狼爪


■狼爪とは
 狼爪って、「ろうそう」と読みますが、つまり親指の爪のことを指します。どのわんちゃん、ねこ
ちゃんでも前足にはありますが、猫の後ろ足には通常見られません(もしうちの猫にはついて
いるという方がおられましたら教えてください)。
 犬の場合、後ろ足には狼爪がある子とない子がいます。誕生時にない子もいますし、誕生後
すぐに取ってしまう場合もありますから、同じ犬種でもついている子とついていない子がいま
す。ですから、生えて(?)いても、いなくても特に異常というわけではありません。
 また犬種によっては後肢 (後ろ足)の他の骨と関節でくっついていないのでぶらぶらしている
子も見かけますし、大型犬では2本以上ある子もいます。


■狼爪の病気(?)

 病気といっても、あまりないんですけど過長(のびすぎ)、破損、周囲炎等があります。


□過長

 狼爪は他の爪に比べると地面に接する機会が少ないため、どうしても伸びてしまいます。そう
ですね、しょっちゅう穴掘りでもしてないと伸びちゃうんじゃないでしょうか? また後ろ足では全
くすり減らないので伸び放題です。
 さて伸びるとどうなってしまうかといいますと、犬の場合伸びた爪の中にさらに血管、神経が
伸びてきます。そこで切ろうとしても出血したり、痛がってなかなか切らせてもらえないようにな
ります。

□ 破損

 過長(のびすぎ)はまだいい方で、その状態でどこかで引っ掛けて折ってしまうとさ
あ大変。傷自体はあまりたいしたことはないのですが、出血量が多いので大変痛そうです。



折れるのは途中からだったり根元からだったり様々ですが、出血が止まりにくいので、傷口の
保護のために傷の大きさの割にはすごい量の包帯になったりしてしまいます。本当は包帯をす
ると足がむれたり包帯が汚れてしまうのであまりしたくないんですが、動物がなめたり、その後
すぐにどこかでこすって再出血してしまうのでしかたなく大げさな包帯になってしまう場合があり
ます。
 もっと伸びてしまうと、そのまま根元の皮膚に刺さってしまい更に大変です。爪が刺さった皮
膚が炎症を起こし、細菌感染を起こし膿が溜まってしまう場合があります。そうなるとささった爪
を切って、皮膚に食い込んだ爪を除去し消毒しなければなりません。そうすると痛いものです
から動物が嫌がってひと騒動です。麻酔処置が必要な場合もあるかもしれません。



□ 周囲炎

 ほかに爪周囲の皮膚が炎症を起こす場合があります。原因は細菌感染、アレルギー、外傷
や、前述の原因などと、ストレスによって動物がなめて炎症が更にひどくなる場合があります。
足は動物の口が届きやすいため、飼い主さんと一緒のときは気にしていなくても、夜中や退屈
なときにペロペロとなめてしまいますので、治りにくい場所です(注:決してなめて治るわけでは
ありません)。
この場合は創面の保護と消毒、細菌感染の予防などの治療が必要となります。また炎症の原
因となる細菌は常在菌(普段身体の表面に付着している菌)が多く、皮膚が正常な状態になり
動物が気にしなくなるまで上記の治療が必要となるので、完全に治るまで時間がかかります。
またストレスやアレルギー等が原因の場合、一度治ってもすぐに再発する場合もありますの
で、それら原因に対する治療も必要になることがあります。これらのことは狼爪だけでなく、他
の爪、前肢、後肢の皮膚についても同じことが言えます。



■狼爪の病気の予防



 さて、今まで述べてきたような狼爪の病気の予防にはどうすればよいでしょうか? 

これはご家庭で爪切りをしていただく以外ないと思います。普段患者さんとのお話しにでるの
は、どこを切ったらよいかわからないとか、爪切りを嫌がる、痛がる。または犬、猫でも爪切り
が必要なんですか? などといったことですが、目安としては犬の場合、狼爪は先が尖ってい
ない程度、他の爪は普通に起立していて爪が床(地面)に接するようになっていれば大丈夫で
す。
猫の場合は普段は格納してますし、爪研ぎするから大丈夫とは思わないで、狼爪が伸びすぎ
る場合もありますので観察は必要です。(病院の立場からすれば全ての足の爪切りをしていた
だければ幸いです。ひっかかれても軽症で済みますので…)。
爪切りを行う場合は市販のペット用爪切り、もしくは小型犬や猫ならば人間用の爪切りでも可
能です。切り方としては一度に大きく切ろうとせず先の尖っている部分だけ少しずつ切って、爪
切りに慣らせていただくことが大事です。
もし切りすぎて出血した場合は、出血した爪をガーゼかティッシュで押さえて5〜10分抑えておく
か、かかりつけの動物病院で止血処置をしてもらってください(爪用の止血剤はペットショップ
等で販売しているところもあります)。
うちの子は伸びていないから大丈夫といって何もしないよりは例え爪が伸びすぎていなくても、
普段から足を観察することができるようにすることはとても大切です。皮膚炎などの早期発見
などにも、とても役立つと思います。それでも爪切り等をさせてもらえないという方は、ペットショ
ップや動物病院で爪切りをしてもらってください。