《キリン ザ・ゴールド》

 100周年を迎えたキリンが「次の100年のために完成させた」というえらい気合いの入った新商品。「17年ぶりの新定番ビール」とメーカーは言うのだが、この「17年」前とは「一番搾り」を指すらしい。だとすると、その間に発売された商品は「定番」になるほど売る気はなかったということか? 本当かよ。

 「『とりあえず』ではなく、2杯目、3杯目も飲み飽きないビール」を目指したとのことで、この開発コンセプトやよし。うまいビールは何杯飲んでもうまいものなのだから。期待が持てるぞ。

 「『隠し苦味』が次の一杯もうまくする」と缶に書いてあるが、このビールの売りである「隠し苦味」とは何か。メーカーのホームページによれば、「麦芽の豊かなうまみと、後熟ホップによる穏やかな苦味が調和することで引き出される、複雑で奥行きのある味わいです」と説明されている。わかったようなわからないような……。麦芽とホップの調和、ということであれば、どんなビールでもそうだと思うのだが。

 麦芽100%だが、アルコール分は4.5%と最近の傾向にしてはやや弱め。2杯目、3杯目が飲めることを意識したのか? それにしてもオールモルトの定番狙いの商品、というのはサントリーモルツ以来のことである。

 飲んでみると、オールモルトにしては麦汁のコクは今ひとつ。それにあわせてか、ホップの存在感もやや弱い。これが隠し苦味なんだろうか。全体的に抑え気味の印象。昔のサントリーモルツをどこか髣髴とさせる。たぶんこれくらいのライトテイストにしておいた方が、夏場の暑い時期に売れるという判断なのかもしれない。

 キリンらしくそつなくまとめたな、という気はするが、あまりにも「定番」を意識しすぎたせいか、逆に面白みがないとも言える。

 「ラガー」「一番搾り」という二大看板商品をそのままに、第三の定番として市場拡大なるか、というとちょっと微妙なところではないかと思う。

 

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