傘と白杖



白杖を持っている視覚障害者にとって、傘を持って歩くのは、なかなかしんどいと思う。
ぼくだけなのかもしれないけど、片手を使えるようにしておきたいから、ものすごい雨が降っているか、ある程度の距離を雨の中、歩くことが考えられるときでないと、傘は持って出歩かないようにしてる。
きょうはそんな日で、年に数回しかない傘を持って出歩いた。
前回のときは、しっかり傘を忘れてきた記憶があって、「きょうは、忘れないぞ!」の気持ちが強かったように思う。
汽車に乗って、白杖を折りたたんで前の座席の背中側にいつものように、突っ込んでいた。
ウトウトしていたせいもあって、最寄りの駅に近づいたから、席を立って出口に向かって歩いたときに、何か違和感があった。
ちょっと短いなぁと思ったら、突いていたのは白杖ではなく、傘だった。
5mくらい歩いてから、すごすごと折りたたんでいた白杖を取りにもどった。
このまま白杖を忘れていたら、JRの忘れ物の係りの人になんて思われたやら・・・
以前、忘れ物の中に「いれ歯」や「骨箱」などもあると聞いたことがあったけど、使い込まれた白杖も珍しいんじゃないかと汗をかいちゃった。
ほんのちょっととはいえ、その忘れた様子を目撃されてて、笑ってごまかすしかなかったけど、相手から見えない方の顔は、赤かったかもしれない。


戻る