ヤドリギの下で(動物園編)
ヤドリギの下で(動物園編)
壁紙は、【Mariのいろえんぴつ】様からお借りしました
クリスマスパーティーの準備が着々と進み、屋敷内は慌ただしさ を増していた。
広大な動物園の、雪がうっすらと積もりはじめた散歩道を二人の男女が歩いて行く・・・
パーティー用のドレスに毛皮の着いた暖かなケープを纏った小夜は、同じくパーティー用の衣装の上に
ロング丈のコートを羽織ったハジを連れ出し、パーティーが待ちきれずに散歩に出たのだった。
散歩道は夏の姿からすっかり冬の姿へと変ぼうを遂げていた。
夏には青々と茂らせていた葉を全て脱ぎ捨て、寒々しい姿の木々たちも、その梢に真っ白な雪を纏い、
クリスマス・ムードを高める役を務めていた。
雪を踏み締めながら、歩いて行た小夜が、ふと木の上に目を止めた。
「ねえハジ、あれは何?…鳥の巣?」
小夜が指を指した、傍らの長身の青年が指された方向に目をやると、
そこには、まるで鳥の巣のような固まりが、欅の梢にいつくもくっついていた。
「ああ…ヤドリギですね」
「ヤドリギ?」
説明しようと小夜に向き直ったハジだったが、小夜のキョトンとした瞳に
柔らかな微笑を浮かべると、徐に右手を差し出した。
「近くまで行ってみませんか?」
「…うん。」
小夜は、その美しい微笑に、ほんのり頬を染めると、ちょっぴり照れたように左手を重ねた。
手を繋ぎ、雪を踏み締めながら木の側に立つと小夜は小さな歓声をあげた。
そこには鳥の巣のようなヤドリギが、いくつも梢を占領していた。
沈みはじめた夕日が積もった雪に反射し、キラキラと幻想的な雰囲気を醸し出している。
ハジは黙ったまま、繋いでいる右手をきゅっと握ると、小夜が振り返った。
ただ見つめてくるハジの瞳に、小夜は胸の鼓動が早くなるのを感じていた
ハジのアイスプルーの瞳が、ゆっくりと近付いてくる…
「な、なに?」
顔が赤くなっているのがわかるのに、ハジの瞳から目をそらせなかった…
ハジの右手が そっと 小夜の頬に触れた…
「ヤドリギの下でキスをすると幸せになれる…という言い伝えがあるんです。」
「…え…キ、キス?」
胸の鼓動が更に早まった
紅く色付いた空が、小夜の真っ赤になった顔を照らし出した。
小夜は どう返事を返したらいいのか分からなかった…
「そして、ヤドリギの下の女性はキスを断れないんですよ。」
「…は、ハジ…」
柔らかな微笑みを称え、ハジの澄んだ瞳が近付いてきた…小夜は、自然に瞼を落とす・・・
冷えた唇にそっと、ハジの唇が重ねられた…
長い…長い…キス…
冷えていた小夜の唇に 温もりが戻るほどに…長く…
何処かで教会の鐘が響いていたが、二人の耳には聞こえていなかった…
聞こえて来るのは 早鐘のような自分の胸の鼓動…感じるのはお互いの唇の感触・・・ただ…それだけ…
名残惜しそうに、ゆっくりと唇が離れてしまうと、小夜はうっとりとアイスブルーの瞳を見上げた…
そこには、頬に朱を掃き 照れた表情のハジが見つめ返していた…
ハジは小夜のケープを直すと、そっと前髪に触れた。
「冷えてきましたね…帰りましょうか」
「うん。」
ハジが柔らかな笑顔で左手を差し出すと、小夜は笑みを浮かべ右手を重ねた。
ハジは握ったその手をコートのポケットに入れると、真っ赤に色付いた夕日に照らされ
寄り添いながら屋敷に戻っていった・・・
・・・幸せになる・・・いつか・・・きっと・・・
そして気が付けば、100年以上の時が流れていた・・・・
クリスマスで賑わっている街へ、ハジと散歩に来ていた小夜は、ふと街灯に掛けられたブーケに目を止めた。
「これって・・・ヤドリギ…だっけ?」
訪ねようと振り向くと、ハジの唇が触れた。
あの頃と違って、ほんの短いキス・・・それでも、小夜の頬を染めるには充分だった。
「ヤドリギの下…でしたので・・・」
あの頃より更に背が伸び、顔立ちもすっかり青年になったハジも その頬の赤みを隠せずに微笑むと
左手を差し出した。
「そろそろ帰りましょうか・・・」
「・・・うん・・・」
小夜は微笑みと共に右手を差し出すと、その手をハジがコートのポケットに入れ、アパートへと戻って行った。
仕事をしていたジュリアに、天使から買ったと言って、ジンジャークッキーを差し出し 隣のイスに腰を下ろした。
そこへ、タイミングよくハジがコーヒーとココアの入った2つのマグをテーブルに置いた。
忙しなくパソコンのキーを叩くジュリアの指を見ながら、小夜はヤドリギの話をした、ジュリアは手を止め
小夜の後ろに控えているハジをチラリとみながら頬を染め「あら、まあ…」と呟いた。
ジュリアはくすぐったそうに微笑むと、こっそり小夜に耳打ちをした。
「えっ!」
ジュリアの言葉に、小夜はココアの入ったマグを落としそうになった。
耳まで真っ赤になった小夜は振り返りハジ軽く睨んだ。
「ハジ!?」
「ヤドリギの下…でしたので…」
ハジはただ照れたような微笑みでそう言った。
「…もう…」
小夜は、ぷくっと頬を膨らませたが、その頬は朱に色付き 可愛らしい微笑みへと変わった。
窓の外には あの日と同じように 天使の羽根のような雪が ふんわりと舞い降りていた・・・
『Mistletoe Kiss…ヤドリギのキス…それは、好きな人にキスをする口実なのよ…』
End
*UP* 09.12.3
+ Short novel + Top +
動物園版も読んで下さってありがとうございました!
なんていい人なんでしょう!(T▽T)
ついでに感想なんか貰えたら、もっと喜んじゃいます!(笑)
両方の感想など頂けると、更に嬉しいです!
動物園編