1992年〜1996年の間に発売され、その後は製造中止となっていた「焙煎」が、コンビニで数量限定で再発売された。
焙煎と言えば、「ばいせ〜んのんだ〜ら またばいせ〜ん」という織田裕二のテレビCMが未だに耳に残っている。そういう点で、確かに郷愁をくすぐられる商品ではある。なんでも、サッポロがネットで「もう一度飲みたいビール」のアンケートをとったところ、三分の一の回答がこの「焙煎」に集中したため、再発売に踏み切ったとか。
缶には「香ばしい香り まろやかなコク」とあり、「焙煎麦芽を一部ブレンドして仕込んだほのかな香りとまろやかな味わいの今しか飲めないビールです」と説明されている。
グラスに注いでみると、確かに色は濃いめなのだが、中濃色とまではいかない。淡色と中濃色の中間というところか。はて、以前の飲んだ記憶では、もっと濃い色合いだった気がするのだが。なにぶんにも14年前の記憶なのであてにはならない。
当時飲んだ印象を「ビール略年譜」の方に記録してあるのだが、「ネーミングや色合いの割には思ったよりはコクも深みも少なく、サッパリ系の味だった」とある。で、今回久しぶりに飲んでの感想もまったく同じ。というより、当時より更に味が薄く感じられる。
たまたま家にあったサントリーモルツ(プレミアムじゃない方)と、この焙煎を飲み比べてみたのだが、モルツの後に焙煎を飲むと、殆んど無味無臭くらいに感じてしまうのだ。
発泡酒や第3のビールが台頭する昨今、ビールはよりビールらしい味が求められるようになってきている。したがって、かつてのスッキリ系主流だった時代の製品であるこの焙煎は、とてもじゃないが昨今の麦芽100%系のビールとは一緒に飲めない、ということか。
多分、ノスタルジーにかられて多くの人がリクエストしたのだろうし、それらの人は再発されたこの商品を手にすることとなるのだろうけれど、美しい思い出は美しいままにしておいた方がよかったのかもしれないよ、と思えてしまうのである。