兄と妹・・・
兄と妹・・・
小夜はカイの部屋の前にいた。ためらいがちにノックすると勢いよくドアが開いた。
「・・・小夜」
カイは一瞬不安そうな顔をしたが、すぐにいつもの柔らかな笑顔になった。
「カイ・・・あのね・・・私・・・」
カイの部屋を訪ねたのは、カイの告白に対する答えを伝えにきたのだった。
「とにかく、中に入れよ」
カイは小夜を部屋に通した。
「あの・・・カイ、この前の話なんだけど・・・ぁ・・・」
小夜は突然の目眩に襲われ、倒れそうになった。
カイが小夜の体を支えた。
「小夜っ!大丈夫か?!」
「あ・・・ありがとう・・・大丈夫・・・」
すぐに離れようとした小夜に、カイは支えた手に力が入る。
「・・・カイ?」
カイは小夜を抱き締めた。
「・・・小夜、俺・・・」
カイは高鳴る胸を抑え、腕の中の体温を意識した。
小夜は意を決した。
「・・・カイ・・・私は、貴方とは一緒に行けない・・・私には・・・」
カイの胸に抱き締められたまま小夜が静かに告げた。
「・・・っ・・・さや!」
カイは小夜に唇を押し付けた。
「んっ・・・か・・・カイ・・・」
小夜はカイの唇から逃れようともがいた。
「んっ・・・やっ」
カイの唇が放れ、小夜を切なげに見つめた。
「小夜…俺、お前のこと・・・」
言いかけたカイの唇に、小夜の柔らかな指がそっと触れた。
「・・・カイ・・・カイには、いつまでも私のお兄ちゃんで・・・家族でいてほしいの・・・いつまでも…変わらずに・・・」
小夜の目には涙が滲んでいる・・・
カイは少なからずショックを受けた。
「・・・小夜・・・俺・・・」
泣き出しそうな顔になったカイは、勢いに任せて小夜をベッドへ押し倒した。
「カ、カイ!やっ・・・」
小夜の首筋にカイの唇が触れ、右手は乱暴に ブラウスのボタンを外す。
「・・・ん!・・・カイ・・・やめっ」
小夜はカイを受け入れそうになる…小夜自身、すでにカイを一人の男と見ていたのだから
・・・いや、だからこその拒絶なのだ。
「ん・・・やっ!・・・お兄ちゃん!やめて!」
「・・・!」
小夜の一言にカイは我に返った。
「・・・小夜・・・」
今にも泣きそうな顔をした小夜を、カイはただ見つめた。
小夜はだけた胸元を押さえながら体を起すと、カイは小夜の上から退いた。
「・・・ゴメン」
小夜はうつ向いて部屋を飛び出していった。
あとに残されたカイは、ベッドに力なく座り込みうなだれた
「・・・何やってんだ、俺。」
はだけたブラウスの胸元をおさえ部屋に戻った小夜は、ドアに持たれたまま 抑えた手に力を込めた。
「・・・カイ・・・」
窓辺に立つハジには、小夜の様子を黙って見守っているしかなかった。
ずっと無言のまま、今にも泣きそうな目で小夜は夜空の月を見上げていた。
「・・・小夜」
ハジが小夜の肩をそっと抱くと、小夜はハジの胸に顔を埋め声を殺して泣いた。
「・・・私には、貴方がいるから・・・」
ハジは小夜を優しく抱き締める・・・
月明かりが二人を照らし、カーペットには細く長い陰が一本の道の様に延びた。
それはまるで・・・二人が歩んできた道のように・・・
カイの部屋のドアが再びノックされた。
「小夜?」
カイはドアを勢いよく開けると、そこに居たのは真央だった。
「・・・なんだ、真央か・・・」
あからさまにガッカリするカイに真央はムッとした。
「あたしで悪かったわね・・・」
真央はツカツカと部屋に入ってきた。
「なんなんだよ、一体」
戸惑うカイに向き直ると何かを呟いた
「あ?なんだって?」
聞き取れず顔を近付けたカイに真央がキスをした。
「な・・・」
真央にキスをされるのは二度目だ。
「・・・真央・・・」
真央の気持ちは以前に聞いていた。だからこそ…なんだか気まずかった・・・
真央はベッドに腰を下ろすと、ポンポンとベッドを叩いた
「ちょっとここへ座んなさいよ!」
カイは素直に真央の横へ座った。
「小夜にフラレたの?」
真央は勝ち気そうに腕と足を組むと、呆れたように溜め息をついた。
「うるせぇな・・・」
図星を刺され、カイはそっぽを向いた。
「だらしないな!うじうじしてないで、小夜に言いたい事があるんじゃないの?
かっこ付けてないで!さっさと行きなさいよ!」
ドアを指差し、まゆげを釣り上げ、真央は精一杯カイを励ました。
「このままじゃアンタ、どっち付かずで余計気まずくなるわよ・・・それでもいいの?」
真央の励ましに、カイは意を決して立ち上がると真央の額にキスをした。
「サンキュー!真央!お前ってホントにいい奴だよな!」
カイは子供のような笑顔で部屋を飛び出して行った。
「まったく・・・人の気も知らないで・・・」
真央は額に手を当てて苦笑した。
小夜の部屋の前にくると、さすがに気まずかった。
あれこれと言い訳を考えているうちに、ドアが開きハジが立っていた。
気配を感じて、ハジがドアを開けたのだ。
「・・・カイ・・・」
小夜も気まずそうな顔で目をそらした。
カイは、思いっきり明るい声で切り出した。
「小夜、さっきはごめんな!俺どうかしてたよ。俺はお前の兄ちゃんなのにな!
ほんと、ごめん・・・」
頭を下げるカイを小夜はじっと見つめた。
「カイ・・・」
「俺、もっといい兄貴になるよ!お前を支えられるような兄貴にな!それだけ言いたかったんだ!
それじゃ」
カイは、それだけ言うと部屋を出て行った。
「カイ・・・ありがとう・・・」
傍らにいたハジが、そっと小夜の方を抱き寄せ二人で、カイが出て行ったドアを見つめていた。
*fin*
*UP* 08.9.25
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