(資料)
平成16年2月
中小企業診断士 江塚 修
千葉県PFI事業の現状と診断士業務 |
本稿は、「PFIインフォメーション」を参考に作成しております。
全国的にPFIが急速な普及を見せてきている。千葉県でも既に24事例が検討され、このうち10事例が案件化されつつある。PFI方式は海外(英国)発祥の公共サービス民間資金活用方式であり、わが国ではまだスタートしたばかりの新方式ということで大型案件から採用が始まっており、現在は大企業と大手法人コンサルの世界である。
しかし、PFI方式が広く普及し物件が小型化すれば、事業者として中小企業の参入が可能になるとともに、私たち中小企業診断士も業務に携わる機会が増加すると思われる。
1.PFIについて
PFIは直訳すれば、民間資金主導型の手法であり、従来公共部門が提供していた公共サービスを民間主導で実施することにより、設計(design)、建設(build)、維持管理・運営(operate)に民間の資金とノウハウを活用し、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方である。 またPFIは民間の技術・経営ノウハウを活用し、市場原理により事業の効率化やVE(バリュー・エンジニアリング)手法の採用等によるコストダウンを実現させ、利用者に最良のサービスを提供することを目的としている。
こうしたことから、公共部門は施設の所有、運営の主体からサービスの購入主体へと、一方民間部門はサービスの提供者へと従来とは異なる新しい官民パートナーシップの関係を構築していくこととなる。
PFI(Private Finance Initiative)は、1992年にイギリスで誕生した新しい社会資本整備手法であり、我が国においても透明かつ効率の良い仕組みとして期待されているものである。 イギリスでは、道路や橋梁、病院、刑務所、学校、文化施設、発電施設、情報通信システム、庁舎、廃棄物処理施設等においてPFI事業が推進され、現在公共事業全体の20〜30%がPFI事業であると言われている。
そうした実例を踏まえながら、イギリスのPFI制度を我が国に導入するにあたって、商慣習や法制度の違い等があり、日本の諸制度に合致した型である"日本版PFI"として考えて行くことが必要となった。
<公共部門による民間部門からの公共サービス調達>
PFIが従来の社会資本整備と明らかに異なる点は、公共部門は単に公共サービスの直接提供者ではなく、これを提供する民間事業者から料金を支払って調達する立場になるということと、民間事業者が従来のように請負業者という立場から施設の設計から建設、維持管理、運営に至るまで、ライフサイクルの全工程に関与し、経営改善努力を効率的に行うことにより、高収益性が得られるというインセンティブが与えられた点がある。
<PFIのメリット>
@低廉かつ良質な公共サービスが提供されること
PFI事業では、民間事業者の経営上のノウハウや技術的能力を活用できる。また、事業全体のリスク管理(*)が効率的に行われることや、設計・建設・維持管理・運営の全部又は一部を一体的に扱うことによる事業コストの削減が期待でき、これらにより、コスト削減や質の高い公共サービスの提供が期待される。
A公共サービスの提供における行政の関わり方の改革
従来、国や地方公共団体等が行ってきた事業を民間事業者が行うようになるため官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくことが期待される。
B民間の事業機会を創出することを通じて経済が活性化すること
国や地方公共団体等が行ってきた事業を民間事業者にゆだねることから、民間に対して新たな事業機会をもたらす事となる。また、他の収益事業と組み合わせることによっても、新たな事業機会を生み出すこととなる。PFI事業のための資金調達方法として、プロジェクト・ファイナンス等の新たな手法を取り入れることで、金融環境が整備されるとともに、新しいファイナンス・マーケットの創設につながることも予想され、このようにして新規産業を創出し、経済構造改革を推進する効果が期待されるのである。
<PFIの対象施設>
●公共施設
道路、鉄道、港湾、空港、河川、公園、上下水道等
●公用施設
庁舎、宿舎等
●公益施設等
公営住宅、教育文化施設、廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設、更正保護施設、地下街、駐車場等
●その他施設
情報通信施設、熱供給施設、新エネルギー施設、リサイクル施設、研究施設、観光施設等
2.千葉県のPFIの状況
<総括>
PFI方式がスタートして4年が経過したが、件数的に見ると千葉県はPFIの先進県である。15年10月現在全国レベルで累計100件が進行中または完了済であるが、このうち8件が千葉県にて進められている。 (12月現在は10案件に増加している)
また、関東地区の7都県(合計40件)の中の推進状況では、東京都(13件)に次ぐ取り組み件数である。
<地域別状況>
地域別では、現在具体的に進行中案件(8件)は 千葉市、市川市、浦安市の3市のみであり、その他市町村はまだ検討中か未着手である。整備計画、建設計画などの事業の存在や財源や財政状況により市町村のばらつきが出るのは当然としても、一地域に集中している感がある。
<今後の課題>
今後、県内で幅広くPFI方式による予算効率化への取り組みが行われるためにも、既に着手済みの他市町村の案件をテーマとして、各自治体がその手法の習得を行い、早期に全県のPFI手法のレベルアップを図ることが望まれる。
3.診断士としてのPFI業務
<中小企業へのPFI指導>
現在は、大型案件の先行により大企業、上場ゼネコン独壇場のPFI市場であるが、今後はPFI方式が広く普及し物件が小型化することにより、この状況が大きく変化することは明白である。その際、主として機器供給者、下請け企業などの形にて、中小企業がPFIに関与するケースが急速に増加すると思われる。
PFI方式は、官庁に代わり民間事業者が大半のリスクをとる方式であるから、この方式に関与する場合は、事業者や協力者が必然的に応分のリスクを負担することとなる。その時に、中小企業者に対しリスクヘッジやリスク分散の指導をするアドバイザーが必要となる。
診断士は、今後このような中小企業者から指導・アドバイスあるいはコンサルを求められるものと思われる。
<自治体向けPFIアドバイザー>
PFIの原則を忠実に実行するためには、具体的案件であるプロジェクトがスタートする段階から自治体向けに外部第三者による指導やアドバイザーが必要とされる。(前述のスキーム図のコンサルタントがこれに該当する)
これは、事業性算出から事業者決定までのプロセスを自治体の一方的な考え方で進めず、外部専門家による公正な判断により進行させ、公共事業を公明正大で透明性の高い状況の中で実施させるためである。
このアドバイザリー業務は、従来は大規模な公共事業が多かったため、組織的コンサルタントの世界であり大手コンサルが受託するか、或いは専門性の高い業界コンサルタントが担当するケースが大半であった。
アドバイザリー業務の内容としては、VFMの算出によるPFI方式の可能性判断から始まり、事業採算、事業内容、事業者選択までの自治体に対する幅広いアドバイスである。
大規模なPFI事業から中小規模のPFI案件に幅が広がりつつある現在、アドバイザーも事業者も小規模化してくると思われる。
われわれ中小企業診断士が、グループを組成しこのアドバイザリー業務に参画するようになるのも間近であると思われる。