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スポツテイー物語 (本誌2015年1〜4月号掲載)

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(1)頂点を極めたサニー

  1998年のカナダ・カウ・オブ・ザ・イヤーに選出されたサニーロツジ・プレリユード・スポツテイー。彼女の遺伝子は世界中で花開き、各国の遺伝改良に貢献している。2005年の栃木全共で最高位賞を獲得したエルムレーン・スカイチーフ・サニー・ETはスポツテイーの孫娘である。

スポツテイーはオンタリオ州チェスタービルにあるサリーロツジ・ホルスタインズで、ロニーブルツク・プレリユードの調整交配娘牛として1988年に誕生している。先代は5代EX、VGが続く好体型の一族であった。2年後、彼女は地元のイースタン・チャンピオンシップショウでジュニアチャンピオンを獲得した。このこととプレリユードが世界的に評価が高まったことが相まって、一躍世界中から注目を集める1頭となったのである。さらに、スポツテイーのリンデイによる息牛サニーロツジ・リンジエツトの存在である。彼は02年デーリィ・エキスポではプレミアサイアー、04年5才級オールアメリカン牛のバドジヨンJK・リンジエツト・エイリーン・ET(EX-96)をはじめ、数多くのショウカウを生み出し、好体型種雄牛として名を高めたことから、スポツテイーの評価はますます高まりを見せた。誕生から10年後となる98年に、彼女は実績が評価され、カナダのカウ・オブ・ザ・イヤー牛に推奨されたのである。
 世界中からスポツテイーの遺伝子の引き合いは多く、400個以上の受精卵が作成されたという。その活躍の場は北米に留まることなく、グローバルに広がったのである。
 ヨーロッパでの活躍を見てみよう。スカイチーフによる孫娘サニーロツジ・スカイチーフ・エイミーはカナダのイースタン・チャンピオンシップで準チャンピオンを獲得後、大西洋を渡りイギリスに売却された。イギリスではローヤル・ウェールズ・ショウなどでグランドチャンピオン、体型審査ではEX-95に格付けされている。彼女のプレリユードによる娘はイタリアに渡りEX-93、そしてアレンによる孫娘トクフアーム・アレン・アミリー(EX-96)は07、09年のイタリアチャンピオン、さらに07年にはワールドチャンピオンに輝いている。彼女のページワイアーによる娘トクフアーム・ページワイアー・パミーは13年スイスで開催されたヨーロピアンショウでインターミディエイトチャンピオン。ゴールドウインによる息牛ゴールドサンはイタリアでbPタイプの種雄牛として活躍。
 一方、スポツテイーにギルブルツク・グランドを掛けたサニーロツジ・ジエニフアー(VG-85)のリーやルドルフによる受精卵はドイツに渡り、花開いている。リーによる娘DT・スポツテイー(EX-93)は2008年オールドイツでシュープリームチャンピオンに選ばれ、彼女の娘フツクス・スポツトライト(EX-94)はシヨツテルの娘ではヨーロッパで最もショウリングで活躍した1頭と讃えられている。同じくリーによる息牛ラインとレゴは証明済種雄牛として活躍している。
 ルドルフによる受精卵で誕生し、生涯乳量12万sを生産したサニーリツジ・ルドルフ・ジエン(EX-90)からは高インデックスファミリーを築き上げている。ジヨツコ・ベスン、そしてシヨツテルをくぐした孫娘バヴイーレ(VG-87、フランス)はヨーロッパbPGTPIカウとして多くのゲノム種雄牛の母となっている。ルドルフ・ジエンのエムトトによる息牛マナジヤーはドイツの基幹種雄牛となった。
 この他スポツテイーのヨーロッパにおける活躍は枚挙にいとまがないが、驚くべきはショウリングとインデックスの両面で輝いていることである。
 ではわが国でのスポツテイーといえば、まず思い浮かべるのは2005年栃木全共で最高位賞に輝いたエルムレーン・スカイチーフ・サニー・ET(北海道恵庭市・(有)福屋牧場)であろう。そして03年の道BWショウ・グランドチャンピオン牛ライブリー・スポツテイー・ストーム(北海道別海町美原・山田光男牧場)も一大ファミリーを築き上げている。
 まずは福屋牧場の全共最高位賞牛サニーから見てみよう。
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07年ワールドチャンピオンのトクフアーム・アレン・アミリー(EX-96、左)と
08年オールドイツのDT・スポツテイー(EX-93)など、ヨーロッパでの活躍は目覚ましい。




1998年のカナダ・カウ・オブ・ザ・イヤーに選ばれた
サニーロツジ・プレリユード・スポツテイー(VG-87-18*)



−スポツテイー導入の経緯は。
 実はスポツテイーの血液が目当ての導入ではなかったのです。当時はチーフ・マークの息牛であるドナンデール・スカイチーフに興味がありました。父牛のチーフ・マークは足が欠点とされていたので敬遠された方も多かったようですが、自分としてはあまり気にしませんでした。
 当時はスカイチーフの精液は比較的に安価だったので、当場では止まりの悪い牛でもどんどん使いましたね。今となっては貴重な種を、ずいぶん無駄遣いしたように思います。
 それに自分の実習先であるインディアンヘッド牧場のオーナーが「スカイチーフと足の良いコムスター・リーダーの掛け合わせはベストだよ」と教えてくれたのです。それで当時JHBSの荒木氏にそんな掛け合わせの受精卵はないものかと問い合わせたところ、紹介されたのがリーダーの娘サニーロツジ・リーダー・レオナ(VG-89)にスカイチーフをかけた受精卵でした。母方はカナダのカウ・オブ・ザ・イヤーに選ばれているスポツテイーのファミリーだということでしたが、それよりもこの掛け合わせに注目しての購入でした。
01年4月にサニー、03年12月には妹のスカイチーフ・レオナが生まれているのですが、レオナは娘を残すことが出来ませんでした。


2001年4月、福屋牧場に誕生したエルムレーン・スカイチーフ・サニー・ETは02年道ナショナルショウ・当才スプリング2等賞。翌年6月に初産分娩。道央酪農祭準インターミディエイトチャンピオン、道ナショナルショウではインターミディエイトチャンピオン。その後の体審では初産としては最高点となる87点を獲得している。さらに、04年は初産のまま道BWでインターミディエイトチャンピオンに選出。
 05年3月に2産目を分娩、5月の道BW、8月の道央祭、9月の道ナショナルショウといずれもシニア&グランドチャンピオンと負け知らずの快進撃を見せた。この勢いで第12回栃木全共に挑み、見事4才クラスで優等賞1席、4才以上名誉賞および最高位賞を獲得、頂点を極めたのである。



−未経産からショウに使ったのですね。

 サニーは生まれ落ちではさほど目立つような牛ではありませんでした。当才で共進会に持って行く時に、弟に「こんなの持って行くの?」って言われたくらいです。皆さんもあまり印象はないかと思いますが、道ナショナルショウ2等賞に入賞しているのですよ。
 はらみになって、翌年5月の石狩SPショウに出した時には「オーッ」というような身体に変貌していました。6月に分娩し、道央祭で準インターミディエイトチャンピオン、道ナショナルショウでは堤さんの審査でインターミディエイトチャンピオンに選んでもらいました。
 04年は春の道BWまでで、その秋のショウは休みました。05年は4才級2産でショウに使いました。道BWでは順調にグランドチャンピオン。全道共進会の4才級は大激戦区でしたが、クラス1位で全共の切符を手に入れましたし、グランドチャンピオンも獲得出来ました。

−全共では体調は万全でしたか。
 比較的近いこともあり、輸送も1日半しかかからず、自分が経験した熊本、千葉、岡山に比べるとずいぶん楽でした。だから全共の会場に入っても体調を崩すようなことはなかったのです。
 それに大会前からかなり注目されていたので、周りの方々が凄く協力してくれました。北見や十勝の方も乾草を持ち寄ってくれたりして、みんなに助けられました。うちはTMRですから、腹を作るのにも牛を落ち着かせるのにも良い乾草が欠かせなかったです。
 府県の知り合いの方々から自分に毛刈りを頼みたいという声もありましたが、周りのみんなで止めてくれたのです。自分ができるだけサニーに集中出来るような環境を、みんなが作ってくれました。







エルムレーン・スカイチーフ・サニー・ET。上から未経産時、2才時、
そして道ナショナルと第12回栃木全共で最高位賞を獲得した4才時。



 道ナショナルショウでは2才時からのライバルとして競い合ってきた旭川市・加藤牧場のグリーンハイツ・マーク・ダーハム・ET、豊富町・佐藤牧場のレスポアール・レーガンスター・ハーゲン(両牛のその後の活躍は周知の通り)とともに全共のショウリングに立ったサニー、会場を埋めた多くの観客が4才級のこの3頭の序列に固唾を呑んで見守っていた。牛好き、ショウ好きの人々にとってこの瞬間は至福の時であり、永遠に続くことを願わずにいられなかっただろう。


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(2)理想を具現化してくれたサニー
  

 2才時からショウリングで負けなし、05年の全日本共進会では最高位賞に輝いたサニー。彼女は翌06年の道央祭5才1位、準シニアチャンピオンを最後にショウリングから退いた。その後ドナー牛として後継牛作りに励む中、7才で92点を獲得、現在も福屋牧場の看板牛して訪問者を出迎えている。

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−全共の4才クラスのリングにはサニー、マウイ、ハーゲンが並び、会場中が魅了されていましたね。
 彼女は乳房調整もあまり神経質にならなくてよい牛ですが、全共よりも全道の時の方が乳房の張りが足りなかったので心配でした。待機場に入った時には少し足りないかなと思ったのですが、リングを歩いているうちにちょうど良い状態になったのです。全共の時は出品直前の段階で予想どおりの良い状態に張りましたし、状態も良かった。それに受精卵での導入時からずっと世話になっていた荒木さんに「サニーのための共進会だ」と言っていただけたので、気持ち的にはある程度余裕がありました。
 唯一心配だったのは産歴です。マウイもハーゲンも3産目でしたが、サニーは2産でしたから。審査員も日ホの方ですからね。全道の審査員ケン・エンピー氏は産次を聞かなかった。
 全共では最初のピックアップはハーゲンが1番でした。次にマウイが来て、3番目がサニー。そのままなら仕方がない、現実を受け止めようとは思っていました。でも、2回目のピックアップではサニーから先に前に出なさいと指示されたのです。この瞬間、会場から大きな拍手が沸き上がり、このままいけるのかなと確信しました。
全道の時には最高位に選ばれた際に、リングサイドの弟と目が合い、彼は先に泣いていたので、自分も思わずウルウルしてしまいました。しかし、全共ではある程度余裕があったのか、少し冷静でいられましたね。



第12回栃木全共・4才クラス。手前からサニー、マウイ、ハーゲン、
この3頭の序列に観衆は固唾をのんで見守った。



−3年間体調を維持し続けるのは大変だったでしょうね。
 自分は経営のこともあるので、夏場は畑作業にかかりっきりになり、牛の管理は研修生頼みとなることが多くなってしまいます。
 サニーは2才からショウで負けなしなので、全て順調なように見えるかも知れませんね。彼女には週1回血液検査をして、常に異常がないかをチェックしていました。これは他の牛ではやらないことです。それでも全道前や道央祭前はTMRの品質に左右されたのかも知れませんが、体調を崩したこともありました。
 サニーは独房には入っていますが、特別扱いするわけではなく、搾乳は他の牛と同じくパーラーで搾っていました。うちでは他のショウカウも同じく、バケットで別に搾るようなことはしません。そんな中でサニーが乳房炎になったことは一度もないです。他の牛では乳房炎になって、研修生が責任感じて泣き出してしまうようなこともありましたからね。当時の搾乳担当は大樹町の穀内君でしたが、搾乳もしやすく、搾り終わった乳房は絹のような感触だったと言ってくれました。全共には地元栃木の駒場君を連れて行きました。
 全共の翌年4月に3産目を分娩し、道央祭は5才1位に入賞しましたが、全道は辞退させてもらいました。父と弟で意見が分かれましたが、考慮の末に辞退したのです。実は3産目は双子を分娩したのです。そのためか、分娩後背が盛るようになってきて、綺麗に見せるのは難しくなってしまい、ショウリングから引退させました。

−現在のサニーはどういう状態ですか。
 これまでに5産しています。間で何度も採卵しています。反応は良いのですが、あまり個数は取れていません。
 今は多排卵の反応が弱くなったので、酪農学園に預けてOPUを試しいます。採卵は出来るのですが、その卵の成長が止まってしまうような状態で、まだ成功していません。サニーはまだ足腰は元気なので、移動出来る間に全農ETセンターに預けること等も検討しています。

 これまで輝かしい賞歴を築き上げてきたサニーの後継牛となれば、生半可な活躍ではなかなか世間が認めない。その中でもゴールドウインによる娘ゴールド・ブラツク・サフアイア・フタゴが11年の道央祭準シニアチャンピオン、全道共2等賞入賞2回。体審ではサフアイアが91点、ルーによる娘マース・シドニーが90点と、2代および姉妹EXを達成。今年秋の北海道全共に向けて娘牛達の活躍に期待がかかる。



エルムレーン ゴールド ブラツク サフアイア フタゴ 91点


エルムレーン マース シドニー ET 90点

−後継牛はどの牛になりますか。
 娘は現在10頭誕生していますが、長女のダーハム以外は健在です。サフアイアは全道2等賞2回。シドニーも全道まで駒を進めましたが、うるさ過ぎたので退場しています。サニーはそんなにうるさくないのですが、娘達は平均元気が良過ぎますね。
 11年生のフイーバー・サマー(父フイーバー)は昨年初産84点、道BWで3位でした。今後はこのフイーバー・サマー、13年生のブラツクストン・スペリオール(父ブラクストン)が分娩したらおもしろいと思う。昨年3月生のデンプシー・サンデー(父デンプシー)も良い身体をしています。

−サニーにはインデックスカウという側面もありますね。
 今はショウカウというよりインデックスカウの側面が大きいかも知れません。カナダやヨーロッパでは高インデックスとして活躍のスポツテイーですが、当場でもどの牛も乳量では16,000〜17,000s出ます。サフアイアとシドニー、スウイートハート(87点、父ゴールドウイン)からはインデックスを考えた交配依頼があり、スーパーやウインドブルツクをかけて、雄牛も2、3頭ずつ後代検定にかかっています。まさに、体型と能力を両立出来たファミリーでしょう。

−栄人さんにとってサニーとは
 2才級の頃から北米の酪農家や関係者がショウ会場やうちに見に来て、凄いのがいるねと言ってくれた。これほど大勢の人が関心を持って見に来られた牛はいないです。ようやく北米の方々に認めてもらえるような骨格、乳器を持った牛が出来たのかな。
 実は日本で黒澤牧場や角倉牧場で実習している時は、まだ牛の改良や共進会に関心度合いが低かったのです。
 アメリカのインディアンヘッド牧場に実習に入る時、オーナーが迎えに来てくれた際に、2才で凄い牛がいるから見てくれと、牧場に到着して1番最初にその牛を見に行った。いくら日本人が牛のこと分からないからといって、この牛がいくら何でも2才級じゃないだろうと思ったのが、1992年の2才ジュニアでオールアメリカンになったストーキー・EP・ブラツクローズ(EX-96)でした。とても2才級には見えないほどのスケールと乳器でしたね。
 自分が信頼されて、この牛の管理を任されたのが牛に関心を示す大きなきっかけとなりました。彼女はいまだに牛を作る上での基準となっています。
 インディアンヘッドも飼養形態はTMRでしたからうちと同じですし、毛刈りは当時ショウマンであったマーク・ルース氏に教わりました。自分は休みをもらってマーク氏についてショウを見て回った。乳房調整はロジャー・ターナー氏に教えてもらいました。彼らは毛刈りや乳房調整技術を丁寧に教えてくれました。この時の経験があったからサニーが活躍出来たのです。13年かけて理想を具現化出来たといえるのかな。
 自分にとっても奇跡の1頭ですが、うちの牧場にとっても同じです。長らく共進会をやっていますが、全道や全道BWショウで最高位をもらったのは雄ではありましたが、雌ではサニーが初めてでした。しかも、全共では父の代で全共最多出品でしたが、最高位は初めてでした。その意味でも特別な存在ですね。全道でも道BWでもリザーブが最高でしたからね。
 それに結婚もサニーが縁ですからね。道BWで最高位となって、記念写真に私たちも良いですかと入ってきたうちの1人が今の家内です。静岡県の野秋牧場の従業員だった彼女は、全共にも来てくれて、周りがはやし立ててくれたおかげで、全共後に結婚となりました。さらに、サニーが双子を分娩した時が2人の初めての共同作業でした。4月に、たまたま休みを取ってデートをしていたのですが、サニーが生まれそうだと呼び戻されて、2人で助産したのです。そして11月に結婚式を挙げました。サニーが縁結びの神様かも知れないね。



サニーを自分が追い求める理想の牛であり、
ショウのみならず、多岐にわたる功績があると語る福屋栄人氏。



エルムレーン フイーバー サマー ET 84点


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(3)EXファミリーを築き上げたリンデイ

 福屋牧場のサニーより5年前、1996年に誕生したのが別海町・山田光男牧場のライブリー・スポツテイー・リンデイ・ETである。彼女は4才で90点を獲得、4頭の娘を残し、山田牧場でのスポツテイー・ファミリーの礎を築いた。
 98年に誕生したストームによる長女スポツテイー・ストームが00年に初産で一族の先陣を切ってショウリングに登場、道ナショナルショウまで駒を進めた。02年は4才3産目で根室BWでグランドチャンピオン、道BWは3位につけ、道総合共進会では1等賞5席に入賞。03年は根室BWで準シニアチャンピオンと後塵を拝したが、道BWではブライアン・ギャリソン氏(ABS)の審査で5才以上1位となると、最後のチャンピオン牛選抜では山田牧場としては初となるグランドチャンピオンに選出されたのである。
 ストームの活躍はその後も続き、その年の道ナショナルで5才1等賞2席、翌年は6才以上で1等賞4席と、3年連続1等賞入賞を果たしている。体格得点も4才で90点、5才では92点まで加点している。
 ストームの長女スポツテイー・エルトン(父ダーハム)は04年のシニア3才、06年5才と、2度全道共進会に挑んだが、5才の2等賞3席が最高で、惜しくも1等賞入賞は叶わなかった。しかし、この間に4才で91点を得、3代連続EXを達成した。

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リンジエツトのフル兄妹として誕生したライブリー・スポツテイー・リンデイ・ET(90点)


2代目ライブリー・スポツテイー・ストーム(92点)は
03年北海道BWでグランドチャンピオン、全道共3年連続1等賞



3代目ライブリー・スポツテイー・エルトン(91点)は3代連続EX、06年道総合共2等賞


−受精卵導入の経緯を教えてください。
95年に十勝授精所の種雄牛作成プログラムで入ってきた受精卵です。十勝を中心に配布していたのを、是非自分達にもと声を掛け、仲間3名で5個の卵を分けてもらいました。止まったのは自分と佐々木善直さんの2頭だけ、どちらも雌でした。佐々木さんの方は今は途絶えていると聞いています。
 リンデイは当時一世を風靡したサニーロツジ・リンジエツトとフル兄妹なので期待は膨らみましたね。身体のキレは今一つだったのでショウには使っていませんが、後乳房の高さなどは良かったのが評価され、90点を貰うことが出来ました。

−ショウリングに登場したのはストームからですね。
 ショウに使い出したのは長女のストームからですね。初産から使って、順調に全道共まで駒を進めましたが、2産目はうちに同じ3才クラスでフオーメーシヨンの娘テイ・エフ・マダム・フオーメーシヨンがおり、地元のショウでは彼女の方が1位およびシニアチャンピオンとなり、ストームは2番目に甘んじました。何よりも毎産順調に産を重ねてくれたので、毎年ショウに使うことが出来たのです。4才ではついに全道1等賞。5才となった03年は根室BWで前年の道BWで準グランドチャンピオンだったサンハイ・アイデアル・チヤーリー・シーク(中標津町・株田牧場)に負けて準シニアチャンピオンどまりでしたが、道BWではついに念願のグランドチャンピオンを獲得できました。
 実はうちにとって全道クラスのショウで頂点に立ったのは後にも先にもこの牛が初のことなのです。91年の全道と道BWでメダリスト・トリプルが準シニアチヤンピオン、98年のチユンキー・スターダムが全道準シニア&準グランド、13年のジヤスパー・リルも準インターミディエイトですから。
 サニーも福屋牧場で初のグランドチャンピオン牛と聞いていますし、ヨーロッパのショウでの活躍などを見ると、スポツテイーは一段レベルアップ出来る血液だと、あらためて感じています。

−スポツテイーと聞くと、撮影する方もついつい構えてしまいます。
 写真撮影は初代のリンデイがEXを貰った時が初めてでしたが、とてもうるさくて、大変手間取ったのが印象的でした。これはリンデイに限らず、一族の特徴ですが、普段は温和しく、搾乳は何も問題ないのですが、注射を打ったり、何か変わったことをすると暴れ出します。家でショウの練習している分には何ともないのですが、リングに入るとうるさくなるので、ずいぶん手こずりました。
 特に3代目のエルトンですね。彼女は最初からうるさかった。初産で別海町の共進会に出しましたが、大暴れしたのが思い出されます。その後のショウでも泣かされましたね。彼女の場合は授精するのも一苦労です。いちいち枠場に入れてから授精したくらいですから。普段の搾乳では何ともないのですが。それでも10才過ぎたせいか、近頃はネコみたいに温和しくなりました。
 一族はこんな気性ですから、受精卵を取りたくても躊躇してしまいます。 実際に採卵したのはストームの1度だけです。運良くダーハムとミスター・サムで娘が1頭ずつ取れました。
 これも改良の成果なのでしょうが、最近になってかなり改善されて、温和しい牛が多くなりました。

 スポツテイー・ストームはエルトンに続いてマンハツタン、そしてアドベントの娘を輩出した。マンハツタンは6才で、アドベントは5才でそれぞれ90点を獲得、3代および3姉妹EXを達成した。
 エルトンのジエスロによる娘スポツテイ・ジエスロは一族で最も大柄な牛で、5才で90点となり、これで4代EXを達成。この他リンデイのアーロンによる娘からロイとダーハムの娘がそれぞれ90点。一族はこれまでに4代連続、3姉妹を含め、8頭のEXを輩出、好体型ファミリーを築き上げた。
 ショウリングでもアドベントは12年根室BW準シニアチャンピオン、翌13年も5才1位。エルトンのララミーによる娘スポツテイー・リデイア(86点)は12年道ナショナル・ジュニア3才2等賞。彼女のハヤ・マダーによる娘スポツテイー・マダーは14年の根室地区共進会・後検2才1位、道総合共進会では2等賞1席の活躍を見せた。




3代目ライブリー・スポツテイ・マンハツタン(90点)


3代目ライブリー・スポツテイー・アドベント(90点)はエルトン、
マンハツタンとともに3代&3姉妹EX



4代目ライブリー・スポツテイ・ジエスロ(90点)は4代連続EX


3代目ライブリー・スポツテイ・ロレイン(90点)


3代目ライブリー・スポツテイ・ダーハム(90点)はロレインと姉妹EX


ライブリー・スポツテイー・リデイア(86点)は12年道ナショナル2等賞


−ショウに使っているのは経産牛ばかりですね。
 実はスポッテイーから未経産でショウに使ったのは1頭もいません。何故か未経産時には光るような牛にはならず、乳房を付けると良くなるのです。
昨年のハヤ・マダーの娘は本当に温和しいですよ。残念なことに安平の会場では風邪を引いてしまったために、あまり食い込めなかったので2等賞1席、あと一歩で1等賞を逃しました。

−一族の特徴はどう捉えていますか。
 平均して尻台が良いですね。幅もあります。だから良い乳房が付きます。サイズは多少バラツキがあ、ジエスロやアドベントは大きいですね。乳器はどれも丈夫で長持ちします。乳頭は搾乳しやすい適度な大きさです。それに代を重ねるほどに乳房と強健性は改良されているようです。だから長持ちしているのだと思います。
 能力は成分的にはF4%と高いので、もう少し乳量が伸びれば申し分ありません。


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(4)一段レベルアップできる能力を秘めたスポツテイー

 ショウリングでの活躍や4代連続および3姉妹を含むEX牛8頭を輩出するなど、これまでに安定した好体型ファミリーを築き上げてきたスポツテイー。山田牧場ではこれまでに輸入したものを含め、10種類近い血液を飼養してきた。この中で基幹ファミリーとして牛群を支えてきたデ・コールやマダムに次いでスポツテイーは主流ファミリーとしての地位を着実に固めている。

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−これまでは期待通りの活躍を見せていますね。
 そうですね、道BWでグランドチャンピオン、EXも順調に増えてきました。あと少しでEXという牛もいます。エルトンの娘トレントは89点で止まっているし、マンハツタンの娘バツクサイドは昨年89点。どちらも足さえ治れば乳器も体も良いので、今後4代EXを期待しています。それとアドベントにはまだ雌がいないので何とかしたいですね。

−スポツテイーは他にあまり販売していませんね。
 これまでにエルトンのひ孫を京都府京丹後市の野村牧場へ、ストームの全姉妹にダーハム・ルデイーの娘を鹿児島県霧島市・税所牧場へ販売しただけです。基本的に受精卵で導入したものはある程度増えるまで売らないようにしています。
 うちで一番多いのはデ・コールで、能力と体型が安定しています。マダムは2系統、元々うちにいたマダムと恵庭市・清水牧場から来たマダム。この3系統が主流で、その次がスポツテイーになります。今は牛群の2割ほどです。
 これまでに受精卵を通じて10組以上のファミリーを導入しました。中には消えたものもいます。順調に増えたものの中ではスポツテイーの他にマウイも増えています。コレツトのファミリーはショウに使えたらいいなと思って導入しましたが、ショウの成績はほどほどですが、丈夫で長持ち、乳器も良いので牛群に定着しています。昨年EX貰ったエボニーは本牛と娘がいるだけですが、どうも乳質が良くないし、乳房炎になりやすい。それぞれに特徴というか、癖がありますね。
 スポツテイーは充分増えたので、これからはある程度選抜していこうと思っています。

−長持ちすることがファミリー繁栄の要因ですね。
 13才になるエルトンは昨年末に分娩しました。それにストームは16才を過ぎた今も体は崩れていません。さすがに乳房は見る影はありませんが、元気に余生を送っています。
 昨年の全道で2等賞1席だったハヤ・マダーは今年は5月にアトーニーで分娩予定です。順調にいけばこの牛で全共の舞台に立てたら嬉しいですね。



山田牧場の期待牛ライブリー・スポツテイー・マダーは14年道総合共2等賞1席


スポツテイーのおかげで牛群が一段レベルアップすることが出来たと語る山田光男さん。

 ここまでは福屋牧場と山田光男牧場のスポツテイーを取り上げてきたが、もう一つ話題となった牛を忘れてはいけない。05年のゴールデンセールでトップセールとなる303万円の高値を付けたオムラ・スカイチーフ・レオナ・ETである。彼女はサニーのフルシスターとして04年6月、北海道枝幸町・小椋義則牧場で誕生。サニーが全道グランドチャンピオン獲得時のゴールデンセールで最高価格で競り落とされた。移動先の愛知県豊田市・杉浦祐幸牧場では5才で91点を獲得した。彼女には現在ゴールドウインの孫娘、シドとサンチエスによるひ孫がおり、シドは13年中部日本共進会で1部入賞している。
 この他にもショウリングで活躍している牛が数多く見られる。全道共進会入賞牛を見ると、スポツテイーから4代目となる倶知安町・梶本俊一牧場出品のハツピーライブ・シヤロン・ストーン・ET(88点、父ストーム)が05年4才級で入賞。5代目となる白糠町・林稔幸牧場出品のウツズスター・ミラクル・アレキサンダー・スポツテイー(父アレキサンダー)は11年12〜13月入賞。同じく5代目ウードフイールド・ジエツシー・スポツテイー・レア・ET(父ダンデイー)は北海道小清水町・森田圭介牧場出品で12年16〜17月入賞、体格得点も89点となっている。さらに、小椋義則牧場ではトップセール牛スカイチーフ・レオナのバージンフラッシュで誕生したオムラ・ゴールド・レオナ・ET(87点、父ゴールドウイン)がおり、娘オムラ・サニー・ダスク(父SS・ダスク)が11年に12〜13月、13年には孫娘オムラ・バービー・レオナ(父ブラクストン)が10〜11月で全道入賞を果たしている。
 高得点牛をピックアップしてみると、EX一歩手前の89点牛は、5代目のサニーロツジ・エモリー・アリス(父ブリツツ、岡山県高梁市・藤原幸男牧場)。3代目ノースウインド・スポツテイ・ジエニフアー・リー・ET(父リー、北海道幌延町・無量谷裕二牧場)。前述の全道入賞牛ウツズスター・ミラクル・アレキサンダー・スポツテイーの母ウツズスター・ミラクル・スポツテイー・ルー(白糠町・林稔幸牧場)。北海道清水町・浅野典英牧場では4代目ベルベツト・スカイチーフ・シヤイナ・ET(父スカイチーフ)が89点、全妹ベルベツト・スカイチーフ・シヤノン・ETは88点。他に北海道上士幌町・小椋淳一牧場では4代目ハイロード・アレン・シエリー・ET(父アレン)と娘ハイロード・アドベント・シエリー(父アドベント)がともに88点。同じく前述全道入賞牛シヤロン・ストーンのミツクスによる妹ハツピーライブ・スポツテイー・ミツクス(倶知安町・藤田和樹牧場)も88点。栃木県矢板市・和気輝牧場では3代目PW・サニーロツジ・スポツテイ・ET(父リー)が88点。さらに静岡県函南町・石川和博牧場ではサニーのフルシスターからエモリー・デリーによる娘オークフイールド・シヤナイア・トウエインが88点となっている。
 一族がインデックスでも高い数値を示すことは福屋牧場のサニーでも触れたが、母国カナダでは常にLPI上位に一族が顔を覗かせてきた。わが国でも好体型もさることながら、高インデックスの資源として導入されたものも多い。サニーの母リーダー・レオナにジエイムズ、ストーマテイツクをくぐしたミステイ・スプリング・CS・ルシアナ・ET(VG-86)は05年11月のLPIが第33位。彼女のシヨツテルによる娘2頭はともにトップ200入りした高インデックス牛である。そんなルシアナにルー、プラネツトを交配したロツクイーグル・スポツテイ・ルル・プラネツト・ET(76点)は岩手県盛岡市・(独)家畜改良センター岩手牧場で2産目乳量2万s突破という高能力を示している。
 また、07年当才泌乳クラス準オールカナディアン、09年のLPI400位と好体型と高インデックスを兼ね備えたジレツト・ダンデイー・サンシヤイン・ET(VG-89、4代目)からは幕別町・山田敏明牧場でゴールドウイン、デニソン、サンチエスなどで娘を得ている。特にデニソンの娘GT・ウエーブ・デニソン・フオー・シーズンズ・ETは4才87点、サンチエスの娘GTウエーブ・サンチエス・サンセツト・ETは3才86点となっている。




05年のゴールデンセールでトップセールとなったオムラ・スカイチーフ・レオナ・ET(91点)


03年北海道BWショウでグランドチャンピオンを獲得した
ライブリー・スポツテイー・ストームを囲んで



05年北海道ナショナルショウの審査員ケン・エンピー氏と福屋牧場の皆さん


05年道ナショナルショウ入賞のハツピーライブ・シヤロン・ストーン・ET
(北海道倶知安町・梶本俊一牧場)



12年道ナショナルショウ入賞のウードフイールド・ジエツシー・スポツテイー・レア・ET
(北海道小清水町・森田圭介牧場)



GTウエーブ・サンチエス・サンセツト・ETは3才86点
(北海道幕別町・山田敏明牧場)


 ヨーロッパでの活躍を見ても「スポツテイー」の秘めたポテンシャルは計り知れない。わが国でも山田、福屋両牧場ともに、それまでなかなか崩しきれなかった「準チャンピオン」の壁をスポツテイー・ストームが北海道BWショウのグランドチャンピオン、サニーが全道グランドチャンピオンおよび全国共進会最高位賞という最高の結果で突き破り、頂点に立たせた底力には敬慕の念を禁じ得ない。今後も「スポツテイー」という玉手箱から、どのような名牛が飛び出すか楽しみにしたい。(完)