焦熱地獄



焦熱地獄(しょうねつ)
焦熱地獄とは、大叫喚地獄の下にあり。縦広前に同じ。此の地獄に種々の苦あり。若し此の地獄の豆計りの火を閻浮提に置けらんに、一時に焼け尽きなん。況んや罪人の身の柔らかなること綿(わた)の如くなるをや。此の地獄の人は前の五つの地獄の火を見る事雪の如し。譬えば人間の火の薪の火よりも鉄銅の火熱きが如し。-顕謗法鈔-

この地獄は何の因縁が有って、熱悩(焦熱)大地獄と名為けられるのか。此の熱悩大地獄中の衆生は諸の獄卒に捉えられ、激しく燃え盛る熱鉄の釜の中に放り込まれる。頭は皆下に向かい、脚は皆上を向いている。熱鉄は一向に猛熱で激しく沸騰している。罪人は其の中で煮つめられ、大きな熱悩を受ける。この故に熱悩地獄と名為けられる。
又彼の獄の中は鉄釜・鉄盆、及び鉄でできているもの全てが皆燃え盛っており、罪人はまたその中に在って、焼かれ、煮られてしまう。この故に熱悩地獄とも名為けられる。此の獄中に於いて極めて重い苦を受ける。しかし命は尽きない。彼の人の悪不善業が尽きてしまうまでは一切を遍く受けることになる。また大叫喚大地獄の十倍悪が勝さり、悪業の苦悩の勢力も極悪であるため、焦熱と名為けられる。

寿命
人間の千六百歳は、他化天の一日一夜として此の天の寿千六百歳也。此の天の千六百歳を一日一夜として、此の地獄の寿命一千六百歳なり。-顕謗法鈔-

焦熱地獄に堕ちるのは
殺生・偸盗・邪淫・飲酒・妄語の上、邪見とて因果無しという者、此の中に堕つべし。邪見とは、有る人の云く 「人飢えて死ぬれば天に生まるべし」等云云。総じて因果を知らぬ者を邪見と申すなり。世間の法には慈悲無き者を邪見の者という。当世の人々此の地獄を免れ難きか。-顕謗法鈔-

邪見を楽しんで多く行い、他人に向かって、「いわゆる世間には、布施無し、善無し、悪無し。及びその果報無し、此の世間無し、他の世間も無し、父無し、母無し。」とこのように断見を以て説き、業果を失い、またさらに他人に説いて随喜させ、その邪見を増長させる。他にも「因無し、業無し、道無し。」とも言う。このような人は、形服が有りと雖も大賊である。彼の人はこの悪業因縁を以て、身壊れて命終し、悪処―焦熱大地獄の中に生まれて大苦悩を受ける。彼の不信の人は実際に業果の報いを受けることになる。