読者からの質問と回答 01011 〜 01020
『はじめよう位相空間』演習問題 5 の問題 10(42ページ)について, E^2 への写像の連続性はどのような方針で考えればよいでしょうか.
演習問題 5 の問題 10(42ページ)について教えて下さい.
(1) については例題 5.13 を応用してすぐに解くことが出来ましたが,(2), (3) については見当がつきません.とくに,E^2 への写像の連続性はどのような方針で考えればよいのかご指導下さい.
お答えします:
E^n (n > 1) への写像の連続性を証明するためには,定理 5.14 を使います.
定理 5.14 より,写像 f : X --> E^n の連続性は,
射影 pr_i (i = 1, 2,・・・, n) と f との合成写像の連続性から導かれます.
射影 pr_i と f との合成写像は E^1 への写像ですから,(1) と同様に証明でき ると思います.
もしよく分からなければ,問5 (p.69) の解答例を参考にして下さい.
多くの場合,演習問題の類題を本文中の問で与えてありますので,まず(解答例を参考にしながら)問に解答してから,次に演習問題に挑戦されるとよいと思います.
J.M.さんの理解が進むことを期待しています.
『はじめよう位相空間』演習問題 12 の問題 9(181ページ):
連結性の問題のヒントを下さい.
演習問題 12 の問題 9,連結性の問題のヒントをお願い致します.
お答えします:
次の証明の(なぜか)の部分をよく考えて下さい:
証明:
背理法によって A が連結であることを示す.
もし A が連結でないと仮定する.
このとき,互いに交わらない A の空でない閉集合 E, F が存在して,A = E ∪ F と書ける.
A は X の閉集合だから,E, F は X の閉集合である(なぜか?).
A ∩ B は連結だから,E, F の一方は A ∩ B と交わらない(なぜか?)
いま E が A ∩ B と交わらないとする.
このとき,G = F ∪ B とおくと,G は X の閉集合(なぜか?).
系10.19 より,E と G は A ∪ B の閉集合.
明らかに E と G は空でなく,互いに交わらない.
また,A ∪ B = E ∪ G.
これは,A ∪ B の連結性に矛盾する.
ゆえに,A は連結である.
B が連結であることも同様に示される.
『はじめよう位相空間』演習問題 12 の問題 8(181ページ):
連結性の問題のヒントを下さい.
演習問題 12 の問題 8 について,連結性の問題のヒントをお願い致します.
ヒントです:
答えは (1), (2), (3) はすべて「成立しない」です. 簡単な反例があります.
『はじめよう位相空間』演習問題 12 の問題 7(181ページ):
連結集合の和集合に関する問題のヒントを下さい.
演習問題 12 の問題 7,連結集合の和集合に関する問題のヒントをお願い致します.
ヒントです:
まず,すべての自然数 n について,B_n = A_1 ∪ A_2 ∪ ・・・ ∪ A_n とおく.
次に,定理 12.9 と帰納法を使って,各 B_n が連結であることを示す.
最後に,連結集合の族 {B_n : n ∈ N} に前問6の結果を適用する.
『はじめよう位相空間』例題 12.22(174ページ):
E^2 - {p} はなぜ連結ですか?
例題 12.22 で,E^2 - {p} はなぜ連結でしょうか?
お答えします:
補題12.13 を使います。
E^2 - {p} の任意の2点 x, y に対し,x, y を含む連結集合 A が存在することを示せばよい.
点 p が線分 [x, y] 上にないときは,A として線分 [x, y] をとればよい.
点 p が線分 [x, y] 上にあるときは,A として線分 [x, y] を少し曲げた弧をとればよい.
『はじめよう位相空間』演習問題 11 の問題 7(162ページ):
ハウスドルフ空間の2つのコンパクト集合の共通部分がコンパクトであることの
証明は,これでよいでしょうか?
ハウスドルフ空間 X の2つのコンパクト集合 A, B の共通部分がコンパクトであることの証明は,これでよいでしょうか?
証明:
A は X の部分空間.B は X の閉集合.
したがって,A ∩ B は A の閉集合.A はコンパクト集合.
したがって,A ∩ B は X の閉集合.
したがって,A ∩ B はコンパクト.
お答えします:
大体よいと思いますが,「A ∩ B は X の閉集合」という事実は不要です.
「A がコンパクト集合」であることと「A ∩ B は A の閉集合」であることから,
「A ∩ B はコンパクト」が導かれます.
また,証明の書き方として,「問題の前提条件をどこで使ったか」および「どの定理をどこで使ったか」を明記されるとよいと思います.例えば,次のように書くとよいのではないでしょうか.
証明:
X はハウスドルフ空間で B は X のコンパクト集合だから,定理 11.12 より,B は X の閉集合.
したがって,系10.19より,A ∩ B は部分空間 A の閉集合.
A はコンパクトだから,定理 11.11 より,A ∩ B はコンパクト.
『はじめよう位相空間』演習問題 8 の問題 1(112ページ):
集合の境界を求める問題について教えて下さい.
演習問題 8 の問題 1 (3), (4),集合の境界を求める問題について教えて下さい.
お答えします:
(3):A = {1/n : n ∈ N} とするとき,
A の E^1 における境界は A ∪ {0} です.
すなわち,A に点 0 を付け加えた集合になります.
点 0 が A の境界点になる理由は,
0 の任意の ε-近傍が A と A の補集合 E^1 - A の両方と交わるからです.
(4):Q ∪ (-1, 1) の E^1 における境界は閉区間 [-1, 1] です.
理由を考えてみて下さい.
『はじめよう位相空間』演習問題 7 の問題 11 (4)(99ページ):
無理数で連続,有理数で不連続な関数の例を教えて下さい.
無理数で連続,有理数で不連続な関数の例についてですが,次のような答えでよいでしょうか.
f(x) = 0 (x ∈ Q),
f(x) = x + 1 (x ∈ R - Q)
によって定義される関数 f: R --> R.
お答えします:
H.O.さんの例では,f が連続になる点は x = -1 だけです.
これはやさしい問題ではありませんが,次のよく知られた例があります.
関数 f を次のように定義します.
無理数 x に対しては f(x) = 0.
有理数 x に対しては,x を既約分数として表したときの分母が n ならば,
f(x) = 1/n.
具体的に書くと,
無理数 x に対しては,f(x) = 0.
有理数 x に対しては,次のように定める:
f(0) = f(1) = f(2) = f(3) =・・・= 1,
f(1/2) = f(3/2) = f(5/2) =・・・= 1/2,
f(1/3) = f(2/3) = f(4/3) =・・・= 1/3,
f(1/4) = f(3/4) = f(5/4) =・・・= 1/4,
以下同様.
このとき,f は無理数では連続,有理数では不連続になります.
その理由を考えてみて下さい.
区分的に連続な関数の具体的な例を教えて下さい.
リーマン積分可能な関数の例として,区分的連続な関数という話があったのですが, 区分的に連続な関数の具体的なやさしい例を教えて下さい.
お答えします:
最も典型的な例は,定義域が区間で,有限個の点を除いて連続な関数です.
例えは,定義域が閉区間 [0, 3] の場合,
f(x) = x (0 ≦ x < 1),
f(x) = 2 (1 ≦ x < 2),
f(x) = -x (2 ≦ x ≦3)
によって定義される関数 f は,2点 x = 1, x = 2 を除いて連続.
ゆえに区分的に連続です.
連続性と「グラフがつながっている」のイメージの一致は,定義域が R であることによるのでしょうか?
関数の連続性と「グラフがつながっている」こととのイメージの一致は, あくまで「定義域が実数空間 R である」ことによるもので,演習問題 4,問題 13 のように定義域が途切れていれば,連続性と「グラフがつながっている」というイメージは一致しないと考えてよいでしょうか?
お答えします:
よいと思います.
関数 f が連続であっても,f の定義域が途切れている場合は f のグラフも途切れてしまいます.
ただし,定義域が R の場合に「連続 = グラフがつながっている」というイメージを持ってよいかと言うと,それには少し注意が必要です.
この主張が意味を持つためには,「つながっている(=連結)」という状態を数学的に定義する必要があるからです.
その定義は第 12 章で与えられます.
第 12 章,問 8 とその解答で注意しておきましたが,定義域が R の場合,
関数 f が連続ならば「f のグラフは連結」は成立しますが,その逆は成立するとは限りません.
補註.
定義域が R である実数値関数 f について,次の (1) と (2) が同値であることが知られています.
(1) f は連続である.
(2) f のグラフ G(f) は連結かつ R^2 - G(f) は非連結である.
参考文献:
M. R. Wojcik and M. S. Wojcik, Characterization of continuity for real-valued functions in terms of connectedness, Houston J. Math. 33 (2007), 1027--1031.
2017/3/8 追記