基 礎
第1章 解剖学の基礎
1.解剖学の意義
解剖学は、生体の携帯と構造を研究する学問である。医学における解剖学は人体解剖学を指す。
2.解剖学の分類
(1)目的による分類
A 正常解剖学(あるいは単に解剖学)
B 病理解剖学:死に至った病気の
原因を解明するための解剖学。
C 法医解剖学(司法解剖学):
病理解剖学の1部門であるが、特に
死因を法的に判定する。
(2)研究方法による分類
A 肉眼解剖学
ア 系統解剖学:骨格系、神経系
などの系統ごとに分類
イ 局所解剖学:各部位において
それぞれの系統がどのように関係づける
(応用解剖学、外科解剖学後も呼ぶ)
ウ 体表解剖学(生体観察)
B 顕微解剖学:組織学、細胞学と
も呼ぶ発生学も含まれる
2.人体の構造
1)人体構造の概要
@細胞・・・人体の構造と機能を果た
す最小単位
A組織・・・形態と機能を同じくする細胞が
集まったもの
上皮組織・結合組織・筋組織・神経組織
B器官・・・組織が協同して一定の
機能を営むもの
C器官系・・・機関がさらに協力して
作業を営む一連の器官郡をいう
これらすべての系統が調和して固体を作る
2)細胞
(1)細胞の構造
細胞は細胞膜で囲まれ、細胞の中には核とそれを取り巻く細胞質が含まれる
a 核 核質とそれを包む核膜からなる
核質には染色質と1〜数個の
核小体がある
ア染色質
DNAを有し、細胞分裂の際に
染色体を形成する
DNA(デオキシリボ核酸)は、
遺伝子情報を伝える遺伝子の本体である
DNAを構成する塩基
アデニン(A) グアニン(G)
チミン(T) シトシン(C)
DNAは4つの塩基とリン酸で作られた
二重らせん構造体である
イ核小体
RNA(リボ核酸)は、蛋白質の合成
情報を伝達
<人の染色体>
常染色体 22対44個
性染色体 1対 2個 計46個
男性→X,Y 女性→X,X
精子・・XもしくはY 卵子・・X
b 細胞質
細胞小器官と副形質からなる。
ア細胞小器官
@ミトコンドリア・・ATP合成
A粗面小胞体・・リポゾ−ムに付着し
蛋白質の合成
B滑面小胞体・・ステロイドホルモンの
合成、肝臓におけるグ
リコーゲンの分解・合成
Cゴルジ装置・・蛋白質の濃縮し、細胞
外に出す
Dライソソーム・・異物を分解し細胞外
に出す
E中心小体・・細胞分裂に関与
(2)細胞の分裂
無し分裂と有し分裂がある
生殖細胞→減数分裂が起こる
a 有糸分裂
ア 前期
中心小体が2つに分かれ、細胞両極に移動する。核内の網状染色質が染色体に変わり核小体は消失する。
イ中期
角膜が消失し、染色体が赤道面に並ぶ。染色体には紡錘糸が付着する
ウ 後期
各染色体は縦に分裂しそれぞれ2個の染色体二なり、両極に移動する。
エ 終期
染色体は染色質になり、核小体も出現し核膜に包まれる。細胞質がくびれて2つの細胞になる
3)組織
(1)上皮組織
a 機能による分類
ア 被蓋上皮・・・器官の表面
イ 保護上皮・・・機械的刺激から内部を
守る
ウ 感覚上皮・・・刺激を受容する
エ 吸収上皮・・・物質を吸収する
オ 分泌上皮・・・分泌機能
b 形態による分類
ア 単層扁平上皮・血管
リンパ管の内皮
胸膜、腹膜、
肺胞壁(呼嗅上皮)
イ 重層扁平上皮・表皮、
口腔〜食堂の粘
膜、直腸の下部粘膜、
ウ 単層立方上皮・尿細管、甲状腺、
肺胞壁(呼嗅上皮)
エ 単層円柱上皮・胃、腸の粘膜
オ 重層円柱上皮・尿道の一部
カ 多裂線毛円柱上皮・鼻腔、気管
気管支の粘膜、卵管
キ 移行上皮・腎もう、尿管、膀胱の上皮
(2)結合組織(支持組織)
隙間を埋める組織で、多量の細胞間基質を有する。。
a 狭義の結合組織
ア 疎性結合組織→皮下組織、
粘膜下組織
イ 密性結合組織→腱、靭帯、真皮
ウ 弾性結合組織→項靭帯
エ 脂肪組織→脂肪細胞の組織
オ 様結合組織→
カ 細網組織→肝臓、脾臓、
リンパ節、骨髄
キ 液状組織→血液、リンパ
○赤血球・・・500万個/mm3 男
450万個/mm3 女
核をもたない
○白血球・・・6000〜8000個/mm3
好中球(小食細胞)
単球(大食細胞)
<白血球の各型の比率>
好中球>リンパ球>単球>好酸球>好塩基球
○血小板・・・20万〜30万個/mm3
b 軟骨組織
軟骨細胞と軟骨基質からなる。
ア 硝子軟骨→気管軟骨、助軟骨、
関節軟骨
イ 弾性軟骨→耳介軟骨、喉頭蓋軟骨、
ウ 線維軟骨→椎間円板、恥骨軟骨
c 骨組織
骨細胞と骨基質からなる。
石灰質の結晶が蜜に沈着
(3)筋組織
a 平滑筋−−内臓筋とも呼ばれる。
自律神経支配・不随意筋
1個の核・紡錘形の線維
b 骨格筋→骨格に付着・脳脊髄神経支配
随意筋・横紋がある・多核
円柱形の線維
c 心筋 −−横紋がある・不随意筋
自律神経支配・1個の核
心筋は再生しない。
(4)神経組織
神経細胞とクリア細胞からなる。
a ニューロン(神経元)
神経系の構成上、機能上の最小単位
1個の神経細胞体とその突起からなる。
灰白質−神経細胞の密集
白質−神経線維(突起)の密集
b 神経細胞の突起は2つに分けられる。
ア 樹状突起−細胞体から四方に伸び、
数多くの枝分かれをしている。
刺激を細胞体に伝える(原形質突起)
イ 軸索突起−細く長い突起で枝分かれ
が少ない。細胞体の興奮を遠くに伝える
c 神経線維
軸索は髄鞘に包まれる有髄神経と
髄鞘を持たない無髄神経に分けられる。
□髄鞘(ずいしょう)
軸索の周囲にシュワン細胞が
幾重にもまきついたもの
□有髄線維
軸索の周囲に髄鞘が形成され、その外側をシュワン鞘(神経線維症)が包む神経線維で、所々で髄鞘を欠き、シュワン鞘が直接、軸索に付着する部分をランビェの絞輪という。
興奮伝達はランビェの絞輪間の跳躍伝導でなされる。
□無髄線維
髄鞘に囲まれていない神経線維
d シナプス
軸索の終末が他の神経細胞や筋に
接続して興奮を伝える。
e 神経細胞
ア シュワン細胞ー髄鞘形成
4)気管と器官系
(1)骨格系
(2)筋系−骨格系と合わせて、運動系とも
いう
(3)脈管系ー血液系とリンパ系
心臓と脈管系とあわせて循環系
(4)消化系−消化管と消化腺
(5)呼吸系ー気道(鼻腔・咽頭・喉頭・
気管・気管支)と肺
(6)泌非尿系
(7)生殖系
(8)内分泌系
(9)神経系−中枢神経系(脳・脊髄)と末梢 神経系(脳神経・脊髄神経・自律神経)
(10)感覚系
5)人体の発生
固体の発生は1個の受精卵から出発する
□受精→卵管内で卵子と、精子で行われる
□精子と卵子は減数分解を行い、染色体の数は半減しており、受精卵となって初めて正常な染色体をもつ
□精子=22X(Y) 卵子=22X
生まれる子供 44XX(女) 44XY(男)
受精卵は直ちに細胞分裂を行い、子宮に着床する
↓
やがて、内胚葉と外胚葉ができ、
おくれて、中胚葉ができる。
(1)外胚葉
@皮膚・・・・表皮、毛、爪、皮膚腺
A神経系・・・脳、脊髄、末梢神経
B感覚器・・・視覚、聴覚、味覚、臭覚、平衡覚
Cその他・・・歯のエナメル質
(2)内胚葉
@消化器・・胃、腸、肝臓、膵臓
A呼吸器・・喉頭、気管、気管支、肺
B尿路・・・尿管、膀胱
Cその他・・甲状腺、上皮小体、胸腺
(3)中胚葉
@骨格系・・骨、軟骨、結合組織
A筋系・・・横紋筋、平滑筋、
B循環系・・リンパ管、心臓、脾臓、血液
血管、血液細胞
C泌尿、生殖系・じん臓、精巣、子宮、卵巣
Dその他・副腎皮質、歯の象牙質セメント質
3.解剖学的用語
1)人体の区分
(1)体幹
a 頭 (さらに頭と顔に分けられる)
b
c 胸
d 腹
(2)体肢
a 上肢 ・・肩、上腕、前腕、手根、手掌、手背
b 下肢・殿部、大腿、下腿、足根、足底、足背
2)人体の方向と位置を示す用語
(1) 矢状面
体の前後方向の水平線を矢状という。
この面を矢状面といい、無数ある
(2) 正中面
体に1つだけある面で、矢状めんのうちで、体を正中線で分けたものを・・ 正中面
(3) 前額面
矢状面に垂直な面(左右からの)
無数にある
(4) 水平面
輪切り状態の面、多数ある
(5) 内側と外側
2点のうち正中面に近いものを・・内側
” 遠いものを・・外側
(6) 浅と深
2点のうちで体表面に近いのを・・浅
” 中心に近いのを・・・深
(7) 前と後
直立位で体の前面に近いほうを・・前
後面に近いほうを・・後
(8) 上と下
直立位においての 上と 下である。
(9) 近位と遠位
体幹に近いほうを・・・近位
遠いほうを・・遠位