正常の心臓の構造
    身体から帰ってきた酸素の少ない黒い血液は、上大静脈と下大静脈から右房に入る。
    この黒い血液は三尖弁を通って右室へ入り、肺動脈から右と左の肺へ送られる。
    肺では酸素をもらい炭酸ガスを出して黒い血液が赤くなり、肺静脈から左房に帰ってくる。
    僧帽弁を通って赤い血液が左室へ入り、左室の収縮で大動脈へ送られる。
     

大人 乳児
収縮期血圧 約120 約80
拡張期血圧 約70
呼吸数(1分間) 約70 約70から100
収縮期血圧
    血圧の高いほう

拡張期血圧
    血圧の低いほう

心室中隔欠損(VSD)
    右室と左室の間の壁に孔が開いている病気。左室から右室に赤い血液が流れ込み、肺を
    空回りしている。その分だけ心臓に負担がかかっている。
    通常乳児期に心臓の雑音で発見されます。
    小さい中隔欠損は高い率で自然に閉鎖します。1〜2歳までに多く起こります。
    孔が小さい場合(2〜3ミリ)には雑音があるだけで、心臓への負担はほとんどありません。
    孔が中程度(5〜10ミリ)ですと左室から右室へ沢山の血液が流れて心臓と肺の負担が
    大きくなります。胸部レントゲン写真で心臓が大きくなり、心電図で左室肥大が出ます。
    孔が大きい場合(10ミリ以上)には最も重症で左室から右室へ血液が沢山流れ肺高血圧
    を生じます。症状も乳児期に強く出ます。
    〈症状〉
      孔が小  雑音だけが多い
      孔が中  運動時に早く息が切れる
      孔が大  肺高血圧症を合併し乳児期に心不全と肺合併症をおこす
    〈心不全の症状〉
      お乳を飲めない・汗が多い・呼吸が早い・体重が増えない
    〈肺合併症〉
      呼吸が早い・呼吸ごとに呻く(呻吟呼吸)・風邪から気管支炎や肺炎になる
    
    中程度の孔の場合、乳幼児では経過をみていき幼児期以後も中程度の孔が開いている
    場合は手術で治した方がよい。孔が大きい場合には通常肺高血圧を合併して乳幼児期に
    症状が現れ、手術が必要になる。
               

心房中隔欠損(ASD)
     右房と左房の心房中隔に孔がある病気。孔の大きさは、通常1センチから3センチ程度です
     この孔を通って左房の赤い血液が右房へ沢山流れ込み、肺を空回りして右房・右室・肺に
     負担になる。最近、1センチ以下の小さい心房中隔欠損が乳児で心エコー図で発見される
     ようになったが、小さい欠損は1歳までに自然閉鎖することが多いことも分かってきた。
     ただし1歳以上で1センチ以上の大きさの欠損は自然には閉鎖しません。
     右房と右室は拡張していますが、肺高血圧を生じることは稀です。
     心臓の肥大と拡張は胸部レントゲン写真・心電図・心エコー図に明らかに出ます。
     しかし雑音は小さいので、聴診器で丁寧に聞かないと聞こえません。したがって心房中隔
     欠損はこうした検査で見つかることがしばしばあります。
     乳児期では症状がほとんどありません。しかし手術後には手術前と比べて体重が増え運動
     能力も増えるので、軽い症状があったことが手術後に分かります。
 

動脈管開存(PDA)
     動脈管開存は胎児で太く開いていた動脈管が、生後も閉じず開いている病気。
     正常の赤ちゃんでは出生後1日で動脈管は閉じます。未熟児とチアノーゼのある先天性心
     疾患で動脈管開存が生じます。動脈管は肺動脈と大動脈の間に開いているので大動脈から
     肺動脈に赤い血液が流れ込みます。
     動脈管の太さは内径が3ミリ以下の細い場合が多いですが太い場合は1センチにもなります
     細い動脈管は大動脈から肺動脈へ流れる血液が少ないので症状も軽く、心臓の雑音で偶然
     発見されます。太い動脈管の場合には沢山の血液が大動脈から肺動脈へ流れ込みますから
     肺はうっ血しますし、肺高血圧が生じて心不全の症状が出ます。症状は大きい心室中隔欠損
     の場合と同じで、乳児では呼吸が早くなり、お乳が飲めず体重が増えなくなります。幼児では
     疲れやすく運動するとすぐ息が切れます。
     未熟児の動脈管開存は、生後5〜6ヶ月までに自然に閉鎖することもあります。6ヶ月以後の
     動脈管開存は自然に閉じることはありません。
     細い動脈管は、カテーテルとコイルで閉鎖できます。内径が3ミリ以上の中から大の動脈管は
     手術で結紮、または切断します。

肺高血圧(PH)
     心室中隔欠損など先天性心疾患には、しばしば肺高血圧が合併します。
     胎児は呼吸をしませんし肺の中には液体が詰まっていて肺高血圧の状態です。生後呼吸が
     始まり、1〜2日で肺高血圧が次第に取れ肺動脈と右室の収縮期圧は次第に下がります。
     生後7日で肺動脈と右室の収縮期圧は30以下になります。
     大きい心室中隔欠損や太い動脈管開存が有ると、新生児期に肺血管が拡張するにつれて
     左室−大動脈の血液が右室−肺動脈に流れ込み、右室−肺動脈の圧は高く保たれ肺高血
     圧が続きます。これが心室中隔欠損や動脈管開存の肺高血圧です。
     肺血管の拡張が生後2ヶ月〜3ヶ月で生じますからこの時期に肺血流量が増えて、肺への
     負担と心臓への負担が増えます。この時期が心不全をおこす時期です。
     肺高血圧は、初めは肺血管の強い収縮で保たれます。この状態では根治手術をすれば、
     肺動脈圧は正常になります。しかし肺高血圧が1年以上続くと肺血管の内側の細胞が増えて
     内腔が次第に狭くなります。これが進むと次第に左室〜右室への血流が減り、ついには右室
     から左室への血流とチアノーゼを生じてアイゼンメンゲル症候群になります。この状態では
     手術をして欠損孔を閉じても、肺高血圧が続き死亡しますから手術は出来ません。 

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