ヤドリギの下で

 

 街はクリスマス・ムードに沸き上がり、華やかさが増していた。

葉を全て脱ぎ捨て、寒々しい街路樹さえも、沢山の光の粒をその梢に纏い、

街を行き交う恋人たちのムードを更に高めていた。


 ハジと共に散歩に出た小夜は、その浮足だった街の雰囲気に飲まれ、ワクワクしていた。

きらびやかな店のディスプレイ、溢れる音楽、行き交う人々の笑い声…小夜は目を輝かせていた。


ふと、通りの向こうの、白い教会に目を止めた。


「ねえハジ、あれは何?…リース…だよね?」


小夜が指を指した、傍らの長身の青年が指された方向に目をやると、

そこには、まるでケーキような、こじんまりとしたかわいい教会が建っていた

そのデコレートされたような扉に、小夜が見たこともないリースが掛けられていた。


「ああ…ヤドリギのリースですね」


「ヤドリギ?」


説明しようと小夜に向き直ったハジだったが、小夜のキョトンとした瞳に

柔らかな微笑を浮かべると、徐に小夜に左手を差し出した。


「せっかくなので、行ってみませんか?」


…うん。」


小夜は、その美しい微笑に、ほんのり頬を染めると、ちょっぴり照れたように右手を重ねた。



手を繋ぎ、小走りに通りを渡ると、お菓子のような教会の、チョコレートの様な扉をくぐった。


「わあ・・・」


小夜は入るなり小さな歓声をあげた。そこは、まさにお菓子の家そのものだった。


壁や柱がまるでクリームのように白く、各扉はチョコレートのようで、古いのに手入れが行き届いていた。


色とりどりに飾りが施されたツリーには、人形の形をしたジンジャークッキーが飾られていた。

手作りリースがたくさん壁に掛けられ、手作りの小物なども 飾られている。


色や形が様々なキャンドルには、火が灯され、幻想的な雰囲気を醸し出している。



ハジは、壁にかけられたリースの下に小夜を導いた。

Carolineーこのリースの制作者の名前だろうか・・・


ハジは黙ったまま、繋いでいる右手をきゅっと握ると、小夜が振り返った。



ただ見つめてくるハジの瞳に、小夜は胸の鼓動が早くなるのを感じていた


ハジのアイスプルーの瞳が、ゆっくりと近付いてくる


「な、なに?」


顔が赤くなっているのがわかるのに、ハジの瞳から目をそらせなかった


ハジの右手が そっと 小夜の頬に触れた…


「ヤドリギの下にいる女性にキスをしてもいいという風習があるそうですよ」


…え…キ、キス?」


胸の鼓動が更に早まった


教会の蝋燭の灯りに、小夜の真っ赤になった顔が照らし出された。

小夜は どう返事を返したらいいのか分からなかった…


「そして、女性はキスを断ってはいけないそうです」


…は、ハジ…」


柔らかな微笑みを称え、ハジの澄んだ瞳が近付いてきた…小夜は、自然に瞼を落とす・・・



冷えた唇にそっと、唇が重ねられた




長い…長い…キス…




冷えていた小夜の唇に 温もりが戻るほどに…長く…




美しいゴスペルが響いて来ても、二人の耳には聞こえていなかった

聞こえて来るのは 早鐘のような自分の胸の鼓動…お互いの唇の感触…ただ…それだけ…



名残惜しそうに、ゆっくりと唇が離れてしまうと、小夜はうっとりとアイスブルーの瞳を見上げた

そこには、頬に朱を掃き 照れた表情のハジが見つめ返していた…


「すこし、見て行きますか?」


「う…うん。そうだね…」


二人は微笑みを交すと、お菓子の様な教会の中を見て回った


手作りのポプリや、ぬいぐるみ、自家製ジャムの瓶等が可愛らしくディスプレイされていて、

二人は時を忘れて楽しんだ。


天使の衣装を着た子供達からクッキーを一袋買うと、並んで教会を後にした。


街は相変わらずパーティーのような賑わいで 沢山の人々が行き交う・・・



ハジは小夜のマフラーを直すと、そっと前髪に触れた。


「冷えてきましたね…帰りましょうか」


「うん。」


ハジが柔らかな笑顔で左手を差し出すと、小夜は満面の笑みを浮かべ右手を重ねた。

ハジは握ったその手をコートのポケットに入れると、二人は街路樹のイルミネーションに照らされ

寄り添いながら家路に着いた。










 仕事をしていたジュリアに、天使から買ったと言って、ジンジャークッキーを差し出し 隣のイスに腰を下ろした。

そこへ、タイミングよくハジがコーヒーのマグとココアの入ったマグをテーブルに置いた。


忙しなくパソコンのキーを叩くジュリアの指を見ながら、小夜はヤドリギの話をした、ジュリアは手を止め

小夜の後ろに控えているハジをチラリとみながら頬を染め「あら、まあ…」と呟いて、くすぐったそうに微笑むと、こっそり小夜に耳打ちをした。


「えっ!」


ジュリアの言葉に、小夜はココアの入ったマグを落としそうになった。

耳まで真っ赤になった小夜は振り返りハジ軽く睨んだ。


「ハジ?!」


「ヤドリギの下…でしたので…」


ハジはただ照れたような微笑みでそう言った。


…もう…」


小夜は、ぷくっと頬を膨らませたが、その頬は朱に色付き 可愛らしい微笑みへと変わった。








窓の外には 天使の羽根のような雪が ふんわりと舞い降りていた・・・













Mistletoe Kiss…ヤドリギのキス…それは、好きな人にキスをする口実なのよ…』


End

UP* 09.12.3

Short novelTop

久々にピュアな話を書いたら、

裏を書くときよりも恥ずかしかった…(/ω\*))ヾ


なんでだろう?


実は、何度も読み返しているうちに、

この二人が100年以上生きてるって事を思い出し、もう一本書きました(汗)


ヤドリギの下で〜Memories in zoo


内容は殆ど同じですが、結構気に入っているので

良かったら、そちらも読んでみて下さい(^^*