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平成16年8月19日  駒大苫小牧 vs 横浜

   
勝てばベスト4          横浜名将渡辺監督        超高校級 涌井投手       駒大苫小牧のベンチ

見慣れてきた香田スタイル

駒沢エース岩田君(走者)

イケメン 佐々木孝介君

ピンチで結束、駒沢ナイン

セカンド林君 この後全国区に!

サイクル安打達成の林君

鬼の形相 気合の塊 鈴木投手
本日は、平成16年8月19日。


甲子園で、駒大苫小牧と横浜の一戦を観戦した。
最初に言っておきますが、今日は長くなります!

横浜高校は、この試合の前では前評判の高い 「明徳義塾」 を撃破。
序盤の劣勢を跳ね返し、見事ベスト4。優勝も見えてきた。絶対的エース涌井君が主戦。
彼は、MAX148キロの豪腕で、カットボール、シュート(シンカー)や色々な球を操る。
今大会は、ダルビッシュ君が前面に出ていて、涌井君の報道は控えられているが、彼のビデオを見て
今大会NO1投手と思った。速い球があるのに、それに頼らずバランス良く配球してくる。
1番の難題は、 「カットボール」 である。
この球は、135キロ前後の球速に落ち着くが、打つ側にとって見たら非常に難解な球。
140後半に意識をおいていたら、この球は凡打を誘発する。攻略的にも難易度が高い。
捕手は、1年生捕手の打撃の良い福田君。そして3年生の村田君。
駒沢としては、変化球を比較的多く使う村田君が良かった。
前日は、福田君が先発だったが、この日は村田君。駒沢に風が吹く。まだ微風だ・・・。

一方、駒沢は今大会優勝候補の、日大三高を接戦で破りベスト4となる。
日大戦は、別の観戦記で紹介しているが、非常に力のあるチーム。
そのチームを撃破して、駒沢は乗りに乗っている。
前回、不本意な投球内容だったエース岩田君の試合前の意気込みは相当なもの。

今秋ドラフト上位で消えるであろう、横浜涌井投手をどうやって打ち崩すかが駒沢のカギ。
またデフェンス面では、強力打線をいかにして最少失点に抑えるか・・・。
実は、試合前に駒大苫小牧が勝つなら、「1−0」、もしくは「2−1」を予測していた。
乱打線は避けなければいけない。
涌井君をよく観察するとある一定の傾向が見えてくる。
駒沢にとっては、数点が望める。しかし、カットボールなどがある。
140後半に対してガチンコ勝負は難しい。
そこで、様々な 「工夫」 を施し、試合前には何点かは取れる状況を作れた。
バッテリーも最少失点に抑えるためには、正面からぶつかっては危険。
相手を知ることが、試合前の最大のポイントとなる。
打線にも特徴があり、日大三高と比べると駒沢としてはやりやすい。
見方失策を「0」と仮定すると、完封・もしくは1失点で切り抜けれる計算が立つ。
しかし、野球は計算どおりにはいかない。だから楽しい。
でも、ある一定のシュミレーションが事前に出来るのであれば、
選手も指揮官も安心する。

このような事前準備は、本番で自分達の不安要素をなくし、最高のパフォーマンスを引き出す
役割をする。昔の中国の兵法家の 
孫子 は言った。

「故に曰く、彼を知り己を知れば、百戦して危うからず。彼を知らずして己を知れば、一たびは勝ち
一たびは負ける。彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に負ける」

という有名な言葉がある。
自分を知り、相手を知れば必ずや勝利出来るということです。
エントモが現役時代に、この孫子の言葉が耳に残り、実践していた!

試合に入ろう。
初回駒沢の攻撃、2番沢井君が涌井君のSRを三遊間にヒットする。エントモにんまり。
その後、2死満塁まで涌井君を追い詰めるも、得点出来ず。
しかし、得点出来ずとも大きな攻撃となる。
初回からエースを追い込んだ。焦らせた。この意味は大きい。
1回裏、横浜の攻撃、一番好打者佐藤君が8H。送られて四球も絡み、1死2・3塁。
ここで4番の橋本君。橋本君は、明徳戦の1打席目に鮮やかな本塁打を放っている。
この横浜打線でも、注意する打者の筆頭である。
その橋本君をフルカウントから三振。この三振はとてつもなく大きな意味がある。
準備していたプランに間違いがないと、糸屋捕手は感じ取れたであろう。
そしてこのひとつの三振が、糸屋捕手のリードに大きく影響していく。
ここでは特記しないが、ビデオに納めている方は、この勝負を見直してみると予測がつくだろう。

2回表、駒沢は先頭の2年生林君が、甘いストレートを右中間の深い所にソロホームラン!
駒沢に風が吹く。
打った瞬間、前日の練習が頭に浮かんだ。前日の練習で、林君の振りは鈍かった。
そこで香田監督は、彼にフリーバッティング後にスイングをさせる。
そのスイングは、非常に疲れるスイングではあるが、下半身のキレを取り戻してくれる。
エントモも、グランド訪問した時にたまに実践したりする技だ。
「2年生はこういった連戦で体力的に崩すことが多い・・・」
などの意図から、逆療法のきつい動作をさせた。
通常は、大会期間中なので、調子の維持に重きをおき、意外にこういったことを敬遠する方は多い。
その効果が早くも出た。それも最高の形で!

3回表、駒沢は2死から横浜の失策で2死2塁のチャンス。
相手バッテリーは乗ってる林君に単調な攻め。三遊間を割るタイムリーヒット、2−0。
もう、止められない。こんなに早く得点出来るとは思っていなかった。
終盤、連投で疲れた涌井君に対し、粘って得点ゲットをイメージしていたので嬉しい誤算。
3回裏、先頭9番の久米君が7に2H(二塁打)。1番佐藤君にバント。
打順の巡り合わせ。じつは、4番の橋本君と同等に、1番の佐藤君が嫌だった。
その打者にバント。相手は攻めているようで、波に乗れない。
1死3塁で、本日2番に打順が上がってきた玉城君。右にも打てるやらしい選手。
スクイズを警戒し1球外して、次球もまた外した。三振ゲッツー。
糸屋君に確認したところ、「走者が動いたのを確認し外した」 とのこと・・・。圧巻。
日大三高戦のスクイズは外しも同様で、見てから外したとのこと。
捕手もすごいが、投手もすごい。とっさの判断があの甲子園でしてしまう。怪物君達です。

4回裏、横浜は3番石川君がヒットで出塁し、警戒していた4番にバント。なんかついている。
その後、バッテリーに最初のミス。
初球、3盗許す。完全なノーマーク。動いた瞬間に走られていた。
横浜サイドの研究が、この時ある程度予測出来た・・・。横浜おそるべし。
1死3塁で、5番赤堀君はセカンドライナー。今日はポイントで林君に打球が集まる。

5回表、駒沢は桑島君が内野安打で出塁。初球スライダーを振っての安打。
前の回のピンチを凌いでの流れを変える初球攻撃。もはや野球の質が、高校レベルを超えている。
その後4番原田君がバント。
しかし、糸屋君のPゴロで桑島君は飛び出し刺殺。2死1塁。
普通のチームなら雰囲気的にも得点できる確率は低いだろう。
しかし、イケメン主将の佐々木孝介君が、涌井君から7オーバーのタイムリー、3−0。
佐々木君は、北海道の地区予選ではどん底状態。
タイミングが合わず悩みに悩んでいる状態であった。
しかし、声をかけるチャンスがあったので、どうすべきかを伝えられた。
今は湖の底で眠っているが、甲子園ではよみがえると思っていた。
彼には技術的なことはハイレベルなので、あとはバットを振りぬく勇気だけが必要だった。
1・2戦のスクイズ失敗で、逆に彼の思いきりがよみがえる。
きっかけってそんなもんである。
その後、涌井君は、この日ST2発でやられている林君を迎える。
STでヒット2発。この打席はSRで勝負してきた。
いとも簡単にライトライン際に3塁打タイムリー、4−0。
こじゃれた打者なら、当然違う配球をしてくる。過去2打席の原因が分かっていない。
甘いSTを打たれたのであって、ベストの球を打たれたのではない。
しかし、バッテリーにはその打たれた球だけの印象が残り、蟻地獄に入り込む。
中盤、糸屋捕手の動きを凝視していたが完璧。
今日は、じつは糸屋君がカギだった。
詳しくは述べないが、捕手的目線で見ると分かる人もいるだろう。
ちょっとレベル高い駆け引きです・・・。

6回裏、流れは横浜に傾きかける。
涌井投手は三振2発でよみがえる。その直後の2死1塁から、5番赤堀君。
カウントを2−3にしてしまった。バッテリーのミスである。
2死なので、走者はスタートを切る。そこで左中間を抜かれた。4−1。1点返す。

7回表、流れが行きかけたのを、またもや3番桑島君が引き戻す。初球内野安打。
初球から積極的にいくことによって、流れは戻ってくる。抜群のセンスだ!
こうなると、勝利の女神は、駒沢ベンチにどっかり座っているようにも思える。
犠牲バント失敗しても、他の選手がカバーする。また林君に回りタイムリー。
サイクル達成!史上数人しかいない。それを
北海道余市出身の2年生がやってのけた!
7回裏、得点した後の先頭打者を、エース岩田君は三振で料理。
今日の岩田君は腕が振れている。後半、この試合で指の豆がつぶれるアクシデント。

8回表、横浜マウンドにはエース涌井君がいない。交代である。
駒沢は、大会屈指の豪腕をノックアウト。涌井君から5点取るとは予測出来なかった。
終盤、豆のつぶれた岩田君に代わり、大魔人鈴木君。本日の141キロを計測。
結局、横浜は6−1で敗戦。

結果を見ると、横浜相手に8安打1失点。ほぼ予定どおり。
岩田君・鈴木君の両投手の踏ん張り、そして糸屋君の配球・・・。
たぶん、この試合を見た人は、はまったな駒沢と思ったに違いない。
しかし、こうなることは予測出来た。まぐれじゃない。
その根拠はある。しっかり持っていた。だから言い切れる。

野球は奥深い。
そのレベルまで到達したら、楽しさ倍増!
この試合の勝ち方で、駒沢がする 「指1本」 を意識した。
次戦は、そういった 
「おごり」 「油断」 が最大の敵となる。

最後に、横浜涌井君。
得点はしたが、君はやはり超高校級。日本のプロを代表する投手になるだろう。
プロに入っても思い出して欲しい。この日の悔しさを。
そしてそれをバネに、NO1投手に成長して欲しい!!