当地の土質は阿蘇火山灰土であり,酸性は強いものの水はけが良く耕土も深く,樹木の成長が早い特徴が有ります。伸長著しい葡萄を狭い棚で栽培するのですから窒素過多は禁物です。私は堆肥や肥料は全く施しておりません。植え付け前に苦土石灰と溶燐を入れ,2002年に硼素欠乏症と思われる症状が出ましたので硼素を施しただけです。しかし,隣の畑まで葡萄の根は伸びており,隣の畑の養分を失敬しているようです。与える栄養素と言えば,農薬散布時にリンを主成分とする葉面散布剤を混入しミネラルの補給を図っています。
 園地は下草を生やした方が土地の為には良いのですが,朝夕の散歩・手入れを考えると除草しておく必要があます。次第に土が硬くなって来ていますが今のところ問題はないようです。火山灰土の特徴として,乾燥した時に粘土質土のようにカチカチになるようなことはありませんし,敷き藁をするとふかふかの土になります。 
A 晩秋
 左の写真はブドウトラカミキリの被害の例です。この枝は朝までは順調に新梢を伸ばしていましたが,夕方には萎れていました。中央の写真では,この芽の伸長が悪く,しかも樹皮が黒くなっています。この部分の樹皮を剥ぐと,右の写真のように,糞が詰まっていて長さ1p弱のブドウトラカミキリの幼虫が隠れています。この害虫は主に前年に伸びた枝に産卵するので,植え付けて2年目の葡萄には根元近くにも害を及ぼし被害甚大です。
 芽に産卵し体長2mm程度の幼虫で越冬するようです。その後,枝に平行に2mm程度の幅で表皮の下を密かに食害していて,他のカミキリムシの幼虫の様に糞を表皮の外に出しません。花穂が大きくなり始めた頃に突然枝をぐるりと環状に食害し,その先の枝を枯らし,この年の収穫の夢を打ち砕いてくれます。
 この被害を防ぐために,収穫終了後にスミチオンやトラサイド等の浸透性の薬剤を散布します。春先に表皮が黒変していることで発見することも可能ではありますが,全部を駆除するのは困難です。この薬剤散布は絶対に必要と考えます。
 
B 剪定後
 剪定後に全ての枝を棚から下ろして古皮を除去したのちに,石灰硫黄合剤を散布します。ただ,石灰硫黄合剤を散布するとブドウトラカミキリを目視により発見するのは困難になります。
C 萌芽直前
 2006年までは,前記のブドウトラカミキリの駆除を再度行っていました。2007年はこの消毒は省略しましたが,ブドウトラカミキリによる被害は皆無でした。
D 萌芽直後
 新梢が10cmほど伸びたときにベンレートやダイセン(殺菌剤)とアドマイヤー(殺虫剤)を散布。もしもコガネムシがいる場合はディープテレックス(殺虫剤)を添加します。この時期のコガネムシは,1匹のコガネムシが数時間で1芽をダメにします。
E 開花前
 ダイセン(殺菌剤)とパダン(殺虫剤)とリンの葉面散布剤を散布します。スリップスの駆除が最大の目的ですが,毎年蕾を食い荒らす小さなイモムシ?がいます。小さな黒い糞や糸をが張っているように見えるときには注意が必要です。少しでも傷がついた花穂は結実させられません。ただし,近年はこの散布は省略しております。
F 結実後
 アミスターフロアブル(殺菌剤)とスリップス対策の殺虫剤にリンの葉面散布剤を添加して散布。
 殺虫剤は,効能書きに「チャノキイロアザミウマ」が記載されている殺虫剤(ダントツ,パダン,アドマイヤー,オルトラン,アディオン等)を使用します。この消毒は結実後から果粒が大豆粒の大きさになるまでの間に済ます必要があります。これより遅れると果粒が農薬の増量剤により汚れます。また,展着剤にはタール系のものを使うと果粒が汚れるので透明液体のものを使用します。
 写真はスリップスによる被害の例です。収穫時の果柄は鮮やかな緑色ですが,茶色く変色しています。本来の糖度は19°〜20°ですが,この果実のそれは16°しかありません。
G 袋かけ直前
 ベンレート2000倍とトリフミン3000倍とアドマイヤー2000倍(スリップス対策)を軽くなるべく細かい霧にして噴霧します。流れるように噴霧すると果実が汚れます。このとき展着剤は添加しません。収穫時にスリップスの害により茶色く変色して糖度が低くなったり,腐敗しているのも前回とこの消毒が不十分な事に由ると思います。この消毒を怠った年は,ほとんど収穫できませんでした。
H 袋かけ後
 ボルドー液を袋掛け直後と雨よけの被覆材の除去直後に散布します。近年,単に水で薄めるだけで散布できる製品が発売されていて,面倒な調剤の手間が省け,効果も高いようです。
 概要は上記の通りですが,手に入る薬剤によって組み合わせは変えております。また,病気や害虫の発生状況により回数が多くなる年もあります。
 雨除けがないなら黒痘病の発生の恐れがありますのでもっと回数を増やさねばなりません。また,夏にコガネムシが発生し,この被害も大きいものです。ディープテレックスが良く効きますが,収穫直前ですので使いたくありません。 コガネムシは糞が誘引物質を含んでいるのか集団になる性質と棚の外周に多く集まる性質があるようです。毎朝夕に園を見回り枝を揺すって落として捕殺しています。