ついにここまで来た駒苫。
この快進撃は誰が予想しただろうか?2年連続甲子園にて決勝まで来て
優勝している駒大苫小牧高校。
今年もまた聖地に戻り、最後の二校まで残った。相手は古豪早稲田実業。
いつの大会でも一緒だが、ここまで来たら「疲労」は相手も自分達も一緒。
乱打戦になりやすい決勝だが、この2チーム、好投手の戦い。
早稲田について少し語ろう。
早稲田の試合を初めて見たのは、昨年の秋の神宮大会。
「とんでもない投手がいるな・・」
と思い、試合を見た。駒苫打線は、奥山君の活躍もあり駒苫が押し切る。
でも「よく打てたなあの投手」っていうのがその時の感想。
投げるフォームはシンプルで癖がなく、投球術も大学野球を思わせる。
ちょっとしたきっかけからチャンスを掴んで・・・ってゲームだった。
それから1年弱。まさか甲子園決勝でこのカードが再現になろうとは・・
連投につぐ連投で勝ち上がってきた斉藤投手。
「いくらなんでも疲れているだろう」と試合前は見ていた。
今日は、久々に甲子園での観戦が実現した。球場に到着するとすごい人。
前日の試合終了後に、チケットを得るために徹夜の列。凄過ぎる人気。
開場は9時前後だった。人の列は途切れない。
あっという間にバックネット裏は、熱狂的高校野球ファンで埋まる。
試合前、もう球場は異様な雰囲気。選手が到着すると歓声が上がる。
やっとたどり着いた・・・
と、ひとりで思いにふけながら、席に着席。2年連続同じ場所での観戦。
この日の先発は、駒苫は菊地投手。二年生投手だ。
田中投手は、連日の連投で疲労困憊。後輩にマウンドを譲った。
早実は、斉藤投手。もうこの大会で何球投げているのだろうか?
二回戦の大阪桐蔭打線に対しても完璧な投球を披露。
1戦ごとに進化していっているような感じ。こりゃ、静かな怪物だ。
「連投」
野球に携わっている人なら、二試合の連投でも、
「大変・難しい・あり得ない」と思うに違いない。連投しまくり・・。
後々、酸素をうまく使って疲労回復をしてリフレッシュしていたと聞く。
すごいね早稲田ファミリー。これもまた力。
駒苫先攻は今大会初めての出来事。先攻できればそのアドバンテージは大!
先頭の今大会絶好調の三谷君が右中間にヒットを放つ。
よっしゃ、方向良し、狙い球良し、という入りだった。
その後、しっかり三木君が送り、駒苫の形ができる。
しかし、ここから斉藤投手は踏ん張る。二者凡退。
出来るならば、先制パンチをしたかった駒苫。早実の踏ん張りに脱帽。
早稲田1回。
先発の菊地投手は制球が定まらない。5万人の中での登板。
ムード・雰囲気はいつもと違う。自分を見失っているようだ。
先頭の好打者川西君を四球で出し、バントで同じように送られた。
3番桧垣君を四球で出して傷口を広げる。しかし4番の後藤君を併殺に。
う〜ん、大したものだ。あの緊張感で四球での立ち上がりから失点なし。
駒苫2回。
先頭の鷲谷君が四球で先頭出塁!これは大チャンス!
菊地君がバントで送った。しかし、二者凡退。
ピンチではしっかり制球する斉藤投手。この2回を見て感じた。
今日は、1点が遠い。1点勝負になるって。
いつもの駒苫なら、二回のチャンスがあれば、1度はものにしている。
でもそうさせないレベルの高い投手がマウンドに立っている。
同じ年に二人の怪物を生み出した神様・・・。
ひとりでいいじゃん。と思いながら試合を観戦。
菊地投手も踏ん張っていたが、3回1死から9番にヒットを許し、
1番の好打者の川西君にセフティバントを決められる。
駒苫としては、大きなピンチが訪れた。
香田監督は、一瞬の迷いもなく田中投手に交代。決断が早い。
その大魔神田中投手は、連投の疲れがありながら監督の期待に答える。
二者連続三振!すごいね。
あんなに疲れているのに投げれる田中投手。
何が彼を動かしているのだろうか?体は朽ち果てているはずなのに・・。
動かしている原動力は「心」だ。強い心が体を動かしている。
斉藤投手も一緒だろう。
中盤まで点が入りそうにない。
ここでパソコン持参できているエントモは、帰札の便を変える。
これは、ひょっとして・・帰れなくなっては困るので即座に動く。
しかし、まさか本当にそうなろうとは。でもそれだけの投げ合いだった。
試合が動かない。動きそうでも両投手が芽を摘む。
早実6回。
2番の小柳君がレフトにヒットを放つ。先頭打者が出塁。
桧垣君はバントをした。それが内野安打に!駒苫最大のピンチ。
4番後藤君がバント。守備妨害すれすれの走塁。でもうまい。
ここから田中投手の「鬼」を見た。
絶体絶命のピンチで、5番船橋君を伝家の宝刀SRで三振。
この勝負の見応えは素晴らしかった。技と駆け引き、そして気迫。
続く斉藤君もセカンドゴロに打ち取る。最大のピンチを凌いだ。
凌いだというより、逆にねじ込んだ感がある。
駒苫7回。この回がひとつのポイントだった。
先頭の鷲谷君は倒れ、田中君の打球をショートが失策。
その打者を送る駒苫。二死2R。ここが押し切るのが駒苫。
代打に山口君を送る。その山口君は、今まで決めてきた選手だ。
その困った時の山口君に、斉藤投手は死球。めぐり合わせか・・・。
ひとり拳を握る。後続が絶たれ、先取点を取れなかった。無念。
ここまでの早実斉藤投手、無意識に良い方向に回っている。
野球の神様は、早実に傾きかけているようだ。
駒苫8回。
目の覚めるような1発が。
2番三木君が斉藤投手のストレートをバックスクリーンにぶち込んだ。
狙っていたストレートにようやく合った三木君。あっぱれな1発。
ここでたたみかけたいところだったけど、斉藤投手は踏ん張る。
なんてメンタル的に強い投手だろうか・・。
普通は、ここでバタバタいく所でも踏ん張りきる。怪物だ。
早実8回。
9回までの試合を想定するならば、最後のクリーンナップを迎える。
1死から3番桧垣君に痛恨のレフトオーバーを打たれる。
完璧な状態なら田中投手は勝っているだろうが、今は決勝。
自分で思うように制球出来なくなっている。しょうがない。
中継プレーのミスもあり、三塁まで進塁させてしまう。
駒苫の練習を見ると、守備練習・連係プレーはすごい時間を費やす。
もう芸術の域に入る中継プレー。その中継が乱れた。甲子園の怖さ。
4番の後藤君を迎える。
外めの球をセンターに持っていかれる。
無意識にワンバウンドの恐怖感もあっただろう。高さが中途半端だった。
「カキーン」
打った瞬間本塁打だと思った。しかし、女神は本塁打を選択しなかった。
打球は、強い逆風に戻され、スタンドインはしなかった。犠牲フライ。
同点に追いつく。均衡が破れた後は、細心の注意が必要。
でも、あの場面で、あの疲れで、あの大観衆。精一杯やっている。
展開的には、田中投手が切れてもおかしくない。
いや、普通なら切れるだろう。折角一点取ってくれたのに・・・って。
でも、ここからが彼の3年間を出し切る。成長の跡がうかがえた。
気持ちの部分で「弱気・後悔」など芽生えると指先に出てくる。
本当の怪物ぶりを発揮するのは延長戦からだった。
すごいね。この両投手。
もう高校生の域を大幅に超えている。
人を感動させる投球をあの聴衆の中、全国民が見ている中で演じてる。
この辺から、観戦していてある感覚が芽生えた。
「結果はどうでもよい。目を背けないで最後まで見守ろう」
不思議な感覚だ。ここまで来るまでには「なんとか!」「いけー!」
という気持ちが強く駒苫を見守っていたが、ここまで来たら5万人の中で
「楽しめ」
という気持ちになった自分がいる。幸せな選手達。こんな経験できない。
この先、こういった経験はたぶんできないに違いない。
3年間頑張ってきたご褒美だ。
延長は15回まで。延長に突入し6回投げきらないといけない。
田中投手、斉藤投手を見ると、先など考えていない。
目の前の敵をねじ伏せることだけ考えているように見えた。
すんげ〜!ひとごとのように観戦し、目を細める。
田中君が一塁にヘッドスライディング。はじめて見た。みんな必死だ。
斉藤投手は、1死満塁のピンチを迎える。
岡川君に対してカウント1−1からスクイズを外す。
低めにSRを投げる。後のコメントで見えたからワンバン・・って。
これは本当にそうだと思う。過去の駒苫を見ても離れ業をやっている。
スクイズを外す!過去2年を見ても、江夏投手みたいなことを平気でやる。
あの甲子園で、あの緊迫した場面でやるのだから大物だ。
あそこは、スクイズじゃなく・・という評論は確かにあるだろう。
結果論じゃなく、様々な要素を考えると、選択ミスでもなんでもない。
そうさせた斉藤投手が素晴らしいのだ。それだけ良かった。
ハンカチ王子、すごいね!
田中投手もピンチの連続。なのに得点を許さない。
我慢比べの中にも「攻める気持ち」が両投手にあった。
極限状態での登板。
投手だけじゃなく、チーム全員は何か大きなものを掴んだに違いない。
ゲームセット。両チームに拍手。
引き分け再試合。田中投手の晴れやかな笑顔が印象的だった。
香田監督の
「明日もたくさんのお客さんの前でプレーできる喜びを感じよう!」
という言葉も印象的だった。両チーム優勝にしてあげたい位だ。
規定日程では負けなかった。すごいよ3年連続超満員で戦えた。
この強さの秘密は?
間違いなく、ここまで子供達を導き、あの舞台に立たせる監督の手腕ありき。
香田監督だから、ここまで来れている。これは間違いない。
素晴らしい歴史的場面に立ち会えて、幸せを感じる。脱力感さえ覚えた。
野球って怖い、面白い、楽しい、色々なものを教えてくれる競技だ!
駒大苫小牧 000000010 000000 1
早稲田実業 000000010 000000 1
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