二人の秘密
二人の秘密
<初めに>
二人が一番輝いていた、『動物園時代』において、
二人がこんな風な一時を過ごしていたら 素敵だな*って思って書いたものです。
* * * * * * * * *
ローズガーデンの側のテーブルでハジと小夜は アフタヌーンティーを楽しんでいた。
ハジと初めて会ってから4年の月日が流れ、16歳になったハジは、
身長も伸び、小夜を追い越していた。
相変わらず、髪を一本の三編みにしているハジを 小夜がじっと見つめていた。
「…?どうかしましたか?」
小夜の視線に気付いたハジが、取り分けた焼き菓子の皿を小夜の前に置きながら訪ねた。
「ハジの髪、自分で編むの?」
頬杖をついた姿勢で小夜が聞いた。
「そうですが?それがなにか?」
不思議そうなハジの顔をみて、小夜がいきおいよく立ち上がった。
テーブルの上のティーカップがガチャンとなった。
「私もやってみたい!」
目を輝かせて言った小夜に、ハジはキョトンとしたが、その顔はすぐに笑みに変わった。
「では、編んでさしあげましょうか?」
手を差し出したハジに、小夜はじれったそうな顔をした。
「違うの!」
そういうと、ハジの腕を掴んでなかば強引に 自分が座っていた椅子に座らせた。
「?小夜?」
わけが分からずにハジが戸惑っていると、小夜が三編みをほどき始めた。
「私が編んであげたいの!」
そういうと、ハジの髪をいじりだした。
もともと、髪など自分でやったこともない小夜が、どういう風の吹き回しだろう…
また、いつもの気まぐれかな?
ハジは、小夜のしたいようにさせることにした。
案の定、小夜は三編みができず四苦八苦していた。
ハジは笑いを堪えた。
『また今日はどうしてこんな事を思い付いたんだか…』
それでも、ハジはこの一時を楽しんでいた。
小夜が自分の髪に触れている…それだけで なんだか幸せな気分だった。
不意に小夜の手が止まると、後ろからハジに目隠しをした。
「!小夜?」
戸惑っているとハジの頬に暖かなものがそっと触れた。
「!!」
目隠しが解かれてハジがふりかえると、小夜はすでに走りだしていた。
小夜の後ろ姿を見送りながら、感触を思い出すように、そっと頬に触れた。
「…小夜…」
小夜は走った。
そして、戸惑っていた。
どうしてハジにキスをしたのか…
『だって、そうしたくなったから…』
そうは言っても、恥ずかしくてハジの顔が見られず走り出してしまっていたのだ。
疲れて座り込んだときには、湖の畔まで来ていた。
「ハジになんて言い訳しよう…」
そう呟き、しょんぼりと膝をかかえて水面をながめていた。
「言い訳が必要な事をしたんですか?」
不意に後ろから声をかけられ、驚いて振り返ると、ほどけた髪もそのままに
息を切らしたハジが立っていた。
「急にいなくならないで下さい!心配しましたよ!」
そういって小夜の隣に座ると、小夜の顔をじっと見つめた。
小夜は、ほんのり染まった頬を隠すようにハジとは反対の方を向いた。
「…」
妙な沈黙が広がり、湖を渡る風が草花を揺らし、通り過ぎていく。
「小夜、ローズガーデンでの…」
ハジがいいかけた時、小夜が慌てて振り返った。
「あ!」
思いがけずハジの顔が近くにあり、二人の唇が触れた。
「…あっあっあのっ!コレは…その…」
小夜は真っ赤な顔でシドロモドロになった。
ハジも頬を染め近くに咲いていた花を、さりげなく小夜の髪に挿し
そっと頬に口付けをした。
小夜の頬に触れたまま、ハジが微笑んだ。
「…何か、言い訳する必要がありますか?」
悪戯っぽく微笑んだハジを見て小夜も微笑むと、ハジの肩にもたれかかって、
暫く湖を眺めていた。
「言い訳なんてしないけど、今日の事は、二人だけの秘密だよ」
小夜は湖をみながらポツリと呟くと、ハジが黙って小夜の肩を抱き
湖を渡る風に髪を揺らしていた・・・
*fin*
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