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平成18年3月30日 早稲田実業高校  vs 関西高校
        
本日は、平成18年3月30日。

昨日の延長15回引き分けから一夜明けた第四試合。再試合が行われた。
昨日の夜は、両チームの選手は何を考え床についたのだろう・・・。
短時間での反省&確認作業をしたはずだ。そして精神論だけじゃなく戦略も伝える。
選手に対し
「明確」にするべきことするということが非常に短期決戦では必要だ。

今日の先発は、早実は今大会初登板の右腕塚田投手。大柄な投手である。
ストレートは130中盤くらい、がちょん投げのチェンジアップを投げる。
腕が長く、長身から繰り下ろす球は角度があり打ちづらそう。
しかし、細かいセットポジションなどに関しては、今後大きな課題になるだろう。
塚田投手のデータは、関西には入ってないような気がする。
試合中に、狙い球を決め全員で攻略することが関西の鍵。

関西の先発は、背番号11の右腕中村投手。130前半のストレートと変化球を投げる。
昨日の先発についで連投になる。こ気味よい投球はなかなかのもの。

早実は2回まで無失点の塚田投手をノーヒット2四球で降板させる。
思い切った継投策。確かにクイックができなくフリーパスで盗塁されていた。
ここで昨日231球投げた斉藤投手に交代。
もう一枚挟みたかったところ。トーナメントを考えると失点してから交代でも良かった、
ように感じる。相手投手はダースじゃなかったし、点数はある程度見込める投手。
様々なことを勘案して、大会で優勝を狙うなら今日を意識しつつ大局をみなければNG。

3回から斉藤投手に代わったが、関西は工夫が見られない。
斉藤君は遅い球をうまく使うことが予測される。狙い球を絞らずに打つのは危険だ。
相手が嫌がる戦法をとり続けられるかが関西のするべきこと。

3回早実は、2死からの1・2番の連打で先制。あっさり先取点。
5回早実は、代わった斉藤投手が打席に入り、2死から鉢巻スライダーを本塁打。
真ん中高めのスライダーをバットを立てて振り抜きポールぎりぎりにライナー。
関西の中村投手にしてみれば「事故」。2−0で早実リード。

終盤までピンチは迎えるものの斉藤投手は切り抜ける。
ダース投手は、ブルペン付近でキャッチボールをしていたが、投げた後に肩を
グルグル回して眉間にシワを寄せる。強いハリと痛みがあるようだ。
早実の斉藤投手も疲れはあるものの、表情には出さずに淡々と投げている。
この違いなんだろう。両投手とも気持ちは十分にあるはずだ。

「無駄のない投げ方」

なのかどうかが、
「疲労」を考えると大きい。ダース投手のほうが負担はかかっている。

7回関西は、2死からサード失策で出塁。
先頭の熊代君の初球。思いっきりヤマ勘で振り切った感じでレフトフェンス直撃
インコースを多投するのは良いが、場面や考え方を整理して投げないと危ない。
斉藤投手にとっては不幸中の幸いだった。女神は早実に微笑んでいる。

8回早実の攻撃、2死から1塁走者に川西君。
走ってよい場面。どこで走るか観察。0−2で変化球読みで走って良かった。
結果スライダーで、今までの中村投手の組み立てを考えれば読めた変化球。
この場合、打者は「走り待ち」のことが多い。だから
早く走者は動くべきだ。
結果1−3で走ったが、打者は結果を残すことができなかった。

その8回の裏、関西は大きなチャンスを掴む。
先頭の三番上田君が、セフティバント&相手失策で無死2塁。
絶対的4番の安井君にバントを命じる。打つ構えから初球バント失敗。
1球目は意外性で、打つ構えからでよいが、2球目は最初からバントの構えでよい。
しかし、またもや打つ構えからバント。空振り。追い込まれて打たせる。
ボテボテのショートゴロ。なんと、2塁ランナーは三塁へ。結局セーフ。
自分の前の打球はストップのセオリーがあるが、そこを押し切って走った。
ギャンブル的な走塁。しかし「吉」とでた。紙一重・・・。
その後、1死3塁で5番左の下田君。バッテリーは当然スクイズを警戒する。
ここまで、斉藤君はバントの時に低めの変化球で空振りを誘っていた。
この場面で関西監督は、スクイズの気配は全く無かった。
打者は、「信頼されている」との一心で振り抜く。
渾身のスイングは、芯を捕らえバックスクリーンへ飛び込む。2ラン本塁打。
ここで逆転か!!!すごい試合だ!

9回早実の攻撃、1死から4番後藤君がつなぐ。
5番船橋君が、ライトに痛烈なヒット。ここで・・・・・・・
なんとライトの熊代君がトンネル。ライトフェンスまで転々と転がる。
打者走者までホームに帰還。なんと無情な試合、プレーだろうか。
天国から地獄とはこういったことか。

逆転につぐ逆転。ライトの熊代君はその直後泣き崩れている。試合中だ。
ベンチでダース投手も熊代君に声をかける。
ダース投手自身、夏の大会で先輩から引き継いだ試合を壊している。
大逆転を許して号泣していた投手だ。仲間の気持ちが分かるのだろう。
誰も失敗しようとしてプレーはしていない。

9回裏、関西は1死から反撃に移る。
諦めない姿勢は感動を覚える。
1死1塁で失敗した熊代君が打席に入る。バントと思われた場面だったが、
監督は強攻策。結果、捕飛だった。彼の心中を考えると打たせてやりたかった。
しかしこれが勝負。勝負の世界は冷酷だ。
しかし、ここから面白い展開になる。二番の徳岡君はナイス選球眼で四球。
三番上田君は、2−0から神がかりな粘りで内野安打。

ここでチームの支柱である4番安井君に回る。一打サヨナラの場面。
一番祈っていたのは、ベンチにいる失敗した熊代君だったに違いない。

初球  外ストレート(ボール)
2球目 カーブ(ボール)
3球目 スライダー(ボールに手を出しスイングでストライク)
4球目 
内ストレート(捕飛 ⇒ ゲームセット)

昨日の終盤、同じ場面があった。同じ満塁で安井君が走者一掃のタイムリー。
今日も同じような場面が最終回に回ってきた。これも何かの運命。
斉藤君は、3球目までは同じようなパターン。ここで最後にインコースをついた。
本日の斉藤君の投球は「攻め」「インコース」が課題だったような気がする。
逆に打つ立場になれば、読めた配球。狙われてもおかしくない配球。
面白い駆け引きを見た。「自分なら・・・」の感覚でみていた。面白かった。
ピンチの斉藤君のマウンドさばきを見ると冷静だった。
牽制する余裕。
打者が気負っている時に、牽制。空気が読めている投手だ。

試合、終了後、雪がぱらついた。無情の雪である。
関西の熊代君は、夏まで色々な意味で大変だろう。
しかし、人間、失敗から大きく飛躍するものである。
全国民が見ていた場で失敗ができたことは「財産」だ!
今後を周囲の大人はカバーして欲しい。
終了後、関西のナインは熊代君に対し皆で言い寄った。素晴らしい光景。

「仲間」「チームワーク」「絆」

を感じた試合。たかが野球であるが、こういったことを勉強している野球。
野球という競技の素晴らしさを再認識できた試合でもあった。感謝。

北海道の夏を考えれば大いに参考になる試合だったことを書き添えておこう。