(創業塾 原稿)                            2004年10月9日
                                中小企業診断士 江塚 修

  創業について           

1.自己紹介
 皆さんこんにちは。松戸で経営コンサルタントをしている江塚です。創業塾の開講を迎えて、大きな夢に向かっていく覇気・熱気がムンムンとしてきます。まずは、皆様方の創業への新しいスタートに対しぜひ頑張っていただきたい、とご成功をお祈り申し上げたいと考えます。それとともに、これからのご苦労に対して、一段と気を引き締めて進めていただきたい、とお願い申し上げる次第です。
 さて、私から自己紹介をしましょう。
               ( 中略 )

2.起業家とは
(1)天才と凡才
皆さん、「天才」と「凡才」という言葉はご承知ですね。起業家でも、天才は何でもすぐマスターしてすぐ一流になります。新しい事業をスタートさせるという創業の分野でも「天才」はいます。あっという間に、業界のトップに躍り出る人で、営業力が抜群で何でもトップ水準です。このような人はほんの一部の人々で、1万人に一人程度かもっと少ないでしょう。
 しかし、(「天才」はエジソン、松下幸之助などのほんとに僅かな人数でしかなくて)世間でいわゆる天才といわれている人は、「凡才」でありながら人並み以上の努力で勝ち取ってきた人たちばかりです。新しく事業を始めるにあたって、ほかの人から評価されるには、人並み以上の努力なしには成功はおぼつかないでしょう。私たちは凡人です。凡人が独立して世間から評価をされることを望むわけですから、皆様方の努力を大いに期待申し上げます。
 ある調査で、一般に「天才」と呼ばれる全国のトップセールスマンの実態調査をしたものがあります。これは、大学の教授が1年をかけて実施したものですが、驚くなかれトップセールスマンは、普通の人の数倍の営業努力をしていたという事実が確認されました。お客様の場所へ訪問しても、単に訪問するだけでなく、しっかりとした訪問記録と次に訪問する時の課題までを考えている、とかいろいろの苦労を人の数倍もしていたのです。そうしないとトップセールスは維持できないことが判明しました。
 この創業塾のなかにその1万人にひとりの「本当の天才」がいるかもしれません。その方は、今日からのプログラムは全く不要です。そのまま感性に基づいて行動しても、何とでもなりますので明日から売上が立って儲かっていくはずです。その他の方は、凡才です。一所懸命に努力をしないと食っていけない状況であろうと思われます。しかし、この「凡才の天才化」の部分を目標にしないと、どこかで潰れます。並大抵の努力ではないことを覚悟してください。

(2)企業家と起業家
 さて、一般に「企業家」ということばがあります。企業家と起業家とはどのように違いがあるのでしょうか。この違いをはっきりさせることで、皆さんのこれからの位置づけが明確化すると思います。
 まず、「企業家」ですが、(絵を描く)この二つの部分とくにこの部分が企業家としての特性です。大辞林によりますと、「企業の経営を自分の責任で行う人」「企業の経営者」「企業者」と書かれています。これは、一般にマネジメントといわれるもので、大会社であれ中小企業であれ創業者でない経営者がこれに当たるでしょう。
企業家は、出来上がった会社を維持して、大きくすることがその本分であり、本領でしょう。マネジメントとは、従業員を繁栄させ、株主を喜ばせ、お客様の満足を得て売上高を伸ばし、企業を拡大成長させることが必要です。皆さんが将来経営者になって、会社を大きくさせるころ、「企業家」と呼ばれていることでしょう。
 一方、起業家はこのマネジメントだけでは足りません。創造性や革新性を備えなければ、新たな市場に打って出ていくことは出来ないのです。大辞林によりますと、「新しく事業を起こし、経営する人」となっています。
さて、皆さんは「開業」を目標にされています。新しい事業のスタートを目前にして意欲や目標、そして心配などもたくさんあるのではないでしょうか。皆さんのように、未知に向かって新しい事業に挑戦する人を、「起業家」といいます。フロンティア精神を発揮できるという、大変夢がある仕事であると思います。
 皆様方は、新たな事業をこれからチャレンジしようとしている方々です。その意味で、起業・創業者であり、まさに「起業家」たらんとしているのですね。

 このマトリクスを説明しましょう。
「イノベーター」は端的に言えば発明家とか革新者あるいは革命家です。創造性は高いがビジネスには不向き、という人です。この人も例えば本田宗一郎さんなどは、イノベーターなのですがビジネスは大成功しました。藤沢さんという相方(にょうぼ役)がいたからこそ、大きな仕事が出来たのです。お一人でのビジネスであった場合、どうだったかはわかりません。井深さん(ソニー、盛田さん)(松下さんは天才)
 「プロモーター」は単に大声を出して、脅かしながら仕事をするタイプです。部下の管理やマネジメントは全く不向き、かつ経営能力もありません。もしも自分がプロモータータイプの人は、自己改造がまず優先です。
 「マネジャー、管理者」は、統制と管理が得意です。現状の円滑な運営を行うことの出来る優れた能力が企業の維持にプラスになります。しかし、独創性やイノベーションは必ずしも必要ではありませんし、逆に邪魔をする場合すらあります。
 「起業家」は、そのどちらの能力をも求められます。経営能力(資金、立地、人の管理、お客様管理、業界との付き合いなど)はすぐ必要になります。また、創造性がないと既存のお店や、既存の業界の人からあっというまに潰されてしまいます。

(3)起業家精神とは
 このマトリクスの、独創性・イノベーションの姿勢、およびその追求の行動がまさに「起業家精神」と呼ばれるものです。
 必要とされる起業家精神とは、ひとつは「本人の特性=メンタリティー」ともうひとつは「行動」が必要だと、古くからの研究者は強調しています。
 本人の特性とは、さっきのマトリクスにあったもので、もっと詳しく言うと「イニシアティブ」「リーダーシップ」「強固な意志」「忍耐力」「柔軟性」「適応力」など
 行動パターンについては、
@チャレンジすべきことに果敢に挑戦する
A自ら行動を起こす
B不屈な忍耐力と意思、
の3つであるとされています。

 そして、起業家に不可欠なメンタリティと行動ということで、JAティモンズという学者が言う6大テーマとは、次のものです
@起業への肩入れ(コミットメント)・強固な決意
A起業のチャンスへの執念
B想定されるリスクへの忍耐力・許容性
C創造性や自己改革、適応力
Dリーダーシップ
E一流たらんとする欲求
 
また、逆に起業家精神に反する障害については、
@自信過剰
A自意識過剰
B外部の権威を嫌う姿勢
C衝動的な動き
D外部支配への依存
E完ぺき主義
F全知主義
G極端な依存回避(孤立主義)

 以上が起業家の特性ですが、誰でも自己改造してこの精神に近づくことは可能です。しかし、それには自分が柔軟になる必要があります。頑固でも良い、しかし周りを良く見て、自分後付けがどうなのか、常に理解しながら進めるのが、真の「起業家」なのです。

3.我が国の創業の状況
 それでは、我が国の創業・開業の実態はどうなっているのでしょうか、」ということを、実際のデータを交えて検討してみましょう。
 この記述は、2002年度の中小企業白書です。皆様方の仲間がどのような特性なのか、どのように動いているのか、そのような推移なのか、など非常に興味深い結果が出ています。 
              ( 中略 )

次のコーナーは、事業の開始の段階からのプロセスについて勉強していきましょう。なお、これらの詳しい実際のシミュレーションは次回の研修で、実地で行いますので、ここではガイダンスのみとなります。しかし、ものの考え方の流れ、コンセプトのフローについては十分理解してください。
おおよその流れをまず説明しましょう

4.事業の概要を決める
 開業するについて、どのような商品を扱うのか、どのようなサービスを提供して、そして顧客からどのようにして対価を貰うのか、この基本的なモデル、ビジネスの特徴、ビジネスモデルの概要を決めることです。
 今失業しているから、とりあえず何かのビジネスを自営でやりたい、といっても決して事業が天から降ってくることはありえません。事業のチャンスは、自ら徹底した努力によってのみ、獲得が出来るものです。そのためのプロセスについて説明しましょう。
@事業機会の発見

A事業シーズの創出

Bビジネスモデルの検討

Cリスクテイク

5.営業戦略を決める

6.事業計画を決める
マーケティング戦略が決定した段階で、ほぼ事業の全体像が明確化してきます。次項の「資金調達」と並行して実施する項目が、「事業計画の最終的な確定版作成」の手続です。事業の概要が決まり、事業のコンセプトが決まり、そのビジネスのモデルの収益の上げ方の概要が決まり、そしてマーケット、お客さまをどこから引っ張ってくるかが決まった段階で、ようやく「事業計画書」の詳細の記述が可能になります。
事業計画書は、その目的は二つあります。一つ目は自分のためです。無からビジネスを打ち立てるわけですからそのプラニングが重要になります。1年目、から最低でも3年目程度までは作成して、自分自身の目標管理と行動の規範にしましょう。そのような意味合いでは、この事業計画つくりはきわめて重要な意味を持つものになります。
次に二つ目の目的は、外部のサポーター向けの資料としての位置づけです。とくに、資金支援をお願いする時に貴重なエビデンスになります。国民金融公庫や県・市、商工会議所などの融資制度でも、この資料が一番必要になります。
このような重要な書類ですので、ぜひ慎重に注意深く作成することが肝要です。いい加減に作成して、自分の羅針盤としては全く使い物にならなかったり、金融機関の信頼性が消えてしまったりするような計画書は、ない方がましかもしれません。
世の中では、計画の80%以内で実績があがればどうにか正確な計画書であるとの認識があります。ぜひ、80%までの精度を目標に作成することをお勧めします。
この80%精度の作成方法は、端的に言えば「売上高などの計画値を無理に上げずに、出来る範囲の中で作成する」ということに尽きます。将来の計画ですので、違って当たり前ではありますが、背伸びして信用をなくすことは、無駄な労力を使うことになりますので、気をつけましょう。

7.資金計画を決める・・・・・・略

8.ITなどの活用の仕組みを決める
 まず、皆さんにお伺いします。<インターネットで商品の購入をしたことある人> <メールのやり取りをしている人> <ホームページで、商品や最新情報などを調査している人>
 個人事業者や、零細企業は情報の谷間にいます。パソコンを利用した情報収集は開業には不可欠です。例えば、食堂関係・・・・一流のレストランや都内の普通の商店ではメニューを掲載しています。また、レシピについてもTVのホームページや、食品企業のHPには載っています。この情報をトレンドとして利用することが、何と重要なことでしょうか。
 また、商品を販売する商店の開業の方は、お客様は最近とても勉強してきています。ちょっとした買い物は必ずといっていいほど、ネットでその内容や値段を見てきます。商店主がそのようなお客さん情報に負けていけません。
 また、サービス業では同業種の最近の新しいサービスを知ることが出来ますし、近くの大口ユーザーを探したり、顧客探しに使えます。

9.許認可の手続・・・・略

10.成功者の実像・・・略

11.成功の10か条
< 開業者の成功のポイント 江塚流 10箇条 >
@聞く耳を持つ            頑固でも良い、その代わり情報は許容させる。 すべてが自分のスタイルでは、行き詰る
A他人のスタイルを盗む      時間を買う、大きな成果がある。 自分のスタイルも大事、しかし他人の行動も参考にする
B変化の先頭を走る         新しいものばかりではダメ。しかし新参者が新しいものがないと顧客は離れる
C強みと弱みを自覚する      必ずどこかでくじける時がある。その時は、強みと弱みを知っていると次の対策を打てる
D最悪のシナリオは用意する    思ったように進まないのが開業スタート。
                      最悪の時にどうするか、いつも考えて行動すると余裕が出来て最善が尽くせる
Eプラス発想             開業者は、悪い時の方が多い。毎回しょげているよりは、新たな発想を変えてみる。
                                            例えば、失敗しても次のための勉強だ!など 
F急ぎすぎない            急がば回れが多い、失敗を重ねるだけ それよりゆっくりとじっくりと確実に
Gいじけない、ひるまない      開業者は既存業者にひるんだら潰される。 いじけるより、それこそプラス発想で
H家族とともに進む         なんと言っても家族の理解が一番
                        経理を頼む、DMを頼むなど、一定の分担を
I心技体                  オリンピックの井上選手

12.最後に
 天から、商売が降ってくるわけは絶対ありえないことは、先ほど申し上げました。商売を成功させるには、自らの努力が一番求められているのです。そして、インターネットに普及とともに、我々中小企業者は大手企業と同列の情報を常に手にすることが出来るようになったのです。
 しかし、このインターネットの普及は、お客様も一段と情報通になっている、ということに繋がります。いい加減なサービスや、一流でない商品は現在の情報社会では、全く認められなくなってきているのです。
 私たち開業する希望者は、常に既存業者以上のサービスと知識が必要になります。知識を常に補充して「プロ」であることを磨いていくことが今の時代は一番重要なのです。