくりなのだろう。ただ、メーカーではビールを入れて後から氷を足す飲み方を奨励しているが、先に氷を入れてからビールを注いだ方がおいしいと思う。
缶はビールと氷のイラストを左右に配置した「あしゅら男爵」みたいなデザインだし、缶の裏側にある4コマ漫画は殆どギャグのようなテイストだし、限定醸造で長期に売らないとはいえ、何だか冗談半分みたいな軽いノリの製品である。しかし、こういう斬新な商品は最近では珍しく、まさにサッポロが「オン・ザ・ロック」を作った頃の開拓精神が感じられて楽しい。キリンでは「新しい楽しみ方を提案することで、より多くのお客様にビールの新たな価値を感じていただく取り組みを継続的に行っていきます」と言っているので、今後の展開に期待したい。
ちなみに、氷を入れてビールを飲むというやり方は昔から相撲部屋ではあったとか。
彼らは飲む量が半端ではなく、冷蔵庫では冷やすのでは追いつかないので、どんぶりに氷を入れてそこにビールを注いで飲むらしい。これを「かちわりビール」というとか。そして実はこの「かちわりビール」の隠れファンもけっこういるみたいである。