寄居の診療所

独立以前に、軽井沢で別荘の担当をしたことがあります。全くの偶然ですが、クライアントの診療所は私の生まれた町にありました。
それ以来のお付き合いで、他所にいるお嬢さんが医師としてこの診療所に戻ることになり、築40年ほどの古い診療所を残し、
新しい診療所を建築することになりました。企画から完成まで5年の歳月が流れました。

医療上の主要な希望以外に、3人になる医師の診察室からそれぞれ処置室に接続すること、高齢の医師ご夫婦の今後の医療環境を
快適にしたい。具合が悪くて来院する患者の待合室は、日当たりも良く、なるべく快適にしたいなどがありました。

それまで、住宅で何棟か設計したパッシブソーラーシステムの導入をお奨めして承認いただきました。この建物は床面積が約120坪
あり、通常なら冷暖房機の電気容量だけでもゆうに20KWの負荷を考えなければならないところですが、このシステムを採用して冷暖
房機の負荷計算をシュミレーションしたところ、畳に換算して8畳以上ある病室などでは、計算に該当する機種が存在しないので、家庭
用のもっとも小さい冷暖房機などを取り付けました。試算上際どかったので受変電設備(キュービクル)を設けましたが、使い方もあるの
か、予想を下回る電気使用量で、夏などは同規模の一般工法の診療所に比べて、月間約3000KWhの電気を節約できています。
冬の朝も、建物に入った時にほのかに暖かく、暖房を短時間効かせるだけで済み、冬も月間約3000KWh節約できています。

この建物の表現は柱の見えない大壁ですが、構造の精神は、他の実例と全く同じ木組みの骨組みで作られています。
下の写真は最近撮影したものです。お手伝いさせていただいた建物は、この建物に限らす住宅もメンテナンスのお手伝いもしています。
10年を経過して今までに行った清掃以外のメンテナンスは、日当たりのいい部分の網戸の交換、熱交換換気扇の故障、冷暖房屋外機
の故障、診察入口引き戸金物の不調、入口引き戸のドアエンジン調整くらいで、大きな故障はありません。

患者数も順調に増加し、予定した返済計画も順調と聞き、関わったものとしては喜ばしく思います。

 この写真は最近撮影したもので竣工から10年経過しています

南側遠景 南アプローチから車寄せを見る 南面
広い敷地に伸びやかに建つ平屋の診療所
省エネには、日照や通風にも配慮が必要
当地では車での送迎が多いため、雨の日も
患者が濡れずに済む屋根付の車寄せがある
夏の陽を遮り、冬の陽を取込む深い軒先
越屋根は採光・換気・排煙など多機能
明るい待合室 診察室3 中廊下
南に開いた待合、具合の悪い患者の
方が少しでも快適に過ごすための空間
建物の真中にある明るい診察室
待合と処置室と繋がる使いやすい配置
病室前の幅広いゆったりとした中廊下
越屋根のトップライトで換気と排煙も
畳待合 廊下トップライト 明るい待合室
可動式の畳待合、子供たちのお気に入り
窓は断熱サッシ+木建で熱の出入を防ぐ
越屋根に付いた中廊下上のトップライト
不織布をはさんだペアガラス
旧診療所は教会で知られる奈良先生の設計
かなり手を入れ、職員宿舎に改築した。

今日はここまで
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