妊娠中絶 ・ 親密圏の問題


 外側から語ることのできない問題がある。
 
自分の父親にレイプされて妊娠した人もいるんです。
 ただ単に(政府が)中絶を禁止するしないの問題ではないんです

 アメリカではプロライフ(中絶反対派)とプロチョイス(中絶容認派)があり、
選挙の際に大きく影響。この問題は、生命倫理の問題というよりもむしろ、
キリスト教原理主義が深く影響している。

2003年11月5日、ジョージ・ブッシュ大統領は「中絶禁止法」に署名

「女性の選択権」より「胚胎の権利」を選ぶことになる。
カリフォルニア州サンフランシスコの連邦地裁は、

2004年 6月1日、この「部分出産中絶禁止法」を違憲と判断した

ホワイトハウスは同日「忌まわしい行為を止めなくてはならない。
大統領はこの判決に強く反対だ。この法を守るために必要なことはなんでもやる」
と発表。

はたして誰もが「中絶しちゃおっかな~」という軽さで中絶できるのかどうか。
中絶は「外側から決めることの出来る問題なのか?」どうか。
国家や社会が、ベットの上のことに干渉できるのか、どうか。
干渉のはげしい社会では、人間そのものが壊されていく。
「干渉的な関係」とはなんだろう。「干渉」戦争も。

文化としての妊娠中絶』(池上、根岸訳、勁草書房、1985年)での数字はこうだ。

人間が生涯に産むことが可能である平均分娩数は7(発展途上国でみられる数値を参考)。
ところが、発展途上国では人口爆発の問題がある。
これを、人工維持に必要な2.2という数字にまで下げるには、
中絶という方法に頼ると平均して9.6回人工妊娠中絶を受けることになる。

(ちなみに03年の日本の合計特殊出生率は1.29。これは2.2を下回るので、
人口維持ができず、世界的にみても恐ろしい速さで超高齢社会が来ていることを意味。
6月27日毎日新聞によると「厚生労働省は1.29に低下した03年の合計特殊出生率について、
年金制度改革関連法が成立する12日前の5月24日には把握していたことを認めた。」)

ティーツェという研究者によるともし効果的な避妊
(現在最も有効的に使われている避妊方法はだいたい95%)
によると、この中絶を20分の1までに減らすことが可能であるという。

つまり、9.6回の中絶が20分の1に減るということは、
 
中絶しなければならない回数が、1以下になる。でもゼロではない。
ひとりの女性の生涯における平均中絶回数が0.48回(ほぼ0.5回)。
この数字は2人にひとりの女性は生涯において中絶を避けられない
かもしれないことを示唆する。
普通の女性が生涯に中絶を避けられない確率が50%。
と考えた場合、それでも安易に中絶反対を連呼できるのだろうか。

最も確実な方法で避妊を行った場合の生涯の
「避妊成功率50%という数字」の意味。
こうした「避けられない状況」を論議することなく
中絶の善悪や是非は問うことができない。
なぜなら「避けられない状況」で倫理を問うことは出来ないから。
避けられない状況で起こっていることを吟味できなければ、
生命倫理は「倫理」になり得ない。


ちなみに米国で初めて「中絶は女性の権利である」と
最高裁判決が下ったのは1973年1月22日。ロウ判決。

干渉chromatid interference // friction // interference
interposition // intervention // meddling『英辞郎
干渉的。 disagreeably meddlesome。

アメリカの「外側から」の「干渉的」思考→パターナリズム(キリスト教の問題)
いずれまた考えたい。

<<10月17日追記>>
米国大統領選の討論会にて。
ケリー
自分の父親にレイプされて妊娠した人もいるんです。
 ただ単に(政府が)中絶を禁止するしないの問題ではないんです。」
と言ったのに対し、
ブッシュ
答えは簡単だ。"yes" か "no" だ。それ以外になんの答えがあるのだ?
と答えた。いさぎがよい。

参考文献『生命の倫理を問う』(佐藤和夫, 伊坂 青司, 竹内 章郎、大月書店、1988年)
     と~っても、とてもとても分かりやすい哲学してる人たちの対話。
     こういう「倫理」をぜひ英訳したいもの。
     タイトルは売れなさそう(失礼!)ですが、中身はかなりエキサイティング。
     英訳はまた次回。本は今品切れ中。いい本みんな品切れ中。
     私は血まなこになってネットで探して
     沖縄やんばるの古本屋「真星堂」さんから600円で入手しました。



 

Posted: 2004年07月02日 (金) at 21:56 
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