給与係として思ったことなど

あっという間の歳月が過ぎて、総務課に来てもう数年がたちました。今度から担務が変わります。総務課では、それぞれの担当が、それぞれの担務を深く掘り下げているので、担当する職務が変わるというのは、仕事を変えるのと同じくらい変化のあることなのです。たぶん、うちの局規模の総務課を経験したことのない方には、わかっていただけないと思うけれど。
で、もうすぐ給与を扱う人ではなくなるのですが、給与を離れることになって、今までのことを振り返ってみると、いや〜、すごい日々だったなぁと、つくづく思います。

皆さんの知り合いに総務課の人がいるのなら聞いてごらんなさい。総務課で一番やりたくない仕事は何ですか?って。多分、大概の人が交通事故処理と給与担当って答えると思うよ。実際、この仕事厳しいですもの。

給与は、精神的なプレッシャーがすごく大きいので、担当になったばかりのころは、夜も神経が高ぶって寝れなくて、やっと真夜中に寝つけても、『認定簿を誤ってシュレッダーにかけてしまう夢』とか『認定届け関連の書類を紛失したりする夢』だとか『勤務時間報告に間に合わなくて、管内の給与支給事務が止まる夢』『手当の支給を止めわすれて300万円を一括返納させなきゃいけない人を発見したけど上司にも言えなくて悶々と悩む夢』・・・・・などというすごい怖い夢を見て自分の悲鳴で目が覚めたり。毎回毎回。おかしくなりそうでした。今でも、そういった夢を見ることがあります。

いまだに血の気が引くことも、多い。ストレスで、目がちかちかしたこともあった。耳鳴りがしたり、精神的に不安定になったときもある。期限に間に合わなくなりそうで、家で徹夜して仕上げることも多いし。そんなのは、腕が悪いからだといわれればそれまでだけれど。

総務課に着任し、次の給与係だからと言われて、本当に給与に入るまでは、給与のさわりぐらいしかわかんなくて、『オミソ』的なことしかやってなかった私。もちろん、総務課でしごとするのもはじめて。給与なんて仕事が存在することも知らない無知なやつでした。



初めて給与を担当することになったのは、中堅課訓練を修了し、総務課に配属になってすぐのこと。総務課のことも何も知らない。ましてや、給与のことなんて何も知らない小娘でした。そんな私を給与につける決断を下した総務課長もすごいと思うけれど、ここまで育ててくれた給与の前任者に感謝の気持ちでいっぱいです。

何にも知らない素人同然の私を給与につけることがどんなに危険なことか、それは、給与係を経験しなければ本当のところはわからないと思う。各種手当の認定にあたって、ものすごく多くの決まりがあって、そのどれかひとつを見落としてもいけないわけで、決まりにのっとった認定でなければ、後から全ての手当てを返納させなければならないわけで。毎月払う手当額は、少しでも、重なれば相当な金額になってしまう。しかも、誤支給に関しては、金額の有無にかかわらず、一括で返納させないといけない。誤支給は、あってはならないことだから。

退職金とかは、項目見落とせば、数百万で金額違ってくるし、給与の新処理システムで、機械操作を誤れば、給与が誤って支給されてしまう。


給与を経験したいろんな方から話を伺うことも多いのですが、誰も知ってる人がいない中での給与事務がどれだけ不安ですさまじいものかをよくききます。何も解らず、なんとか認定事務をしたけれど、項目一つ見忘れて、本来払ってはいけない人に支給して、あとからわかって5年遡って返納させたとか、担当が局を移ってからそのことが発見されて、遡って返納および担当者が処分されたとか。もう、本当に、いろいろな話を聞きました。聞くたびに、給与を扱うという重圧は、増していきました。


だからこそ、教えてくれる先輩がいたってことが、私にとってどんなに幸運なことだったかを実感しています。教えてくれた方は本当に、厳しい人でしたけれど、今、振り返ってみると、あんなに詳しい人に、1年間つきっきりで教えてもらえたことは、幸運以外のなにものでもないなって思うし。そして、それをさせてくれた課長もすごいと思う。前任から完璧なまでの状態で引き継ぐことができるだけでも、どんなに恵まれていたか。その先輩の手腕を直伝で教えてもらえたことは、幸運なことだった。普通、給与係は、次席クラスが担当するぐらい重い。素人で、共通業務の経験なくて、しかも、末席の私が担当するようなものではないのだ。しょっぱなから、給与を担当させることは珍しいらしい。でも、私は、給与をやることになってしまった。そして月日が流れた。今の私が給与係としてあるのも、その先輩のおかげだ。

その先輩も、全てを手取り足取り教えてくれたわけではないよ。各5センチはありそうな分厚い規定を給与関係3冊、勤務時間関係1冊、システム使用説明書1冊渡されて、これ、覚えないと仕事できないからねって言われ途方にくれたことや、泣きそうになりながら覚えたこと、今でも昨日のように思い出します。何か先輩に尋ねても、規定は調べたのか?調べもせずに人に聞きに来るな!って怒られて、、、それで、強くなりました。まず規定を事細かに調べる癖がついたのは、よかったこと。でも、当時は、はんぱなくつらかったけど。

今思うのは、総務課の経験がなく、先入観もまったく無かったから、だから、給与係としてやってこれたのかもしれないなってこと。もし、自分がその前に総務課の経験があって、総務課の担務を知っていたとしたら、給与は務まっていなかっただろうと思う。最初に給与を担当できたのは、不幸でもあり幸運でもあったのかもと今なら思える。次の担当にこれから引き継いでいくわけだけれども、先輩の残した財産と私の培ったものをあますとこなく伝えていくことができればいいなと思う。
2003.5.11