《サッポロ 冬物語》

 季節限定ビールの草分けでもあるサッポロの「冬物語」が発売25年を記念して、1988年の発売当時の味を復刻再現、10月3日に発売になった。

 1988年と言えば、ちょうど前年に発売されたアサヒスーパードライが大ヒット。各社が競ってドライを発売する一方で、新しい味のビール造りがさまざまに試みられた時代の幕開けだった頃である。

 さて、そんな中、アルコール度をちょっと高めの5.5%にして、冬場にじっくり飲めるスタイルとして売り出したのがこのサッポロの「冬物語」であった。その季節だけしか売らない、という季節限定スタイルも当時としては珍しかった。

 その後も季節限定ビールが各社から続々と発売されたが、殆どが単発で終わった中、この「冬物語」がこうして25年間も生き残ったというのは、毎年一定のファンが買い続けているということなのかもしれない。

 さて、今回この復刻冬物語を飲んでみての感想だが、「25年前とずいぶんと印象が違うなぁ」というものだった。

 メーカーは「1988年発売当時の深みのあるコクとキレの良い後味を再現(ホームページより)」と言うが、確かに発売当時はそんな風に感じたのかもしれないが、2012年現在ではどうも勝手が違う。

 当時としては高めだったアルコール5.5%も、今や珍しくないし、もっと高いアルコール度のビールだってある。

 また、この復刻冬物語は副原料に「米・コーン・スターチ」を使用しており、当時はそれが軽さやスッキリ感には必須のように思われていたのであるが、オールモルトでもキレのあるビールが多数存在する現在では、逆に味の薄ささえ感じさせる。

 キリンの明治や大正の復刻ラガーならそれなりに意義はかんじるけれど、25年前、というのはいかにも中途半端である。

 焙煎の復刻の時にも書いたが、発泡酒や第3のビールとの差別化のため、ビールはよりビールらしい味が求められるようになった現代では、この復刻冬物語はもはやレトロで全時代の遺物にしか思えない。

 最近すっかり勢いに陰りのあるサッポロであるが、こんな過去のノスタルジーにすがった商品づくりでばかりではねえ。

 

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