耳をすませば・・・
耳をすませば・・・
夕飯の準備が整い、カイが小夜を呼びに二階に足を運ぶと、小夜の寝室から話し声が漏れ聞こえてきた。
『あんっ…そこは、駄目!ハジ、待って!』
『…またですか?仕方がありませんね』
微かに襖を通り抜けてきた声に、カイは思わず足をとめ聞耳を立てた。
———ま、まさか?———
カイは、思わず襖に耳を近付けて息を潜めた。
『ああ!ハジってばまた、イジワルゥ!』
『…意地悪をしている覚えはありませんよ?小夜』
———こ、コイツら、部屋ん中で何やってんだ?———
カイと襖を隔てた向こう側にいるのは、100年越しの恋人たち…しかも、小夜は目覚めて半年…ハジの気持ちを考えれば、恋人に触れたくなるのは、男として 至極当然だろう…
しかし…
いまや、カイも三人の子持ち(内一組は双子の姪)しかも、みんな年頃の娘たち…複雑な気持ちが募ってきた。
が、
ーーーいま声をかけていいものだろうか…い、いや、しかし…ーーー
カイは耳を峙てながら苦悶した。
『あ!やだっハジ待って!』
『小夜、もうこれで5回目ですよ?』
——ご、五回目?おいおい…下には姪っこがいるってのに!何考えてんだコイツら!———
カイの苦悶が苛立ちに変わった。
『あっ!お願いっ待って!』
『小夜、もう待ったは無しです。小夜が初めにそう言ったんですよ?』
『あっ!いやぁん!ハジのイジワルゥ!』
『小夜がいけないんですよ?』
ハジがクスクスと笑いを漏らし、さらに、涙声で小夜が抗議している!
こ、ここは、兄として妹を飢えた狼から救わなければ!
しかし…と、カイの手が止まった。
——ふ、二人が…その…ま、真っ最中だったら…
兄と言うよりも、男としての思いが先に立ち、襖を開けることを躊躇わせた。
『あっ!ああ…ハジの嘘つきぃ!初めてだって言ったのにぃ…』
『小夜、もうやめますか?それとも…続けますか?』
『はぅ〜!…もう一回…やる。』
——なにぃ!ま、まだやるだとぅ!さ、小夜!何考えてんだー!ハジめぇ!もう赦さん!——
カイしゃがみこんで怒りに肩を奮わせていると、不意に香織が声をかけた。
「カイ?何してるの?ご飯冷めちゃうよ?」
「わぁ!」
飛び上がるほど驚いている夫に香織はキョトンとした目を向けた。
「どうしてそこまで驚くの?小夜は?」
「わっ!ば、バカ!大きな声をだすなよ!いま小夜は!」
「?カイ、ホントにどうしたの?おかしいょ?…顔も赤いし…どっか悪いの?」
香織が心配そうにカイの顔を覗き込むと、後ろの襖がカラリと開いた。
「あれカイ?香織も…どうかしたの?」
出てきた小夜の、白っぽいノースリーブのカットソーも、ミニスカートも、ましてや髪にも乱れはなく、香織ともどもキョトンとしていた。
「ご飯できたから、呼びに来たの。小夜、なにやってたの?」
香織が普通に訪ねた。
その訪ね方は、極自然だ。30年たっても香織は親友のままだ。
——か、香織…なんて聞きにくい事を…——
カイが脂汗を滲ませていると小夜がムスッとした顔になった。
「香織!聞いてよ!ハジってば、初めてだって言ってたくせに、すごく上手いの!もう、私くやしくて!」
「小夜は負けず嫌ですから」
ーーーなんだと〜〜!!!ーーーーーカイはさらに愕然とした。
ハジがクスリと笑みをこぼすと、香織も声を出して笑った。
「ハジさん、オセロ強いんだぁ!」
「・・・はぁ?オセロ?」
カイが間抜けな声で聞き返した。
「そうだよ?香織に教えてもらったの!ハジにも教えてね、ハジもやったことないって言ってたから、勝てると思ってたのに…もう、10連敗ー!くやしー い!」
「小夜、またあとでお相手しますよ?」
「勿論よ!勝つまでやるんだから!あ、でも手加減したら駄目だよ!」
「貴女がそれを望むなら」
ハジが微笑を小夜に向ける
がくん…
力が抜けたように両手を着いてうなだれるカイに、香織・小夜・ハジが不思議そうに見下ろした。
「カイ?ホントにどうしたの??」
小夜が心配そうに聞くとカイはいきなり顔をあげ涙目で叫んだ
「紛らわしいんだよ!」
*おしまい*
*UP* 09.10.6
+ Short novel + Top +
おおっと!コレは裏か?と一瞬、期待した方ごめんなさいね(笑)
皆さんが、カイと同じ事を叫んで下さったなら、本望です(爆)
仕事で忙殺されているさ中に浮かび、ニヤニヤしながらまとめました(笑)