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6月14日
【 包括根保証の見直し 】
平成16年6月13日付の「日本経済新聞」に、本年2月から始まった法制審議会の保証制度部会における「包括根保証」の見直しに関する記事が掲載されています。
日本では、オーナー企業が大部分の中小企業が融資を受ける際に、一般的に担保や保証を求められます。保証については、融資の都度債務を特定して保証を設定する普通の保証ではなく、継続的な取引で保証額が変動する「根保証」を求められることが多いのが現状です。
根保証で保証限度額・保証期間を定めていないものが「包括根保証」ですが、法制審議会は、包括根保証について猶予期間を設け廃止の方向で見直しを諮っています。
従来、金融機関等は融資の際に、中小企業は「会社と個人の財産の区別が曖昧であること」、「財務諸表の開示(デスクロージャー)がないこと」などの理由により、会社の財務の実態が不明確なことのほか、「個人保証が経営者に規律ある事業への取り組みを促す効果があること」に注目して、包括根保証を求めてきたと思われます。
包括根保証の廃止の動きは、破綻企業の経営者の負担を軽くして再出発をしやすくする目的をもち、その効果も大きいと見込まれています。
その一方、継続企業にとっては、金融機関が中小企業の返済能力(収益力)を重視することになり、中小企業にとって、融資状況が一層厳しくなる可能性も少なくありません。
また、その返済能力等の判断材料としての財務諸表の公開性・正確性が重要視されることとなります。
中小企業において、公開性についてはインターネットによる公開による開示をし、正確性については「日本税理士連合会」による中小会社会計基準(統一的な中小会社会計基準については、各方面で現在検討されています)による会計処理及び税理士法に規定する書面添付などにより確保することが重要であると思っています。
また、同日の「日本経済新聞」一面では、以前話題にあげた「会計参与(仮称)」に関する記事も掲載されています。
包括根保証の見直しなどで、金融機関が融資をする際に、中小企業の健全性の検討に財務諸表(決算書等)の正確性を、より一層重要視することになると考えられ、中小企業の経営者においては、「財務諸表は税務申告計算のための計算書類」という従来多かった考えを転換し、「財務諸表は会社の成績表(通信簿)」であり、成績を良くするために、経営者自身が経営計画の重要性を認識していくことが、さらに必要になると思います。
<平成17年 4月24日> 追記
民法の改正により、平成17年 4月 1日から、根保証のうち「包括根保証」が禁止されました。
− 平成16年12月 1日公布 「民法の一部を改正する法律案」より −