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平成16年8月22日  駒大苫小牧 vs 済美 (甲子園大会決勝戦)

本日は、平成16年8月22日。

とうとうここまで来てしまった。今年の高校野球の全国「NO1」を決める試合。
ここまで来たら、両チーム勝たせてあげたい心境。
何気に済美の1回戦の秋田商業戦を観戦したが、まさか最後のカードが 駒大苫小牧 VS 済美 になるとは・・・。
済美というチームの印象は、エース2年生の福井君や4番怪物君の鵜久森君らがいるが、上甲監督。
上甲監督が特に印象に残る。
予測でしかないが、伝統のある女子高が3年前に男女共学に。
たった3年弱で、春の大会で全国一。そして、今夏甲子園大会で決勝進出。
非常に興味のあるチームである。
ある関係者から話を聞いたが、練習は相当キツイらしい。
しかし、キツイだけでここまで強くなれるだろうか?そうは思わない。
厳しい練習をするチームは、全国でたくさんあるだろう。
上甲監督の甲子園での振舞いをみると、その強さが見え隠れする。

一方、念願の決勝進出の駒大苫小牧。快進撃が、一種の社会現象にさえなっている。
北海道では、野球に興味のない人達でもこの甲子園大会の話をする。すごい力だ。
彼らは、昨年まで甲子園で過去3回出場しているが勝利はしていない。
もう有名な話になっているが、昨年の夏、彼らは4回まで8−0の大差で試合を進めていたが、
無念の雨天コールド。そして翌日の惜敗。
悔しさから人間は学ぶ。駒沢を見て本当にそう思った。
香田監督は、九州出身で北海道に赴任して10年。監督キャリア10年で日本一に輝くのは素晴らしい。
毎年、夏が過ぎるとドラフトの記事が各紙に登場する。
香田監督は、「うちの選手、こういったリストに上がらないですよね。いい選手いるんですけど・・」。
そういった集団を、チームとして機能させる手腕はさすが。
しかし、個々をみても上で十分通用する技術の持ち主も今年はたくさんいる。

どの大会でも決勝になると「疲労」が各チーム大きな課題となる。
済美は、福井君が全試合登板していた。前日の試合を見たが、相当疲労が溜まっている様子。
駒沢が抑えこまれる可能性は低かった。
駒沢は、岩田投手を中心に鈴木君や、前の試合剛球を披露している松橋君の3人でここまで来ている。
しかし、不安要素はあった。本日先発する岩田君は、指の豆がつぶれひどい状況。
鈴木君は、肘に不安を大会前から抱えていて、無理できない状況。松橋君も本調子ではない。
不安要素は互角。本日も乱打戦必至。
あとは、どちらが一番になる気持ちが強いか。執念だ。

済美打線では、1番甘井君、2番小松君、4番鵜久森君、9番福井君がカギ。
初回、その先頭甘井君にインコースを攻めきれずに9H。早くもプランが揺らぐ。
その後、バントされ2進後に、岩田君はスライダーを引っ掛けてワイルドピッチ。
指の影響で、最後の「ひとかき」が出来ない。状況を分かっているだけに胸が痛む。
1死1・3塁で迎えた4番鵜久森君にインコースに投げきって、結果三振。
しかし、その後の5番西田君に外のスクリューを右中間に運ばれる。0−2済美先制。
1回裏、駒沢の攻撃、先頭の桑原君がDBで出塁。このDBの意味は大きい。
そして3番サイクル男、林君が入ってくるSRを簡単に右中間に三塁打。1−2。
乱打戦の幕開け!

2回表、岩田君は先頭を四球。思ったところに投げれていない。
ヒット、四球などで1死満塁。小松君の犠牲フライで1−3。次打者に四球。
ここで香田監督は無念の早めのスイッチ、中盤まで引っ張りたかった思惑が崩れる。
守護神鈴木君の登場。駒沢としては大きな誤算。
その後、鈴木君は2死満塁で4番鵜久森君。押し出しの四球。
考え方は様々だろうが、結果的に鵜久森君と勝負しないで良かったと個人的に思う。
じつは、こういった想定は、済美以外でもしていた。
ポイントとなる打者と勝負するより、傷を広げないような選択もする。
糸屋捕手は、勝負に行っての四球ではあるが、エントモの言ったことが後で理解出来ると思う。
こういった考え方は、トーナメントで短期間、そして相手から得点できる要素がないといけない。
続く西田君には死球で押し出し。1−5。よく3点で収まった。鵜久森君との勝負が大きかった。

3回裏、駒沢の反撃。
先頭2番の沢井君が7H。その後、迷わずサイクルの林君に送りバント。
2死から糸屋君が右中間に3塁打、佐々木孝介君の連続タイムリーで3−5。

4回裏、2年生の五十嵐君が初球STを右中間に三塁打。続く桑原君も初球打ち。
そして沢井君も1死3塁から初球甘いSRを2塁打。4−5。
ここまで初球を打たれたら、福井君も投げづらそう・・・。
その後連続四死球で、2死満塁、主将の佐々木君が8Hタイムリー逆転!6−5。

5回表、済美の反撃。内野安打を足がかりに、2死2塁から9番福井君がライトに2塁打。6−6。
済美打線は、9・1・2番にポイントとなる打者がいるので、1塁が空いていても勝負しなければ・・・。
続く、甘井君は7H!しかし、駒沢レフトの原田君 ⇒ ショート佐々木君 ⇒ 捕手糸屋君の中継で刺殺。

6回表、後攻のチームは中断後の開始で、またもや嫌な予感。
先頭の2番好打者小松君にホームラン!7−6。その後、鵜久森君らに連打が飛び出し、6−9。
この回辺りをじっくり見ると、駒沢バッテリーは「抑えるための工夫」が見られなくなった。
いっぱいいっぱいの状況。そうであろう、疲労感や満員の観衆、そして精神的にもきつい展開。
昨日のロングリリーフで疲れきっている鈴木君も肩で息をしている。踏ん張りどころ。
こうなると、もうノーガードの打ち合い。
6回裏、駒沢は先頭の原田君が四球。
ここで、原田君を誉めたい。彼は北海道予選で大活躍。駒沢を甲子園に導いた。
周囲の人は、甲子園の活躍が物足りないと思っている人もいるだろうが、彼の打席を分析すると、
相手チームはしっかり分析し、まともに来ない配球。
ボール球に手を出さないで、四球をもらい次打者に託す姿は、エントモには印象深くうつった!
その四球後、糸屋君がレフトに2ランホームラン。4番がつなぎ5番が決める。8−9。
続く佐々木君は、1−3のカウントから積極的に打っていく。ファールとするが、その後四球を選ぶ。
済美の福井君も疲れきっている。制球をみると待ちたいところだが、打っていく。
この1−3からのヒッティングが、勝負の分かれ道とみた。
2死2塁で9番五十嵐君、ファールで粘る。こういったシーンは北海道でも良く見られた。
スイング軌道がいいからファールになる。ドアスイングならゴロ凡打になるところ。
今大会の駒沢打線は、技術的根拠がしっかりしていた。
そうでなくては、大会屈指の横浜涌井君、日大三高の浅香投手は打ち崩せない。
五十嵐君は粘った12球目をレフトにタイムリー、9−9同点。

7回裏、駒沢は突き放す。昨日ミーティングで駒沢に話した甲府戦「9回の林君のプレー」。
平凡なゴロを待って捕ってのエラー。前日、駒沢ナインは心に刻んだ出来事。
先頭の林君は、セカンドに平凡なゴロ。済美守備陣は「待って捕って」失策した。
これが明暗。
その後、2死2塁で佐々木君に2塁打、勝ち越し10−9。
ここで1塁は空いているが、済美バッテリーは桑島君と勝負。
駒沢を良く研究していれば、まともには勝負出来ない場面。
桑島君に左中間を破られる。11−9。続く、鈴木君もエンドランタイムリー12−9。
2死からの連続タイムリー。
バッテリー陣は、「早くベンチに帰りたい・・・」の気持ちが手に取るように分かる。
でも、そういった気持ちが指先を狂わせる。

8回表、済美も死んでいない。鵜久森君にレフトにヒットされる。
この時、鵜久森君に対して行なうべきことを糸屋捕手は怠っていた。残念。防げたヒットだ。
しかし、両チームもはや極限状態。そこまで気がまわらないであろう。当然か。
その後、無死満塁の絶好のチャンス!
7番田坂君に犠飛、12−10。
その後セカンド牽制で、鈴木君が悪送球をしたが、センター桑原君がサードで刺殺。
何気ないプレーだが、事前にサインで牽制を外野に伝えているからこそ出来る、桑原君の詰め。
そういった細かいところが、この最終戦でもきっちり出来ている。素晴らしい。
ここで桑原君について少々。
彼は、俊足強肩。そして左打者でしぶとい打撃。一番最初に駒沢の練習を見たときに気になった選手。
打席の中で、スイングした後にセフティをしたり、考えて野球出来るタイプ。
今、エントモがどこかの社会人野球で選手を採用出来る立場としたら、必ず彼に声をかける。そんな選手。
たぶん、どこかの社会人スカウト関係者は、そんな彼のセンスに目を止めている方もいることだろう・・・。
8回裏、1死1塁で4番の原田君にバント。
彼は決勝戦、記録は1打数0安打。四死球×2、犠牲バント×2の内容。脇役に徹した彼に拍手!
そして、またもや糸屋君がタイムリー。13−10。
糸屋君には、数日前の練習で、「何打ってもヒットになる感覚あるだろ?」との質問に、
「そうでもないですけど・・・。でもそんな気がします!」と生き生きした顔で答えてくれた。
エントモも現役時代、そういった経験がある。
積極的に行っていて、尚且つ相手が「初球注意しなければ・・・」の考えが、また制球を甘くしてくれる。
球もしっかり見えていて体も切れている。そんな状況だ。

最終回、済美の攻撃。選手を送り出す上甲監督の顔が焼きつく。
「おい、子供達ここまで良くやった。何も考えずバット振って来い!」
そんな声が聞こえてきそうだった。選手を送り出す顔はおやじの顔だった。
先頭、エース福井君が一矢を報いる。2塁打。その後、甘井君がヒットで出塁。無死1・3塁。
ここで、小松君はショートダブルプレー。絶体絶命。
じつは、この回始まる前に、何人出塁したら怪物鵜久森君に回るか計算していた。
途中出場の坂本君に対し、駒沢バッテリーは決めにいく。一番危ない攻め方。
そして結果四球。1死1・3塁。鵜久森君に回る!ここで一発出れば同点のケース。
バッテリーは、真中高めのSTを投げ込み、ショートフライで打ち取りゲームセット。
結果は駒沢の良い方向に出たが、その前の四球はいただけない。
紙一重の展開だっただけに、大きな課題として残る。
四球にしてしまった大きな原因は、バッテリーの「こころの中」。彼らは分かっているはず。

やってしまった。やりとげた。
北海道で感じた、「駒沢はどこのチームが倒すのだろう?」
結局、負ける事はなく終えた・・・。
駒沢は、昨年の敗戦よりこの瞬間を夢見てキツイ練習に耐えてきた。
指導するもの、それを受けとめるもの両方が報われた瞬間。
そして、優勝旗が北海道に初めて渡る。
こんな試合、過去にあっただろうか?息をもつかせない展開。
歴史的快挙に立ち会えたこと、少しでも関わりが持てたことに感謝。
北海道には、日本ハムが来た。そしてその年に北海道のチームが優勝。
野球を通して、北海道に元気を注入!

野球に絶対はない。しかし、その絶対に近づけることは出来る。
そして、技術以外の部分の大切さを感じさせた大会。
この大会は一生忘れることはないだろう。

野球に感謝!



最後にワンカット。この写真は、駒沢ファーストの桑島君。
彼のやんちゃなところがエントモはお気に入り!
撮影者、イケメン主将の佐々木孝介君!
(済美戦前夜撮影)