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平成18年07月3日  札幌第一高校 vs 札幌南高校
        
夏の甲子園、北海道予選の地区大会も北海道は中盤までやってきた。
高校三年生にとっては最後の大会となる。
三年生は、今までの集大成、二年生は、三年生と一緒にやるのは今回が最後。

二年生としては、「失敗できない」
「三年生に申し訳ない」という考え方
では、結果は残せないし、消極的考え方だ。仮に失敗して後悔しているようじゃ未来はない。
気持ちの動きが、大きく結果を左右する野球。ここのコントロールが勝敗の大きな鍵。
どの高校も、最後は気持ちだ!って「気合」「気持ち」「強気」とか具体的じゃない。
技術練習でメンタルが強くなると思い、その方向性でやってきたチームが、最後に「心」。
難しいね。普段やっていないことを、大切な試合でやろうとする。これじゃうまくいかない。
通常メンタルと、野球のメンタル、両方を理解し、練習試合の時から試行錯誤して習慣になって
いるチームは、どんな大会でも同じような結果を残せる。

さ、前置きはこの位にして・・・

今日は、札幌地区予選決勝の一戦。
ここまでくると、力は均衡し、どちらが勝ってもおかしくないチーム同士。
札幌第一高校と、札幌南高校の戦い。札幌南は、札幌で一番の進学校。
その進学校が、近年私立高校を脅かし、数年前には甲子園まで進出している。
徹底した考える野球と、合理的練習や野球を追求しているに違いない。
札幌第一も、今年のチームは機動力を絡めたなかなかの内容の試合運び。
両チーム、エントモ野球講演の参加校。野球を多角的に見ているチームだ。

第一の先攻で試合開始。
いきなり、好打者大和田君がレフトに二塁打を放つ。
2番打者の細田君がバント。この時、南先発の左腕矢田君が一塁に大暴投。いきなり失点。
バントの時の動きが、悪かった。いきなり打たれた二塁打から気持ちの切り替えが、「?」。
その細田君がディレードスチールを成功!かなり積極的に動いてきている第一。
これは初回から、第一が一気にいくかな・・・という展開。
しかし、矢田投手が、素晴らしいタイミングでセカンドに牽制。タッチアウト。
自分で広げたピンチを、自分で刈り取る。

初回の裏、南は、先頭の伊藤君がレフトに二塁打。早くも反撃開始。
ここで2番打者は、手堅く送るかと思いきや、右方向にバスター。進塁させた。
その後、第一先発の二年生阿部投手は、死球・四球で1死満塁にしてしまう。ピンチだ。
5番吉本君が、カウント1−3まで持っていった。
ここで、打者が考えるのは、

・ ストライクを打つのか?
・ 一球見送るのか?


まずは、自分のすることを明確にすること。
この場面、ストライクを打つということがベストの選択。
動かないで見送って、2−3にしてから打つのは消極的だ。相手が崩れるのを待つのは下策。
2−3にして結果的に自分が追い込まれて、ボールをふるパターンが多い。
自分に余裕がある(精神的有利のとき)に積極的に攻めることで活路は見い出せる。
よって、この場面では「GO」

でも、ここで・・・
条件をつけなければいけない。
球種の絞りである。何が来るか、相手投手を把握していればある程度出来る。
ストライクを取る球種は何なのか?その球種に100%絞るというのがひとつ。
後は、何をしたいのかによって、打つ高さ、打つコースが決まる。
監督がよく「絞っていけ・甘いのだけいけ」これじゃ、言葉足らず、明確じゃない。
吉本君が右打者なので、外野犠牲フライを考えるのならば、右方向への飛球がベスト。
レフトへの飛球なら、1点は入るが、2死1・2塁になる。
出来るならば、右方向の飛球で2塁走者も進塁させたい。2死1・3塁で1点がベスト。
すると、二死から、ワイルドピッチできないというバッテリーの考え方も出てくるし、
(低めに投げにくい状況で甘い球がきやすい)
1・3塁で動いて、野手の失策狙いも出来る。ようは、バリエーションが増えるのだ。

打者が個人的に打席内で考えるのは、

・ 右方向にフライがベスト
・ 真ん中から外めの少々高いストレートを打つ。
・ ボールの下にバットを入れる。
・ 開かないように(引っ掛けないように)打つポイントを意識して顔を残す。


こんな感じかな。
結果は、4−6−3のダブルプレーに終わった。
ここで打った内容を見て、独自に心の中を予測すると、上記内容じゃなかったに違いない。
なぜならば、ストレートに差し込まれた。開いて右方向に飛んだからだ。
通常右に意識があり、呼び込むポイントで差し込まれたら、一塁方向にファールがいく。
だから、心の中は、上記内容じゃなかったことが予測される。残念だ。

このダブルプレーが、結果的に試合を決めてしまった。
力上位の第一に、南が奇襲をしかけ、自分有利に進め、第一の焦りを誘う展開が崩れる。

2回第一は、先頭の川村捕手がライトにライナーで本塁打。インハイの球だった。
川村君は、違う大会の試合でも見ているが、体は小さいけど高めの打ち方がうまい。
NTTに、(電電時代)若松さん(元ヤクルト監督)、日比野さん(元NTT監督)が
実践していた打ち方。高めの球を、叩いて飛ばす打ち方だ。
体のサイズじゃなく、力・腕力じゃなく、この高めの打ち方ができれば飛んでいく。
高校生で、この高めの打ち方を出来る選手を初めて見た。玄人好みする選手だ。

2−0と第一は優位に試合を進める。
二回以降、先発の阿部投手は立ち直る気配。低めに制球し、ゴロを重ねる。
ストレートは130でないが、変化球をうまく使っている。
カウント有利な時に、フォークかチェンジアップみたいな球もあった。

今日の観戦は、隣にリレハンメルオリンピック銅メダリストの堀井学氏と見ていた。
スケート現役時代に、メンタルトレーニング・イメージトレーニングを取り入れていた人。
心の動きを中心に、面白い角度で観戦していた。勉強になる。

3回第一は、ビックイニングにする。
バントの時に矢田投手が失策・ボークなど重ねる。菊池監督はセフティスクイズを敢行。
選手も采配にこたえて、得点を重ねる。この回、一挙4点。6−0とリードを広げる。
タイムリーヒットもあったのだが、南の野手陣は球際に弱かった。
もう半歩踏み込めば、しっかりグラブに収まる打球。
技術的にいえば、1歩目に問題がある。1歩目の反応こそが守備の試金石だ。

南がしたいことを、第一がすべてやっているといった展開。苦しい南。
例えば、2死1・3塁から牽制に挟まれて、その間に生還とか、セフティスクイズ、
エンドラン・・・積極的に試合を動かして、有利に運ぶ第一。
この試合の内容を見ると、菊池監督が「してやったり」の内容だったに違いない。

劣勢になると、様々な歪みが出てくる。
2塁に走者を置き、センター前。投手は当然のごとく捕手の後ろへのカバーが定石。
でも、センターの送球を取ったのは投手。いる位置が全く違う。
こういったミスが多く目立ってきた。

結局、試合のほうは、8−1で7回コールドで第一の勝利。

第一の野球を細かく観察すると、打つ・打たないじゃなく、細かいところが良かった。
セカンド走者のシャッフル、機動力・・・
課題は、投手力だろう。二番手の吉村投手は思うような投球ではなかったと思う。
先発の阿部投手の投球フォームのリズムも、今後を考えれば修正要素はある。

この夏の駒苫への一番の敵かもしれない。試合の内容はそう思わせた。
菊池監督も、心の中でほくそ笑んでいるに違いない・・・