恵那山

【2012・11・23〜25】

 恵那山は位置的には中央アルプスの最南端の山とされているが、その主脈からかなり離れて高さをもたげているので、恵那山そのものは独立峰と見まうばかりの目立つ存在です、さらに2191bの高度と船覆山(フナブセヤマ)と呼ばれる山容は、一度眺めたら忘れられない存在です、奥羽山脈の船形山にも同様に船が付くが、船の形に似ているのであろうか、さらに台形でどこが頂上であるか不明確さも甲斐の櫛形山にも通じるようだ、山名の由来は定かではないが、地元美濃の国、(実際は信濃の国との県境の山である)、恵那郡の山という説と、伝説による天照大神降誕のときに胞衣(エナ)を山中に埋めたことによるとのことであるが定かではない、このように恵那山は端正な姿から多くの書籍においても紹介されています、尾張から中山道に入ると馬篭(マゴメ)から木曽路になるが島崎藤村は朝な夕なに眺めて育ったのであろうか、何気のない表情で「夜明け前」に登場してくる、深田久弥は「日本百名山」の中で【関守のように立っている】と表現している、関守のように立つとはどのような姿をさすのか、さらにウエストンは明治26年に登っていて、書、【日本アルプスの登山と探検】で紹介しているが、当時、今も恵那山にはそんなに魅力があるとは思えません。

 日本アルプス(北アルプス)ならうなずけるのですが、どんなところに魅力があったのか興味を持ちます、主な登山基地となる中津川市からは、東方に圧倒的な高さで迫ってくる一等三角点の山です、恵那山には四本の登山ルートがある、最近まで一番登られていたのが、黒井沢コース、ウエストンが登った、恵那山神社からの前宮コース、神坂峠からのコース、一番新しい阿智村の広河原コースの四コースです、無雪期に一番多く登られるのが阿智村からの広河原コースです。

渡邊〈悟〉さん、塚越さん、私の三名は11月23日の20時過ぎに千葉を立ち24日の2時過ぎに広河原に着いた、駐車場には既に三台駐車されていた、私達のようにかなり物好きがいるものだと思った、そんなことを考えながらいつものようにテントを張り、これもいつものように焼酎のお湯割を飲んで横になった。

駐車場の先にはゲートがあり、常時鎖錠されていて自家用車は入れません。

胞衣(エナ):胎児を包んだ膜と胎盤のことです。

 

11月24日

広河原の駐車場

 渡邊〈悟〉さんが用意してくれた、朝食用のカップヌードルと各自の用意した朝食を食べて歩き出す、広河原の渡渉地点まで舗装された歩きやすい道です。

 駐車場には仮説トイレが設置されている、利用者によると綺麗に清掃されているとのことでした。

 

恵那山登山口

 長野県の阿智村・広河原登山口です、左下に降りると沢に出ます、現在はカラマツを3本束ねた仮橋が設置されています。

 

ゼロ合目の標識

 このような標識が標高の目印となります、距離より標高を10等分に分割したようです。

 

 沢に掛かる橋

 過去に数名の登山者が、徒渉に失敗して流されて亡くなっています、直ぐ下流に高さ十bを超える堰堤があり、流れ落ちたら命の保障は無いでしょう、水量は多いようです。

 頂上近くの水場までは補給することは出来ません、ここで必ず補給してください。

 

登山口

 尾根への取り付きです、急登に次ぐ急登の始まりです、要所にこのような木製の標識が建植されています。

 

四合目

 三合目を過ぎるとこのように、残雪が現れてきました、食事の際の水は雪を溶かせば、水場での水が出ていなくとも心配しなくて澄むようです、一安心です。

 

六合目(6/10)からの展望

 六合目からの展望です、左は御岳、右は、乗鞍岳です、南アルプスは雲に隠れて展望は望めませ。

 さらに右に目を移すと、穂高連峰から槍、さらに常念山脈に連なる山々が展望できます、私達の後から来た男性がこれはよい場所だ、正面に見えるのは中央アルプスかな、私達はいつもと見る位置が全く違うので山座固定が出来ません、迷うばかりです。

中央アルプスの展望

 中央アルプスです、恐らく中央は空木岳から木曽駒ヶ岳方面だと思います、更に右に目を移すと聖岳と上河内岳の間に小さく富士山が三角形に顔を見せています。

 

南アルプス・仙丈岳方面

 これも、六合目付近からの展望です、この登山口からでの展望のお勧め場所です、もう一箇所は八合目付近です、いずれもクマザサ地帯(根曲がり竹)です、雄大な展望を満喫できます、ここから登山道が氷化していました、私はここから軽アイゼンを着用しました。

 

山頂付近

 6/10を過ぎると、一段と急登に次ぐ急登になります、登山道の積雪は表面が氷化しているので、靴はもぐりません、ザクザクと気持ちよく歩けます、トレースを外すと膝下まで潜ります、7/10(七合目)付近で引き返した登山者が10人程度いました、アイゼン無しでは自信がないので引き返すとのことでした、私達より先に出た二人連れの女性パーティが早いので、もう登ってきたのと聞いたら、アイゼンを持ってきていないし、自信がないので引き返すとのことでした。

 

八合五勺付近

 私が一番きつく感じた登りです、写真ですと、平坦のように見えますが、どうしてそうして、登っても、登っても頂にたどり着けない感じでした、黒っぽく(灰色かな?)見える所は氷化していました。

 

恵那山・山頂(2190m)

 一番きつかったのが、8/10からでした、特に頂上直下はダイレクトな登りで、ヒイーヒイー言ってしまいました、話に聞いていましたので展望は期待していませんでしたので、そんな所なのといった感じでした、木製の展望台が設置されていましたが展望は利きませんでした、一等三角点標識が埋設されていました。

 

恵那山神社・奥宮

 イザナミ・イザナギの命を祀っている神社だそうです、山頂付近には小さな祠が無数も祀られています、こんなに多くの祠のある山頂は、私は始めてです。

 

山頂のトイレ

 水洗式のバイオトイレです、造りかえられたばかりのようです、綺麗に使用されていました、使用には、非常に寒いので勇気が必要です、避難小屋から僅かですが距離があるのが難点です、積雪が無ければなんとも感じないと思います。

 

恵那山・避難小屋でくつろぐ

 黒霧島のお湯割を飲んでくつろぐ渡邊〈悟〉さんと塚越さんです、おでんを肴に美味しく頂けました、夕飯は佐藤のご飯と中華丼でした、渡邊〈悟〉さんと、塚越さんが水を汲みに行ってくれました、枯れて(凍って出ていない)いるのではないかと思ったのですが心配は無用のようでした、小屋の中には18g缶に雨水が貯蔵されていました、沸騰させれば飲用にも利用できるでしょう。

 

黒井沢登山道の水場

 悟さんと塚越さんが水を汲みに行ってくれました、枯れているのではないかと心配していたのですが、十分過ぎるほど流れ出ていたそうです、小屋から十分程です。

 

三の宮

 頂上には幾つのお宮が祀られているのだろう、このお宮は三の宮です、祀るからにはそれなりの目的があり、信仰があるのですが、それは知ることが出来ません。

 

日没寸前の太陽

 大きな太陽が西の空に沈もうとしています、雲が多くて凡庸としています

 

11月25日

恵那山・避難小屋の夜明け

 昨夜(今朝)の最低温度は塚越さんの温度計で部屋の中では℃−1.5でした、枕元に置いた水の入れ物が凍っていました、何で出ないのか不思議に思ったのですが、これで納得でした、日の出に間に合いませんでした、南アルプス・深南部(シンナンブ)の上に顔を出してしまっていました、雲一つない空でした。

 

南アルプスの展望

 空が茜色に染まりました、北岳から聖岳までの3千bの山々です中央の小さい突起が聖岳です、その右に恥ずかしそうに見えるのが富士山です。

 

夜明け

 夜明けです、太陽が南アルプス深南部の山から顔を出しました、雲海もありません、昨夜風が強かったのと急激な温度の低下により、雲海が出来なかったのでしょう、一番左の小さい突起が、塩見岳、荒川三山、赤石岳、独特の形を見せる聖岳、そして富士山、上河内岳、茶臼岳から、光岳です、太陽の当たりは深南部の山、大無間山 ・黒法師岳方面です、深南部の山にも登りたいです、この夢がかなわないかな?

 

 昨夜は月が綺麗でした、飯田の町の灯りも綺麗でした。

左の突起は上河内岳です、その左に富士山が見えるのですが写真には入っていません、その右の小さな突起は茶臼岳?

 茜色に染まった空の下の南アルプスです、南アルプスの大きさに圧倒されました、左より、荒川岳、赤石岳、聖岳、上河内岳方面です、聖岳と上河内岳との間に小さく、身を隠すように富士山がそれらしき姿を見せてくれています。

 

 荒川三山と赤石岳です、いつもと観る位置が全く違うので、勝手が違って戸惑うばかりです、北アルプス、南アルプス、中央アルプスなどはこの位置(方面)から見るのは初めてです、空気が綺麗に澄み渡っているので遠くまでよく観察できました、展望の無い山であると聞かされていたのでこれだけの展望が出来てうれしかったです。

 

小屋の後ろの大岩から

 小屋の後ろの大岩が格好の展望台です、南アルプス方の展望台になっています、山頂付近の積雪は膝下くらいです、グローブを着用せずに登ってきたので、手がかじかんでいます、かじかむというより指先が痛くさえ感じられました、飯田の町の向こうのに見える南アルプスは異国のようにも思えます。

 

恵那山・避難小屋

 避難小屋の前での、左より渡邊〈悟〉さん、塚越さんです、塚越さんは、几帳面で好男子です、百名山を目標にしているみたいです?

 小屋は最近リニュアルされたらしくとても清潔でした。

 

恵那山・山頂

 一等三角点の埋設されている、恵那山山頂です、左より、渡邊〈悟〉さん、渡邊〈悟〉さんの会社の同僚の塚越さんです、若くて馬力があります。

 八時四十五分に下りだしたのですが、昨夜から朝方に掛けて急激に温度が低下したので氷化が更に進んでいました、二人はノーアイゼンなので、トレースのついていない、樹林の中を歩いたりして十分気を配って歩いています。

 スキップしたくなるような素晴らしい天候です、スキップしたら滑り落ちてしまいます?

 

北アルプスの展望

 中央が穂高連峰です、右が奥穂高で右が前穂高岳で、槍の穂先らしきものが見えます? さらに右には常念岳から大天井岳につながる白銀の城塞が展望できます、一番左の大きい山塊は乗鞍岳です、今年は例年より積雪が多いように思えます。

 

木曽の御岳

 白く輝いているのは木曽の御岳です、こうして白い山並みを見ると神々しくさえ思えます、数十年前に登った山並みが一望できました。

 

下山口(登山口)

 下りでもへばりました、二人には大分時間的にブレーキになりました、御免なさい、どうしてなのか、最近高所がいやらしくなってきました、高所恐怖症かも知れません。

 

昼神温泉の昼神荘

 玄関には、林業総合センター昼神荘・飯伊森林組合と名前が書かれていました、入浴できるということで、この湯に入浴しました、500円とそれなりの入湯料金でした、数分は三人での貸切でしたが、アットの間に8人になってしまいました、

 

浴槽

 写真のように、湯船には誰もいません、私達三人の貸切でした、お湯は38度前後で私にはちょうどよかったです、肌がツルツルになりました。

 

車窓からの中央アルプス

 帰りの車中からの中央アルプスです、山名は全く分かりません、沿線の紅葉もいよいよ終末を迎えたようです。

 

 恵那山に登って気がついたことがあります、今までの山行の確認であったかも知れません、山には、その山に向いた登る時期があるということです、例えば、北海道の山は本土の梅雨の真っ最中である6月下旬から7月上旬、南北・中アルプスの2500b以上の山は7月中旬から8月初旬まで、何故ならば高山植物の花が最盛期であるから、東北の山も同じ、飯豊、朝日連峰、鳥海山、岩手山なども同じである、花の山は花の最盛期に登るべきであるということ、紅葉の山は紅葉の時期に登るべきだということである、では今回の恵那山はどうであろうか、私は10月下旬から11月下旬が最高の適期であると思える、高山植物も少なく、わざわざ夏の暑い季節に登る必要がないあらである、今回は雪が多くて一寸だけ苦労しましたが、的を得た計画であったと思います。

 

 (写真は渡邊〈悟〉さん撮影のものも使用させていただきました。)

(2012・12・07. 山口 峯雄)