Flush Attackとハイエナ戦術


フラッシュアタックと

ラスベガスのビデオポーカーは、日本のパチンコ・パチスロと異なり、random dealであることが必要とされているので、基本的に、いつマシンに座ってもpay out率は一緒であり、例えば「もう10時間も4 of a kindが出ていないので、そろそろ爆発するだろう」というようなハイエナ戦術は、非常に明らかな場合、即ちRoyal FlushのJackpotが溜まったとき以外はないように思えます(注:4 of a kind程度でもJackpot制になっている仕様のマシンもわずかですが存在します。しかし、いずれにしろJackpot額が明示されています)。
 しかし、Flush Attackというマシンは例外的にハイエナが効きます。このマシン基本的にはDouble Bonus pokerで、配当は次の通り

Royal 800
St. fl 50
4 Aces 160
4 2's-4's 80
5 5's-K's 50
Full house 8
Flush 5
Straight 4
Trip 3
Two pair
High pair*
1
*Jack以上のpair


この配当のままでは、非常に率の悪いDouble Bonusに過ぎない(pay out率94.19%)のですが、実は、Flushを4回引くとON modeになり、Flushの配当が5→25になります。On modeのときに1回フラッシュを引くと、通常モード(Off mode)に戻り、また4回フラッシュを引くとon modeになるということを繰り返す訳です。
 かつてはこのマシン一つの島でリンクされており、その島のFlushが合計4回になると全てのマシンがon modeになり、誰かがon modeのフラッシュを引くと、off modeに戻るというものでした。この場合の最適戦略は、言うまでも無く、off modeのときは「見」(あるいはプレーしているフリをするなど)、on modeのときには、戦術よりも「スピード」優先というのは明らかであり、実際リンクされていた当時のFlush Attackのon mode時は結構熱い叩き合いだったらしいです(solid "live" poker playerのK氏談)。
 しかも、マシン登場当時はoff mode Flushを3回引くとon modeになるという甘い設定のマシンが散見されたらしく、あっと言う間にリンクマシンからスタンドアロンマシンに更改されると共に、On modeへの移行もFlush4回と厳しくなって行きました。
直感的な最適戦術は通用しない

このマシンの最適戦術を考えて見ましょう。
直感的には、「on modeのとき、off modeのときともにそのときの配当に従った最適戦術で打つ」という考え方が最も常識的ですが、この場合

on modeのpay out率
134.94%
off modeのpay out率
94.19%

となります。全体としてのpay out率はどうなるでしょう?頭の体操も兼ねて考えてみて下さい。
単純平均を取ると5回をサイクルとして、off modeのflushが4回、on modeのflushが1回ある訳ですから、
pay out率=(94.19%*4+134.94%*1)/5=102.34%
と驚くべき数字が出てきます。あまりに良すぎる数字ですが、もちろん間違いです。このうち方ですと、off modeのときに1回フラッシュを引くまでの平均プレー回数(91.71回)の方が、on modeのときのフラッシュを引くまでの平均プレー回数(41.96回)より大幅に大きくなるため、実はトータルのpay out率を計算するときには、これらの数字で重み付けをする必要があり、
pay out率=(94.19%*91.71*4+134.94%*41.96*1)/(91.71*4+41.96*1)=98.37%
が正しい数字となりますす。

最適戦術はどうなるのか?


それではこの98.37%という数値より大きいpay out率となる打ち方が存在するのかというと、上の議論で分かるように、実はoff modeのときには、もう少し積極的にFlushを狙いに行くことにより、off modeでのプレー数を少なくする一方、逆にon modeのときには、出来る限りon modeにいる時間を長引かせるためにFlushを消極的にしか狙わないことにより、pay out率を上昇させることが可能なのです。
これを具体的に調べるため、on off それぞれのmodeのときにFlushの配当を5,25以外の戦略で打ってみた場合のpay out率の変化を見てみましょう。

【4回のoff mode flushでon modeになる場合の戦術によるpay out率の変化】

上のグラフでoff 19、on 12などとあるのはそれぞれoffのときにFlushが19だと思って打つ戦術、onのときにFlushが12だと思って打つ戦術のことです。グラフの頂点、即ちもっともpay out率が高くなるのは、on modeのときもoff modeのときもFlushの配当が9と思って打つ戦術(Flush 9 strategyと略)となります。on modeのときもoff modeのときも、それぞれのpay out表での最適戦術で打ってないにも関わらず、トータルとしては常にFlush 9 strategyで打つのがベストだというのは直感的には理解しにくい所ですが事実です。このときpay out率は100.04%とover 100%になります。
 参考までに、5,3,2回に1回off modeになる場合について、同様のグラフを示しておきます。

【5回のoff mode flushでon modeになる場合の戦術によるpay out率の変化】
(pay out率最大は98.90%, on時off時共Flush 8 strategyの場合)

 
【3回のoff mode flushでon modeになる場合の戦術によるpay out率の変化】
(pay out率最大は101.84%, on時off時共Flush 10 strategyの場合)


【2回のoff mode flushでon modeになる場合の戦術によるpay out率の変化】
(pay out率最大は104.91%, on時off時共Flush 12 strategyの場合)

ハイエナの効果を考慮すると

 上のグラフを見れば分かるように、off mode Flush 3回バージョンのマシンのpay out率は101.8%と大甘だった訳ですが、もちろん今は絶滅したと言われています。従って現存するFlush attackのスペックは、off mode Flush4回バージョンだと考えても良いでしょう。しかし、更なる改悪が加えられて5回バージョンになっているものもあるかも知れません。(マシン自体は99年末にCircus Circusで一島(8台?)の存在を私が確認しましたし、2000年9月現在でBally'sに数台あったとの確かな報告もあります。)いずれもバージョン不明なので、一サイクルは打ってみないとこれを確認出来ないのがちょっと痛い所ですが、最悪の5回バージョンでも98.9%のpay out率ですから、試しうちの調査コストはいずれにしろnominalです。
 さて、バージョンが特定出来たとして、そのバージョンでの最適戦略で打つことがベストかと言うと、実はそうではありません。なぜなら、このマシンのルールを知らない人が、off modeのFlushを1,2回引いて、去って行く可能性が多分にあるからです。ある島(カジノ)のFlush Attackマシンを、全てon modeになるまで回してみる作業を行えば、幸いにしてこのようなマシンにぶつかる可能性は高くなるでしょう。(もちろん、on mode Flushを引いたら即座に別のマシンに移る。)従って、off mode Flush4回バージョンであっても、実効的にはoff mode Flush 3.8回バージョンや3.6回バージョンである可能性もある訳です。
 この場合、off modeの実効的な回数が3.5なのか3.7なのかは、打ってみないと分からない訳ですから、ベストな戦略は、pay out率の絶対値が大きいと共に、off mode 4であっても、3.5であっても、pay out率の変動が少ない戦略となります。これを調べて見ましょう。
 全ての戦略を検討対象にする訳には行きませんが、

1. off mode 2,3,4,5のときのいずれも、on/off modeの戦術が同じケースが最大pay out率となっている。(注:これは幸いな偶然であって、off modeのときFlush 8, on modeのときFlush 12などという戦略が最大である可能性ももちろんあった訳です。) 

2. しかも、off modeとon modeのときの戦略を変更することはミスを誘発しやすいので単純な戦略の方が良い

以上の観点から、ここではon/offの両モードでFlush 8.9.10,11という同一の戦略を取った場合の、実効的なoff mode Flushの回数に対するpay out率の変化を見てみましょう。。

【Flush X 戦略のpay out率の変化】


(注:はFlush 10, はFlush 10です。ソフトバグで文字が欠けてしまいます。。。)

マシンの設定がoff 4回バージョンであれば、このグラフの左半分しか意味がないのですが、特性差は僅かですがFlush 9戦術が広範な範囲で良好なpay out率を示していることが分かります。また、off 5回バージョンの場合はFlush 8が良いのですが、Flush 9戦術でも遜色がありません。
 それに加え、わずかでもハイエナの効果があれば、pay out率が格段に向上することに注意して下さい。

幸いにもon modeマシンを見つけたら?

on modeのマシンが放置されていることは、ほとんどあり得ないことだとは思いますが、その可能性は0ではありません。また、これが最後のプレーと決めたときにも、on modeのマシンが放置されているときと同じ状況になります。このときには、どういう戦術を取れば良いのでしょうか。これは議論の分かれる所ではありますが、pay out率を最大にするというよりも、「on modeの時間内にそのマシンから稼ぐことの出来る金額の絶対値」を最大化する打ち方を取るというのが一つの納得の行く打ち方です。Flush X Strategyに対して、(プレーした時間に依らず)、この間の平均利益そのものがどのように変化するかを示したのが下図です。

【on mode時の利益の変化】


これもまた偶然ですが、Flush 9 strtegyでの利益が最も大きくなっています。(15.18 unit。従って$0.25, 5枚賭けマシンにおいては$18.98)。利益率そのものは、on mode時の最適戦術であるFlush 25 strategyが最もすぐれているのですが、この場合には最大の利益を得ることが出来ない訳です。ちなみに平均プレー時間は、グラフの範囲では5分ー9分程度なので、いずれにしろ大した時間(他の「利益率」の大きいゲーム、マシンのプレー時間に影響を与える程の時間)ではありません。

結論

このように、Flush Attack攻略法の背景には、他のマシンの攻略に見られない興味深い点がいくつも存在するのですが、結論としては非常にシンプルなものになります。

0.まずマシンスペックを把握すること(off mode 4回バージョンなのか、5回バージョンなのか)
0.5 5回バージョンは特段の理由が無い限り、放棄。4回バージョンでは以下の戦略を取る
1.off mode、on mode共にFlush 9 strategyで打つ。(on modeマシンをラッキーにも発見したときを含む)
2.off modeの個別のマシンが何回のFlushでon modeになったかを必ずメモする。
3.on modeのフラッシュを引いたら、「別の」off modeマシンに移る
4.1島(あるいは1カジノ)のマシンを2,3の繰り返しで打ったら、1日の仕事は終了。
5.得られたデータを元に、実効的なoff modeの回数(ハイエナの出来る度合い)を把握する

なお、Flush Attackに限らず、ラスベガスのVP machineの稼働率はそれほど高くないので、on modeが終了したときに、そのマシンの状態(最終pay out、credit数)などをメモしておけば、翌日(あるいは、数時間後)に、自分がon modeを引いたばかりのマシン(従ってハイエナ不可)に座ることを避けることが出来ます。
 実効的なoff modeの回数がどの程度になるのか、統計的に十分なデータを取ったことは私自身はないのですが、off mode4回バージョンのデフォルトのスペックでも、pay out率はover 100%ですので、ハイエナ効果を無視しても、十分打つに値するマシンであることは確かです。通常のDBを打つ代わりに、気分転換も兼ねてFlush Attackを打たれてはどうでしょうか。

(非常に厳密に考えると、ここで分析した以外にもっと良いストラテジーがある可能性が存在します。例えばFlush 9.54 strategyなど、Flushの配当が整数値以外のものも探索しなければなりませんし、Straight Flushに対してのみFlushを少し優先して取るなどの細かい相違点も考え出すと、戦術の候補は非常に多数(但し,有限個です)存在します。しかしながら、非常に細かい点までを考慮したベストストラテジーであっても、その差は上記のものに比べ、無視出来る上に、他人が引いておいてくれたoff mode Flushの平均回数などという曖昧なパラメータが入ってくる以上、厳密な意味での戦術の最適化は実用上も意味がありません。)


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