Royal Flushは狙うべきか?


Video PokerのSlotとの大きな相違点の一つとして、「戦術を変更することにより、役の出現確率をある程度変化させられる」ことがあげられます。特に、VPプレーヤーの中には、「ロイヤル命」の方も結構いらっしゃるようです。いわゆる最適戦術を離れて思い切ってRoyal Flushを狙っていくとどうなるかを見ていきましょう。
 また一方で、Royal Flushをあえて狙いに行かない戦略を取ることにより、マシン特性を穏やかにすることができ、結果的にpay out率は多少下がるが、破産リスクを低下させることのできることが明らかになっています。(【最適戦術は必ずしもベストとは限らない】を参照)。これについても合わせて考えて見ることにします。とは言っても、全ての戦術について検討することは不可能なので、例によって基準となるマシン(本コラム内ではJack or Better 9/6、$0.25デノミでRoyalの配当が$1,000即ち800 coins for 1 の配当となるもの)を、Royalの配当のみが異なる別のマシンの最適戦術で打った場合の、pay out率、Royal Flushの出現確率を調べてみました。なお、以下ではRoyal Flushの配当が$xであるマシン($0.25デノミ)の戦術を、簡単に$x戦術などと呼ぶことにします。

結果を下の表に示します。
用いる戦術 pay out 率(%) Royal Flushの出現確率 出現頻度(X回に1回) 戦術の主な変更点
他コメント
$0 98.961 1.284E-05 77906 Royal Flushの配当が0という、現実的ではない仮定。Dealt Royalもブレークすることになるが、それでも比較的高いpay out率になっていることに注目。
$125 99.239 1.617E-05 61837 Royal 配当は100 for 1
$312.5 99.442 1.942E-05 51481 Royal 配当は250 for 1。即ち、full betしない場合の戦略をfull betした場合に適用したもの
$700 99.513 2.117E-05 47245 4 CD flush>3 CD royal。所謂税込み戦略
$1000 99.544 2.476E-05 40391 当然、この戦略を用いた場合のpay out率が最大となる。本HP読者なら、この戦略は「当然」既知としたい。
$1500 99.447 3.012E-05 33202 3 CD royal> high pair, 4 CD flush
$2000 99.420 3.054E-05 32744 AK 2 CD royal>AKQJ 4 CD straight. AT 2 CD royal>A,J unsuited
$4000 99.260 3.170E-05 31543 3 CD royal>two pair
$8000 98.136 3.445E-05 29025 3 CD royal>flush, straight, three of a kind. 2 CD royal>low pair (low pair>2 CD royal のケースもあり).
$16,000 96.593 3.640E-05 27470 2 CD royal>4 CD flush
$32,000 90.267 4.022E-05 24863 2 CD royal>high pair
$64,000 87.949 4.089E-05 24459 2 CD royal>two pair, 1 high card>4 straight(注:1HCは1 CD royalでもある)
$128,000 77.815 4.241E-05 23577 2 CD royal>flush, straight, three of a kind
$250,000 71.383 4.279E-05 23368 2 CD royal>full house. 1CD royal>4 CD flush
$500,000 61.123 4.317E-05 23166 2 CD royal>4 of a kind(4 of a kind >2CD royalの場合もあり). 1HC>two pair, high pair
$1,000,000 54.359 4.328E-05 23107 2 CD royal>4 of a kind. 1HC>straight.
$2,000,000 49.100 4.332E-05 23082 2 CD royal>straight flush. 1HC>fullhouse, flush.
$4,000,000 49.055 4.332E-05 23082 garbage>flush(with no HC)
$8,000,000 48.306 4.333E-05 23081 1HC>4 of a kind. garbage>full house (with no HC)
$16,000,000 48.079 4.333E-05 23081 1 Ten>straight flush. garbage>quad(with no HC)
$32,000,000 48.048 4.333E-05 23081 garbage>straight flush(with no HC)。出来合いストフラ(low cards only)を捨てるので、これが最もロイヤルに対してアグレッシブな戦術。最もpay out率が低くなる。左記、pay out率の下限値、は機種によって若干異なる。但し,Royalを引く確率の上限値はdraw形ポーカー(Jokerなし)であれば、同一の値である。


また、これをグラフ化したものを下に示します。(グラフにおいて、色の線がpay out率、色の線がroyal flushの出現確率です)。

【戦術によるpay out率とRoyal 出現頻度の変化】





このグラフから、驚くべきことが分かると思います。
1.$0戦術〜$10,000戦術程度のレンジで戦術を変更しても、pay out率はあまり低下しない。特に、ロイヤルに対して最も消極的な$0戦略であっても、pay out率の低下はわずかである。その一方で、このレンジで戦術変更することにより、Royal Flushの出現頻度を80,000回弱に1回〜30,000回弱に1回程度にかなり変化させることが出来る。

2.$10,000戦術を超えて積極的にRoyal Flushを狙いに行っても、Royal Flushの出現確率はそれほど増加しない。全ての配牌に対して、Royal Flush狙いを最優先(即ちT9876 straight flushに対して、Tのみを残す)しても、その出現確率は23081回に1回であり、$8,000戦術に対してRoyal Flushの出現確率はわずかに25%程度しか増加しない。その一方で、$10,000戦術を超えると、どんどんpay out率は低下し、Royal Flushを最優先するとpay out率は48%にまで下がる。

【Royal Flush狙いを命にしている方へのアドバイス】
ほとんど自明ですが、アドバイスをまとめてみます。
戦術変更をするとしても$4000(〜$8000)戦術程度に留めること。具体的には
1.配牌High pair, Two pair, (Straight),(Flush)までの役をつぶして、3 CD royalからロイヤルを引きにいっても良い
2.2CD royalをlow pairより優先しても良い
3.AT 2CD royalもそれなりに積極的に残す

この程度で、十分ロイヤルの出現頻度は3万回弱に1回までもっていくことが出来ます。注意したいのは、2CD royalをHigh pairよりも優先しないということです。これは直感では多少納得しにくいでしょうし、その他にも微妙な戦術が出て来ますので、ロイヤル狙いをする前にも、いつもと同じくボブダン等の練習ソフトで、Royalの設定を$4,000なり、$8,000なりにした上で、予め練習しておくことがやはり重要となります。なお、$4,000戦術などを取るとリスクは最適戦術の場合に比べ、かなり増加しますから(【最適戦術は必ずしもベストとは限らない】参照)、ロイヤル狙いの戦術は、あくまで、「お金のことはあまり気にしない」観光客VP playerのためのものであることは肝に銘じておくべきでしょう。

【応用例】
Serious Playerは、リスクも増える上に、pay out率も下がるようなRoyalに対して積極的な戦法を取ることに嫌悪感があることでしょう。しかし、例えばBarbary Coastのプロモーションのように、1回ロイヤルを引いたときに24時間以内(実質的には、その人が24時間以内に打つ時間分のプレー)に再度ロイヤルを引いたら、2度目の配当は倍付けというようなルールですと、1回目のロイヤルを引く確率を多少高めたほうが、overallでのpay out率が(多分)良くなるはずです。このようなタイプのプロモーションがあるケースでは、seriou playerの方も、ロイヤルに積極的な方向に戦術を多少シフトした方が良いでしょう。これはFlush Attackでの議論と同様です。具体的にどの程度の戦術を取るのがベストかについては、今後考えてみることにします。

【では、ロイヤルを引くのに必要な資金量は?】
Cash Backを含めてpos. EVな状況では成り立ちませんが、観光客モードの方ですと、(あるいは、ゲームセンターのメダルポーカーで遊ぶ場合)「自分は、このカジノで一生に1回ロイヤルが引ければ満足である。マシンのpay out率が100%を切っている場合に、出来るだけ損失を抑えてロイヤルを引くにはどうすれば、どの戦術を使えば良いのか」といった状況もあるでしょう。
 この回答も上のグラフをちょっといじれば出てきますので下に掲載しておきます。状況はJB 9/6、即ちペイアウト率が100%を僅かに切る場合と、JB8/5、即ちペイアウト率が問題にならないほど低い場合です。(なお、「損」を扱う問題なので、厳密に解析する労力を払う気もしないので、JB8/5の場合は、JB9/6よりも2.25%pay out率が低いが、Royal の出現確率はJB9/6と同一という仮想的なマシンで近似しています。)結果は、$0.25デノミのマシンで示し、Royal Flushを引いたときの$1,000は損失から相殺して示しています。
また、「平均的な損失」だけでなく、「運が悪かったときの最大損失」も示しています。(注:厳密に表現すると、95%以上の確率でこの損失以下に抑えられるというラインです。5%のヅカンな人は、更に多くの損失を覚悟しなければならないことに注意)

【Royal Flushを引くために必要な資金量】


グラフでは、細かい部分が読み取りにくいですが、JB9/6ですと$1,500戦術、JB8/5ですと$2,000戦術が最適となります。但し,いずれのケースも$1,500戦術と$2,000戦術ではその差は僅かです。恐らくこの傾向は他のマシンでも成り立つでしょう。従って、大凡の結論として
ロイヤルフラッシュを引くまでの損失を最小に抑えたい場合は、
いわゆる最適戦術より少しロイヤルフラッシュを積極的に取りに行く$1,500-$2,000戦術程度が最適である。

ということになります。もちろんこの議論は一生に1回のロイヤルで満足出来る人にのみ当てはまるものであり、Serious Playerには関係ありません。

【逆の立場から見れば】
 今回の計算で、もう一つ驚くべきことは$0戦術を取ると、Royal Flushの出現確率がかなり低下する一方、pay out率はそれほど、低下しません。また、先に計算したように、一生の資金に対するリスクを低下させるためには、$1000戦術ではなく、$700戦術の方が有利です。さすがに$0戦術のような、あまりにロイヤルに対して保守的な戦術を取ると、pay out率の低下の効果がリスク低下の効果を上回るので、生涯リスクの点からは、損な戦術となりますが、いわゆるトリップバンクロール(trip bankroll)、即ち1滞在程度のプレー時間での資金のリスクを低減させるという観点からは、$0戦術(あるいは$100戦術程度)は有効であると思われます。実際、勝負の荒れ具合を計算してみますと

使う戦術 Variance SD( Standard Deviation) $1000戦術に
対するSDの低下率
Royalを除いたpay out率
$0 11.912 3.451 21.872% 97.934
$125 14.05 3.748 15.149% 97.946
$312.5 16.123 4.015 9.103% 97.888
$700 17.227 4.151 6.044% 97.82
$1000 19.515 4.418 0 % 97.563


となります。Varianceの意味は分からない方は、無視して結構ですが、SDという値が相対的な荒れ具合の指標になっています。このように、戦術を変えることによってpay out率をあまり損なうことなく、マシンの荒れ具合を20%程度低減させることが可能な訳です。SDの話が分かりにくければ、royalを除いたpay out率で考えてみるのも良いでしょう。この場合、計算した範囲では$125戦術がRoyalを除いたpay out率が最高になっています。(従って、もっともお薦めの戦術は表の範囲では、$125戦術ということになります)

例えば、あるtripで、資金は、底を尽きかけているけれども、ルームコンプやカジノレート達成のために、どうしてもマシンを回す必要が出てくるときには、このようにロイヤルに対して消極的な戦術を取ることによって、パンクの可能性、これ以上大負けする可能性を少しでも小さくすることが出来るという事実は、頭の片隅に入れておくと、きっと役に立つときが来るでしょう。(但し,Serious Playerは、このような状況に追い込まれないこと、即ちリスクをしっかり捉えて、十分な資金を持って行くことの方が大切です。Serious Playerの頭の中にあるのはtrip単位での収支ではなく、もっと長期間に渡っての勝負であることにも注意して下さい)

【その他に見えてくること】
このように、ロイヤルに対して、少し積極的な戦術を取る方向にadjustすることにより、pay out率を損なうことなく、Royalの出現確率を増加させることが出来るという分析は、VP tournamentの最適strategyの発見にもヒントになるかも知れません。tournament参加者の述べプレー時間(20人で15分のtournamentを行うならば5時間)のプレーで、ざっくり0.5回〜2,3回程度の出現が見込まれるジャックポット(大規模tounrmanetならRoyal Flushですが、Las Vegas HiltonのDaily tournament程度なら、4 Aces+ four 2,3,4'sくらいでしょう)に対して積極的な戦術を取ることが、上位入賞にありつく確率を最も高くするものと考えられます。
上記例では、pay out率を損なうことなくRoyal Flushの出現確率を増加させることが出来るので、大規模Tournamentでは$8,000戦術程度が恐らくバランスが取れているでしょう。一方、「pay out率を『あまり』損なうことなく、特定のquadsの出現確率を増加させる」ことの出来る戦術が開発できれば、恐らく小規模tournamentに対して、有効な戦略と考えられます。上の分析は、Royal Flushに対するものですが、Quadsに対しても同様の戦術があるものと考えられますので、VP tournament playerは自助努力で開発してみてはいかがでしょうか?。

最後にオマケとして、Liveのdraw poker(1回のみカードを任意の枚数交換可能)において、Royal Flushを常に強引に狙いに行ったとき成功する確率も、上述の通り23081回に1回ということになります。雑学として数字を覚えておくのも悪くないでしょう。


【ホームページへ戻る】