まともな日本語を教えない勘違いだらけの国語教育
ありもと ひでふみ
(合同出版)

まえがき

 この本は、国語教育に42年間かかわってきた私の卒業論文である。高校教員15年、文化庁の調査官5年、国立教育政策研究所の研究官22年、多くの人々に助けられ退職を無事迎えた。お世話になったその人には直接ご恩返しはできないのが世の常だという。だからこの本を通してご恩返しをしたい。

幸い健康にも恵まれ、もう長くはない余生をこの国の子どもたちが少しでも幸せに暮らせるように力を尽くしたい思いでいっぱいである。

 顧みれば恥の多い人生である。間違ったことも教えてきた。怠けたこともあった。やりすぎたこともあった。感情的になったこともあった。大いに反省しご迷惑をかけた多くの人々におわびしたい。

 しかし、私はいつまでも後悔しない。その時はそれしかできなかったのである。80歳まで立派に生きても監獄に入る人もいる。私があと10年活躍できるか20年活躍できるかは、私の努力と神の意志だろう。

 これからの10年か20年で、今までのもろもろの悪行を挽回しようと思う。そのスタートに立って42年間に学んだことを総決算し、日本中の教師や管理職や行政の人々にご恩返ししたい。

私の本職は国語教育である。だからこの国語教育を通して日本中の関係者に明日から役立つ提言をしたい。公務にいるときは公言できなかったこともはっきり言わせていただく。それぞれの現場でみんな苦労していることは知っている。

しかし原発で食べている人々がかわいそうだからと言ってみんな原発に反対しなかったらこのざまではないか。大地震による爆発以前にも、原発が安全でないことは少し調べればわかったはずだ。なら、そのときに私たちはどこまでも強く警告し安全策をとるべきだったのだ。同じ過ちは繰り返すまい。

 言うべきことは言わなければならない。

 日本の国語教育の問題点は次の通りである。

1.超遅読でばかばかしく授業の進み方が遅い。

2.気持ちが悪くなるくらい気持ちばかり聞く。

3.教科書を絶対崇拝しかけらも批判させない。

4.差別や時代錯誤が多い物語文、まったく読書意欲を起こさなく論理的に支離滅裂の説明文に満ちた国語教科書。

5.ほかの教科の学習にまったく役立たない。

6.もちろん社会に出てからもまったく役立たない。

7.子供の嫌いな教科のナンバーワンで教師がやりにくい教科のナンバーワンである。

 こんな効率の悪い国語の授業をやっているのは私の知る限り世界中で日本だけである。

 しかし、こんなことはみんな気づいていることである。気づかない人や変えようと思わない人は放っておこう。争うのは時間の無駄である。

 少しでもおかしいと思い、変えようと思う人は、私の再建策を読んでいただきたい。私ほど全国や世界の教育関係者にふれ、内外の文献を読んだ人間も少ないと自負するが所詮傍観者である。組織の内部に深く入り込んだのは局部だけである。間違いがあれば、日本のどこかでお会いしたときにご批判ご助言いただくことを楽しみにしている。

 結論を申し上げる。日本人ぐらい国語教育に時間とエネルギーを注いでいる国民はいない。しかもその効果は最悪である。しかし教師たちが学び方を変えれば日本の国語教育は世界最高になるだろう。なぜなら教師たちは間違った方向に時間とエネルギーを費やしているからである。間違った教師教育がかれらの潜在能力に蓋をしているからである。

 第6章には、折に触れて私の心を強く打ち、世間にどうしても発信したかったことを書いたブログから、国語教育を変えるヒントになるものを選んでのせた。ブログでは性質上筆先をゆるめたが本書にのせるにあたって歯に衣着せなくした。

 本書を丁寧に読んで再建策を実行していただき教師たちの頭に覆い被さっている蓋と重しを取り払ってくださることを念願している。

 

2012年4月  ありもと ひでふみ


 

第1章 どこが役に立たないか

文章を読んで正確に理解できるようにならない

論理的な文章が書けるようにならない

スピーチやディスカッションができるようにならない

国語や本が好きにならない

クリティカルリーディングができるようにならない

課題を解決できるようにならない

ほかの教科の役に立たない

会社や社会に出て必要な国語の力がつかない

 

第2章 なぜ役に立たないか

<言葉の技術を教えないから>

正確に読む技術を教えない

論理的に書いたり話したりする技術を教えない

ディスカッションして課題を解決する技術を教えない

<授業のやり方がおかしいから>

だらだらと気持ちばかり聞いて感想ばかり言わせている

教師の考えを押しつけ、個性的で創造的で多様な意見を認めない

クリティカル・シンキングを教えず、意見を対立させず、課題を解決させない

自分の問題として考えさせない

 

第3章 役に立たない教科書教材

何も教えないで気持ちばかり聞く文学教材

センチメンタルで絶対に平和を築かない戦争教材

差別を押し付ける人権無視の教材

男ばかり出てくる女性蔑視の教材

退屈で国語を嫌いにさせる説明文教材

論理的でない支離滅裂な構成の説明文

科学的な文章なのに道徳を押しつける教材

 

第4章 役に立たなくなる背景

教えた経験のない人が教えている大学の教員養成、大学院の現職研修

教える技術のない人が教えている教育委員会の現職研修

夜遅くまでだらだらと学校にいる世界一効率の悪い教員の勤務

下手な授業をほめあう校内研修会、だれも読まない紀要に膨大な時間をかける研究会

部活指導でふらふらで授業研究などできない中学校の教師たち

地域のボスが採択の権限を持ち、ある日突然教科書が変わる教科書採択の闇

PISAにまったく対応しない全国学力テスト、競争主義、欧米偏重のPISA

効果のあがらない学習指導要領と評価基準

 

第5章 どうすれば役に立つようになるか−15の提言

<授業を変える>

気持ちばかり聞かず、正確に読む技術を教える

感想ばかり言わせず、論理的に書き、話す技術を教える

ディスカッションして課題を解決する技術を教える

教科書経典主義を脱却しクリティカルリーディングを教える

<教科書を変える>

センチメンタルな戦争教材、人権無視、差別、女性蔑視の教材をなくす

支離滅裂でつまらない説明文を一掃し、優秀なライターに論理的な文章を書かせる

教科書検定を廃止し自由競争にし、学校で民主的に採択させる

教師たちが理想の自主教材をつくる

<教師を変える>

授業のできない教育学部の教師や指導主事を一掃し、授業のできる人を育て採用する

子どもと親に授業評価をさせ、自己評価・同僚・校長評価と合わせてウェブにアップする

管理職は不要不急の雑務から教師を開放し、5時に電源を切り、夏休みは学校を閉鎖する

外国人指導助手に授業させ、教師に外国で日本語教育の助手を一年間経験させる

<文科省、国立教育政策研究所、教育委員会を変える>(3

文科省が権限を縮小し教育委員会や学校独自のカリキュラムや評価基準を作らせる

文科省から全く独立した研究機関を作り、基礎研究、政策批判をやらせる

指導主事と校長・教頭・学校幹部を雑務から解放し授業の指導ができるようにする

 

第6章 こうすれば国語教育は変えられるーブログから