大焦熱地獄



大焦熱地獄(だいしょうねつ)
大焦熱地獄とは、焦熱の下にあり。縦広前の如し。前の六つの地獄の一切の諸苦に十倍して重く受くるなり。-顕謗法鈔-

この地獄は何の因縁が有って大熱悩(大焦熱)大地獄と名為けられるのか。彼の大熱悩大地獄の中の衆生は諸の極卒に捉えられ、頭は下を向き、脚は上に向かって釜の中に放り込まれる。其の釜は猛熱であり、湯火も沸騰して炎々としている。罪人は上下に煮られ打ちのめされる。当に是の時、極めて重い熱悩を受ける。この故に大熱悩獄と名為けられる。また彼の獄中の所有の鉄甕・鉄盆・鉄鼎・鉄鐺は皆激しく燃え盛り、罪人は其の中に放り込まれ、煮られ、或いはいぶられ、諸の苦悩を受ける。何度も悩まされながら熱悩は大切迫する。是の故に、最熾猛熱極悩地獄と名為けられる。罪人は其の中で極めて重い苦を受けること、前に説かれている通り。

また彼の地獄人の身は一由旬と大きいが、身は極めて柔軟で生酥(クリーム?)よりも軟らかい。このように、眼を初め、五根などの全ての身が軟く、声・触・色・香で猶能く殺されてしまうほどである。言うまでも無く、余の苦が有る。彼が作った悪業が重きが故に、身心はこのように皆悉く軟い。彼の人は悪業力の故、極苦悩を受ける。
彼の悪業人が死に臨む時にも、現に業報を受け、大苦悩が有る。前の活地獄中の所有の苦悩を悉く受ける。此の罪人が死に臨む時、先の三日に於いて、このように苦を受けて、其の命が尽きる。音声を失い、語ることができず、大きな怖畏を憶え、驚く。このように次第に色に怒り、極苦悩を受ける。

寿命
其の寿命は半中劫なり。-顕謗法鈔-

大焦熱地獄に堕ちるのは
殺生・偸盗・邪淫・飲酒・妄語・邪見の上に浄戒の比丘尼を犯せる者、此の中に堕つべし。又比丘、酒を以て不邪淫戒を持る婦女をたぼらかし、或は財物を与えて犯せるもの此の中に堕つべし。当世の僧の中に多く此の重罪有る也。大悲経の文に_末代には士女は多くは天に生じ、僧尼は多くは地獄に堕つべし_、と説かれたるはこれていの事か。心あらん人々ははずべしはずべし。-顕謗法鈔-

殺生・偸盗・邪婬・妄語。酒を以って人に飲ませ、邪見にして不信で、或いは比丘・比丘尼戒を破ぶる。この因縁を以て、大焦熱地獄に堕ちる。

また持戒で禁戒を犯さない浄行の童女、善比丘尼など、未だに欲を行わず、如来の法を行う者を退壊させる。この人は仏法を信ぜず、心にこのように言う。「仏は一切智人に非らず。仏が一切智者でないなら、何に況や弟子・比丘尼僧の清浄の行いが有るものなど、―このような事は皆これ妄語。虚誑にして不実。この仏法は悪処であり、此に布施する所に非らず。涅槃を得るものは、此れ凡人僧であり、比丘尼の女の禁戒を破れども、罪を得ず。」彼の人はこのように悪く思惟した後、彼の童女を壊す。比丘尼戒を退かせ、犯戒させる。彼の人は身業・口業・意業の悪不善行により、身壊れて命終し、悪処−大焦熱大地獄の中に堕ちて大苦悩を受ける。