2009年春より、キリンはそれまで副原料を用いていた一番搾りを、麦芽100%に切り替えてリニューアルした。
キリンの普及価格帯での麦芽100%ビールと言えば、2007年発売の「ザ・ゴールド」を思い起こす。このザ・ゴールドは「次の100年のために完成させた」とか「17年ぶりの新定番ビール」とか大仰な宣伝文句で売り出したが、定番になりそこねて、いつの間にかひっそりと消えてしまっている。
確か「一番搾りスタウト」をレポートした時に、何でも一番搾りブランドに頼る当時のキリンの姿勢を、「そのうち『一番搾りザ・ゴールド』とか出さないだろうなぁ」と皮肉ったことがあったが、ザ・ゴールドの麦芽100%の流れを今回の一番搾りが受け継いだ、と考えれば、「当たらずといえど遠からず」だったな、と思う。
麦芽100%にリニューアルしたからといって、コクが深くなったとかそういうことはない。メーカーも「さらに澄みきったうまさを実現」と述べている通り、かつての一番搾りと大差はない。アルコール度も一緒。
かつてアサヒは「麦芽100%のビールだと、どうしても重すぎる」などと主張していたが、その同社が現在発売している「ザ・マスター」は決して重いビールではない。副原料を使用しなくてもすっきりした味が可能になったということなのだろう。
これでサントリー「モルツ」・アサヒ「ザ・マスター」・キリン「新一番搾り」と、大手三社から普及価格帯の麦芽100%ビールが出揃ったことになる。一昔前からは考えられなかった現象である。
ところで、キリンとサントリーは合併を模索中であるが、もしそうなったら、やはり「一番搾りモルツ」とか作るのであろうか? なんか、そんなのやだなぁ……。